【特集】過去最少の漁獲量 県魚ハタハタの未来は?模索が続く資源保護 専門家や県の調査を取材
ABS秋田放送 / 2025年1月28日 17時45分
ハタハタの漁獲量が年々減少する中、今シーズンは、記録的不漁だった昨シーズンのわずか1割ほどまで激減し、これまでで最も少なくなりました。
危機的な状況の中、この先、漁獲量は再び増えるのか。
2度目の禁漁という選択もありうるのかどうか。
かつてのハタハタの禁漁に深く関わった専門家や、県の産卵調査を取材しました。
■季節ハタハタ漁 異例の年明け操業
産卵のために接岸する季節ハタハタの漁は、例年は12月にピークを迎えて、年末に終えます。
しかし、深刻な不漁となった今シーズン、八峰町の八森漁港では、群れの到来・本隊の接岸を願って、異例ともいえる年明けの操業が行われていました。
「あどおわりおわり」
しかし、この日もハタハタの姿はほとんどありませんでした。
漁師
「あわよくばまだいるんじゃないかなと思って」
「最初から来ないものはだめだ」
今シーズンの季節ハタハタの漁獲量は、県全体でわずか2.1トン。
沖合の底引き網漁と合わせても13.9トンで、県に記録が残る1952年以降、最も少なくなりました。
過去最少だった年と比べても、5分の1足らずです。
■なぜ?過去最少の漁獲量
最盛期の1960年代後半には、2万トンを超える水揚げがあったハタハタ。
しかし、1976年から漁獲量は急激に減りました。
1980年代は乱獲で資源量が減少し、水揚げの低迷が続いていたとみられています。
これを受けて、資源保護のため、1992年から3年間、全面禁漁が行われました。
禁漁が明けたあとは、いったん増加に転じたものの、2010年ごろから再び減少傾向になっています。
ハタハタの漁獲量が減っているのは、秋田県だけではありません。
隣の青森県、山形県、それに、新潟県の漁獲量は、秋田と大きな差があるものの、同じような推移で増減しています。
一方、北海道は、特に1960年代から1970年代にかけて、ほかの地域とは異なる推移をたどったことがわかります。
これに関連するのが、特定の水域で産卵したり回遊したりするハタハタの集団「系群」です。
ハタハタは、北海道沿岸でのみ産卵・回遊する系群が6つあり、主に朝鮮半島沿岸に生息する系群、それに秋田県沿岸で産卵する系群とは異なるため、漁獲量の推移に差が出ています。
ただ、どの系群も減ってきていることに変わりはありません。
全体的に水揚げが減少している有力な理由とされているのが、レジームシフト・生態系の構造転換です。
水温などの海洋環境が急激に変化することで、海の生態系が数十年の間隔で大きく変動する現象で、イワシやサバ、サンマなどの資源量の増減もこの影響だと考えられています。
ハタハタも、禁漁前やそれ以前の明治から大正にかけて、漁獲量が大きく増えたり減ったりして、周期性がありました。
これを受けて、県はかつて、生態系の構造転換をとらえて、禁漁で産卵する機会を確保すれば、ハタハタの資源量は回復すると判断しました。
■禁漁を担当した元職員に聞く 今後の禁漁の可能性は?
海洋科学を専門とする県立大学の客員教授・杉山秀樹さんは当時、禁漁担当の県職員でした。
「今(禁漁当時)いかにこれが少ないのかっていうのを感じている漁師さんにとって、なんとかならないだろうかというのがこれ(禁漁)のまず一番のスタートなんだよね」
漁獲量が急激に減るまでは行われていなかった、ハタハタの生態の調査。
そこで分かったのは、ハタハタがふ化するまでの期間が約2か月と、ほかの魚よりも圧倒的に長いことでした。
その分、稚魚は大きく育ち、生き残る確率が高いといいます。
必要なのは、産卵の機会でした。
杉山さんは、生態系の構造転換の機会をにらみ、できるだけ早く禁漁しなければいけないと判断し、漁師たちに訴えました。
理解を得てようやく踏み切れた、3年間の全面禁漁。
しかし、その負担は大きなものでした。
自主的な禁漁のため、補償金は出ません。
出稼ぎをしてしのぐ漁師や廃業する漁師も少なくありませんでした。
ーどこかのタイミングで禁漁する必要って今後ありますか?
杉山さん
「いや、もう、実際には資源と漁業との問題があって、あくまでも漁師さんがいて、経済活動があって、それで初めて成り立つものであって」
「漁師さんがいなくなって増えたって言ってもしょうがないんですよね」」
現状について杉山さんは、生態系の構造転換の観点からも、ハタハタが増える傾向はなく、禁漁を行うには根拠が乏しいと考えています。
■資源量が増える兆候は?調査を取材
県水産振興センターは、禁漁が明けた20年前からハタハタの産卵状況を調べています。
昨シーズンと比べて、産みつけられた卵の数がどの程度増えたり減ったりしているか調べることで、来シーズンのハタハタの資源量がどのくらい増減するか予測しています。
取材した日の調査では、深海を回遊してきたハタハタが浅瀬で産みつけた卵の塊がみられました。
メス1匹の卵から1000匹ほどの稚魚が生まれるといいます。
しかし、調査で見つかった卵の数は、昨シーズンの半分ほどにとどまりました。
ハタハタの接岸には、海水温の高さも影響すると考えられています。
海水温が十分に下がらない日が続き、ハタハタが接岸しきれなかった可能性があります。
この先、資源量が増える兆候はあるのか。
見逃さないためにも、きめ細やかな調査を続けていく必要があります。
県水産振興センター 松井崇人さん
「今年のように全然とれなくて高くなってしまうってなってしまいますと、全然皆さんの口に入らないというのもありますので、地球自体の変化っていうのはなかなか難しいところもあるので、そこをどう折り合いをつけながらうまく回していけるかっていうのを考えていければなというふうに思っています」
県民にとってかけがえのない存在の県魚ハタハタが、この先も食卓に上がり続けてほしい。
資源保護の模索が続いています。
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