トランプ氏主張の「ガザ用コンドームに5000万ドル」、支援専門家らが否定

米首都ワシントンのホワイトハウスで「レイケン・ライリー法」に署名するドナルド・トランプ大統領（2025年1月29日撮影）。(c)ROBERTO SCHMIDT/AFP

【AFP＝時事】ドナルド・トランプ大統領が米国はパレスチナ自治区ガザ地区にコンドームを配布するために5000万ドル（約78億円）を費やしていたと述べたことを受け、米国の支援専門家からは29日、この主張を否定する指摘が相次いだ。トランプ氏は無駄遣いの典型例に仕立て上げようとしていた。

トランプ氏は記者団に対し、ガザを20年近くにわたり実効支配してきたイスラム組織ハマスに言及し、「われわれはハマス用のコンドーム購入資金として5000万ドルがガザに送られているのを特定・阻止した」「コンドームがどうなるか知っているか？ 爆弾製造の手段として使われている」と述べた。

トランプ氏は主張を裏付ける証拠を示さなかったため、支援機関や支援の専門家からは激しい否定と嘲笑の両方を招いた。

米国際開発庁（USAID）が昨年公表した詳細な報告書によると、米国は2019年以降、コンドームを中東のどこにも送っていない。

同報告書によれば、米国が中東の家族計画のために寄付したものは、2023年にヨルダンに送った避妊注射と経口避妊薬4万5680ドル（約710万円）分のみとなっている。

人道支援団体「国際医療隊」は、ハマスがイスラエルに対する大規模な越境攻撃を仕掛けた2023年10月7日以降、ガザでの活動のために、USAIDから約6800万ドル（約106億円）を受け取ったが、救命医療を提供する野戦病院2か所の運営資金に充てたと説明。

国際医療隊は声明で、「米政府の資金はコンドームの調達や配布には使われていない」と断言した。

■「DOGEは財務諸表が読めない」

米ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は28日、ガザでのコンドーム配布に関する5000万ドルの支出は、トランプ政権発足後最初の1週間で、予算局と、実業家のイーロン・マスク氏率いる政府効率化省（DOGE）などによって発見されたと説明。「血税の無駄遣いだ」と指摘した。

しかし、ジョージタウン大学グローバルヘルス政策・政治センターのトップ、マシュー・カバナ氏はAFPに対し、「DOGEがガザでのコンドーム用資金5000万ドルを発見したというホワイトハウスの主張は、明らかに事実無根だ」「筋が通らない」と語った。

ざっと計算しても、5000万ドルあれば、ガザの成人用に10億個以上のコンドームが購入できる。

人道支援団体「レフュジーズ・インターナショナル」のトップ、ジェレミー・コニーンダイク氏はX（旧ツイッター）で、「問題は、ガザ向けのコンドーム10億個ではない」「DOGEの連中には（政府の）財務諸表がどうやら読めないということだ」と指摘した。

FOXテレビの保守系トーク番組の司会者、ジェシー・ワッターズ氏は、米国から実際には送られていなかったコンドームを材料にハマスが「コンドーム爆弾」を製造し、風船爆弾としてイスラエルに送り込んでいると主張。トランプ氏も同様の主張を繰り返している。

【翻訳編集】AFPBB News