ドイツ中道右派、極右と協力 タブー崩壊
AFPBB News / 2025年1月30日 13時10分
ドイツ連邦議会(下院)に臨むオラフ・ショルツ首相(前列左)と、演説するキリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首(前列右、2025年1月29日撮影)。(c)John MACDOUGALL/AFP
【AFP=時事】総選挙を数週間後に控えるドイツで29日、中道右派政党「キリスト教民主同盟(CDU)」と姉妹政党の「キリスト教社会同盟(CSU)」が初めて極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と協力し、政界に激震が走った。背景には、今月発生した刺傷事件で移民をめぐる議論が国内で白熱している状況が挙げられる。
反対派からは長年のタブーを破ったと批判されているが、CDUとCSUは、反移民を掲げるAfDと自由主義市場経済の推進を掲げる中道政党「自由民主党(FDP)」の支持を得て、物議を醸す動議を賛成348、反対344、棄権10の僅差で可決させた。
今月24日、2歳児を含む2人が刺殺される事件が発生し、警察は主犯としてアフガニスタン人の男(28)を逮捕した。
動議は、中道左派オラフ・ショルツ首相の移民政策を激しく批判。法的拘束力はないが、政府に対し、すべての国境を恒久的に警備し、難民認定申請を希望するかどうかにかかわらず、すべての不法移民の入国を拒否するよう求めている。
ショルツ氏は議場での激しいやり取りで、次期首相の最有力候補と目されているCDU党首のフリードリヒ・メルツ氏に対し、AfDといかなる形であれ協力すれば「許されざる過ち」を犯すことになると警告。
「75年以上前にドイツ連邦共和国が建国されて以来、わが国の議会のすべての民主主義者の間には常に明確なコンセンサスがあった。極右とは手を結ばないということだ」と訴えた。
これに対し、メルツ氏は怒りもあらわに反論。難民認定希望者による流血事件が相次いでいる事態に言及し、「ドイツで他に何が起きる必要があるのか」「あと何人の子どもが暴力行為の犠牲になれば、公共の安全と秩序が脅かされているとあなた方も考えるようになるのか」と訴えた。
AfDのアリス・ワイデル共同代表はX(旧ツイッター)への投稿で、採決結果を「ドイツにとって歴史的な日、民主主義の勝利」と歓迎した。
■「悪い兆候」
ショルツ氏は採決後、「きょうのわれわれの経験を消化するには時間が必要だ。これは悪い兆候だ。議会にとっても、わが国にとっても」とXに投稿した。
動議は、「例外なく、すべての不法入国の試みを拒否する」よう求めている。隣接する欧州連合(EU)加盟国に不法移民が既に入国し、「迫害される心配がない」ことを理由として挙げている。
さらに、ドイツからの出国を求められている不法滞在者を「直ちに拘束しなければならない」として、収容施設の増設も要請。
また、難民認定希望者に関する既存のEU規則は「明らかに機能不全」だと断じている。
動議は一方で、AfDを批判。「大量の不法移民によって引き起こされた問題、不安、恐怖を利用して外国人嫌悪をあおり、陰謀論を広めている」としている。
こうした指摘が含まれているにもかかわらず、AfDは採決で賛成に回り、可決に貢献した。
動議をめぐっては、ショルツ氏が所属する中道左派政党「社会民主党(SPD)」と、緑の党は強く反対していた。
【翻訳編集】AFPBB News
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