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お金持ちが惜しみなく「教育費」を使うシンプルな理由

オールアバウト / 2024年5月24日 19時30分

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お金持ちは子どもの教育にお金をかけるというが、具体的にどのようなことにお金を使っているのだろうか。トップクラスの富裕層を相続税調査で間近に見てきた元国税専門官の小林義崇さん(『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者)に、お金持ちが惜しみなく教育費を使う理由を伺いました。

お金持ちは子どもの教育にお金をかけるというが、具体的にどのようなことにお金を使っているのだろうか。将来的に子どもを支える方法として「不動産を残す」「多額の生命保険に入る」など、お金の使い道は他にいくらでもありそうだが、その中でもなぜ教育に力を入れるのだろうか。

トップクラスの富裕層を相続税調査で間近に見てきた元国税専門官の小林義崇さんに、お金持ちが惜しみなく教育費を使う理由を伺いました。

お金持ちの多くは、子どもを私立の学校に通わせる

――お金持ちの家庭は、公立ではなく私立の学校に子どもを進学させるイメージがありますが、実際のところはどうでしょうか?

小林さん:はい、相続税調査のときは家族構成や職業について尋ねるので、時々学歴の話が出てくることがあります。そこで聞いた印象としては、お子さんやお孫さんを私立に通わせている家庭が多かったですね。当時は今のように私立校の学費を補う制度がなく、学費の負担が公立と比べて格段に高いのですが、やっぱり安心感がある、と考えている人が多い印象があります。

――「安心感」というのは具体的にどのようなものがありますか。

小林さん:この安心感には大きく2つあります。まず、お金に余裕がある家庭の子どもが集まっている環境で教育をさせられる安心感です。経済的に余裕があり、同じように「教育が大事」という考えを持つ家庭が集まるので、安心して学校に子どもを預けられると感じるようです。次に、中高一貫のようにエスカレーター式の学校を選ぶと、基本的に進学先が決まっているのもプラスに捉えています。小学校、中学校、高校という節目で、入学するための過酷な受験勉強をしなくていいのも安心感につながっているようでした。

――私立に進学する以外に、富裕層の家庭では他にどのような教育に力を入れているのでしょうか。

小林さん:インターナショナルスクールに入れるなど、英語教育にお金を割いている印象があります。高校や大学で留学させて英語を習得させようとする家庭も多い。考えられる要因としては、将来稼げる人になるには英語が必要だろうという、親の感覚です。会社員、経営者を問わず、海外で活躍するために英語の習得は必須と考えている親は多かったですね。

また、トップクラスのお金持ちになると、税金対策として、一家まとめての海外移住を考えるケースもあるようです。特に資産が数十億円を超えるご家庭では、基本的な相続税対策を実行しても億単位の相続税がかかります。そのため、シンガポールやオーストラリアなど(相続税がない国)に移住する富裕層も中にはいました。

とはいえ、日本の相続税を逃れるには、資産を持っている人と、その相続人がともに海外移住して10年以上経っている必要があるので、亡くなる直前に日本を離れても相続税対策にはなりません。長期的に海外移住しなくてはならず、現地で問題なく仕事や生活をするためには英語は必須ですから、英語学習に力が入るのでしょうね。ただし、移住まで考えるのは富裕層の中でも一握りなので数はあまり多くありません。

富裕層は、何でも“お金をかけて育てること”が好き

――富裕層の家庭は子どもを私立に通わせたり、英語教育に力を入れたりと、なぜ多額の教育費をかけているのでしょうか。

小林さん:いくつか理由がありますが、教育費はコストパフォーマンスが高いと考えている富裕層が多いように感じます。お金を残すと多額の相続税がかかり、生きているうちにそのままお金を子どもに渡すと最大で55%の贈与税がかかります。しかし、教育費としてであれば非課税。実質的に税金をかけずにお金を渡せて、その教育の成果として稼げる人材にできるという考えがある。

また、富裕層は「お金をかけて育てる」みたいなのが結構好きなんですよね。起業して事業を育てる、投資して資産を育てる、それと似たような感覚で子どもにお金をかけて、スキルアップして稼げる人に育てる、それ自体も楽しんでいる側面があるかもしれません。

――どの私立に入るか、どのような習い事をさせるのか、といった教育方針はどうやって決めるのでしょうか。

小林さん:直接聞いたわけではありませんが、相続税調査で話をした印象だと、奥さんが考えている方が多い気がします。私が調査をしたのは高度経済成長期を支えた世代のご家庭が多かったのですが、たいていご主人は仕事に専念し、奥さんが家庭を守るみたいなイメージです。

例えば、習い事にしても、どれか1つに絞るのではなく、特に幼い頃は、ピアノ、バイオリンなどやれることを一通りやってみて、奥さんから見て良さそうなのは習い続けるといった感じでしょうか。1つの習い事に数十万円というわけではなく、分散投資のように幅広く習い事をやらせた結果、教育費が膨らんでいる家庭が全体的に多かったです。

――では、基本的には奥さんが主体となって旦那さんと教育方針を決めるのですね。

小林さん:そうですね、基本的には夫婦間で完結します。ただ、一部のプライベートバンクでは、資産運用の一環として教育に関するアドバイスももらえるようです。政治家になりたいならオックスフォード大学、ビジネス系ならケンブリッジ大学を通わせた方がいい、みたいなアドバイスをもらえるのだとか。その卒業生だけが入れるコミュニティーが日本にもあって、そのつながりからビジネスを広げたなんて話も聞いたことがあります。

でも、そうした特殊なケースを除いては、教育方針を身内以外の第三者に相談するというのはあまり聞かないですね。

富裕層は会社を守る、家族一族を守るという意識が強い

――富裕層の家庭が教育方針を決めていく中で、一般的な家庭とこれは違うなと感じる点はありますか?

小林さん:親が会社を経営しているケースが多く、社長になる素養をつけたいという考えを感じることは多々ありました。子どもの年齢で、教育する主体が奥さんかご主人かは異なります。社会に出るまではある程度の学歴をつけるために奥さんが面倒を見て、社会人として経験を積んだ後はご主人の会社に入って社長になる。ご主人は会長として退きながらも、口出しして育てるというように、フェーズによっても異なります。

――将来的に社長になるのが決まっているので、経営者として自立できるようしっかり教育をするのですね。

小林さん:そうですね。もちろん経営者になるためにスキルを身につけるのもありますが、「学歴で箔(はく)をつけたい」と考えていた方もいました。後継ぎが高卒で入社して次期社長ですよとなると、社員に納得してもらうのはなかなか難しい。どうしても、単に血がつながっているから「能力関係なく社長になれたのだろう」という感じになってしまう。

それを避けるためにも東大なり、海外の有名大学を卒業させる。有名大学であれば、社員も納得しやすいというか、受け入れやすい土壌を作れるという考えです。ある程度の学歴があれば、ちゃんと勉強して優秀な子ですよという、従業員に一定の示しはつくかなと。そのため、早く会社を継がせるために高卒で早く現場に飛び込ませるみたいなケースは私が見る限りはなかったです。

――やはり大枠の教育方針として、自分の会社を継がせたいというのがあるのですね。

小林さん:経営者のご子息だと、将来的には会社を引き継いでもらわなきゃいけないという考えが根底にあります。社員を守るためにも後継者を育てなければいけない。「会社を守る」「家族一族を守る」意識はかなり強いです。

ただ、ビジネスのことだけ学ぶのは駄目という意識があるのか、幅広い学びを与えようという感じはあります。ピアノ、バイオリンなど、芸術の教養が身につく習い事を選ぶ家庭は多い。どこまで真剣に取り組むかによるものの、それなりにお金がかかる習い事です。芸術の教養は、海外でのビジネスのしやすさにもつながっていると考えているようでした。

日本の相続税の制度では3代で財産がなくなると昔からいわれています。そのような事態を避けるために、子どもを稼げる人にしなきゃいけない。もちろん、倹約してお金を残す、不動産として節税して相続するなど、資産を多く子どもに渡そうとします。しかし、何より一族が継続的に繁栄するためには、「子どもの教育が何よりも大事」と考えて、惜しみなく教育費に費やす富裕層は本当に多いですね。子どもがさらに稼げるようになれば、3代で途絶えるどころか代々財産は増えていきますから。

教えてくれたのは……小林義崇(フリーライター・元国税専門官)

1981年、福岡県生まれ。西南学院大学卒業。東京国税局の国税専門官として2004年から13年間、相続税調査などの業務に従事。2017年に東京国税局を退職し、フリーライターとして書籍や雑誌、ウェブメディアの執筆活動を行うほか、自分自身のYou Tubeチャンネル「フリーランスの生活防衛チャンネル」を運営している。著書に「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」、「すみません、金利ってなんですか?」など10冊がある。

取材・文/七海 碧

不動産・金融に特化しているフリーライター。「本質を捉えて分かりやすく伝える」をモットーに、初心者でもすぐに理解できるシンプルな言葉で説明することが得意。ファイナンシャルプランナー、資産運用検定資格を保有。
(文:All About 編集部)

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