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いつの時代の話? 「登校付き添い」を求められ、仕事の断念や転校を迫られる母親たち

オールアバウト / 2024年5月28日 22時10分

いつの時代の話? 「登校付き添い」を求められ、仕事の断念や転校を迫られる母親たち

女性も働きやすくなるよう社会や職場の環境整備が進んできた一方、学校やその周辺にはいまだ「専業主婦前提」の慣習・ルールが多々見られます。毎朝の登校付き添いや見守り当番を強要され、転校や仕事の断念を迫られる人も。昭和ではなく令和の今の話です。

NHKの連続テレビ小説『虎に翼』、皆さんもご覧になっているでしょうか。筆者も毎日夢中です。日本初の女性弁護士となった主人公・寅子が見た“地獄”に震え、「今の時代に生まれてよかった、道を切り拓いてくれた先駆者の皆さんありがとう!」と涙した人は多いと思うのですが。

そんな今、「え、令和になってもまだそんなことあるの?」と思うような話をたて続けに聞いてしまいました。学校や近所の母親たちから、子どもの登校付き添い・見守りルールに従うよう求められ、転校や仕事の断念を迫られる人たちがいるのです。

寅子の時代から約80年の時を経て、産休・育休制度が整うなど職場環境は改善されてきたものの、学校やその周辺にはいまだ「専業主婦前提」の慣習やルールが多々見られます。これでは結局、昭和初期と同様、仕事か子育ての二択を迫られる母親が出続けてしまいます(シングルファザーなど父親が同様の立場に置かれることもあります)。

どうしたらいいのか? まずはどんなことが起きているのか、お伝えできればと思います。

登校班なら見守りを、個別登校なら毎朝付き添いを

最初に聞いたのは、今年子どもが小学校に入ったという母親・Aさんの話です。Aさんはお子さんが通う小学校に「登校班」があることは以前から知っていたのですが、彼女の居住区では保護者が交代で班の「見守り」を行っていることを、入学後に知りました。

登校班を経験したことがない人は、「せっかく子ども同士で通うのに、なんで保護者の見守りが必要なの?」と思うでしょうが、実は集合場所に来ていない子を確認したり、出発時刻を伝えたりするため、保護者が当番を組んで子どもたちの集合に立ち会うことは割とよくあるのです。保護者が交代で学校まで付き添うケースもたまに聞きます。こういった当番をするのは多くの場合、母親です。

同じ地区の母親たちは、Aさんにも当番をするよう求めてきたのですが、あいにくAさんの仕事は始業時刻が早く、見守りの時間には仕事をしています。ところが「みんなも事情はあるが、やっている」「夫か実家の親に頼めば」などと言われるばかりです。

Aさんの夫は夜勤が主で、親は闘病中です。職場は忙しく、半休や時間休を取ることも困難です。しかし、そんな事情を伝えても周囲の母親たちは納得してくれません。

やむを得ず学校に状況を伝え、個別登校させたいと相談したのですが、校長からは「登校班のことに学校は口出しできない。個別登校させるなら、保護者が学校まで付き添って」と言われてしまいました。

確かに学校が保護者同士のいざこざに口を出しづらいのは分かりますが、でもそこで、保護者に毎朝の登校の付き添いまで命じるのはいかがなものか。登校班も保護者の付き添いもなく、子どもが個別登校している学校はたくさんあります。

Aさんに見守り当番や登校付き添いを強いるのは、退職(転職)か転校を促すのと同じことでしょう。「もう引越しを考えざるを得ない」と、Aさんは悩んでいます。

スクールバスに毎朝同乗? 他校を選ぶか仕事を諦めるか

続いて、子どもが特別支援学校に通っているBさんの話です。特別支援学校には、視覚・聴覚・知的障害・肢体不自由・病弱といった区分がありますが、Bさんの子が通う部門は各都道府県に1~数校程度しかなく、遠くから通ってくる児童生徒が大勢います。

登校する際、子どもたちは駅からスクールバスに乗るのですが、この学校では「小学校3年生までは保護者が同乗する」というルールがあります。そのため、本当は特別支援学校に通わせたいけれど、毎朝付き添いはできないので、諦めて地域の学校に子どもを通わせる保護者が増えているそう。

逆に考えると、この学校で毎朝登校に付き添っている保護者(主に母親)のなかには、フルタイムの仕事を諦めた人も少なからずいることが察せられます。

他校(同部門)では保護者のスクールバス同乗を求めないところもあるのですが、Bさんの子が通う学校は「学校の様子を知ってもらいたい」からと、付き添いを求めているそう。もちろん保護者が学校の様子を知ることは大事でしょうが、毎朝付き添いを求めるのは行き過ぎだし、別の話ではないでしょうか。

念のため、Bさんは別に「保護者のスクールバス同乗はおかしい」と筆者に訴えてきたわけではありません。ほかの話をしていた際、たまたま聞いただけです。ただ、おそらく保護者、特に母親たちは、子どもの障害に責任を感じやすく、おかしいと思っても声を上げづらくなっている印象があります。

でも、それも本当はおかしいのでは。障害は、親のせいではありません(もちろん子どものせいでもないのですが)。それにもう今の時代、「子どものため」だろうがなんだろうが省けるところは省いていかないと、家族も社会も回らないでしょう。

保護者の同乗は不要とするか、あるいは少なくとも毎朝でなくてもいいというルールにしてもいいのでは。そうすれば、続けたい仕事を諦める母親・父親は減り、通わせたい学校に子どもを通わせやすくなります。

学校としては、万一何か事故が起きたときに責任を負えないので、保護者同乗のルールを設けたのかもしれませんが、そういったリスクは誓約書や保険などでカバーできないものでしょうか。 

通学方法は学校や近所の人が決めることなのか

先回りして、1点だけ。時々「海外では、子どもの学校送迎は親がやるのが当たり前。日本だって同様にすべき」といった意見が聞かれますが、ここは治安の良さで知られる日本です。状況の違う国を基準にしなくていいと思うのです。

それにそもそも、登下校の方法は、保護者が決めることではないでしょうか。1人で通わせたければそうすればいいし、学校が遠いから、あるいは途中に危ない箇所があるからほかの子と一緒に通わせたい、自分が付き添いたいと思うなら、そうすればいいこと。それを一律に、学校や近所の人が「こうやって通え」と決めることにムリがあるのでは。

登校班の見守りも、スクールバスの同乗も、昭和の時代に「多くの母親が専業主婦である前提」でつくられてきたルールです。「今の時代」を前提に慣習やルールを見直さないと、これからさらに困る人が増えていくことは免れません。 

この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)

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