決めるのが億劫な原因は「決断疲れ」かも? 35歳、日常を“人任せ”にして決断回数を減らした結果
オールアバウト / 2024年5月30日 22時5分
![決めるのが億劫な原因は「決断疲れ」かも? 35歳、日常を“人任せ”にして決断回数を減らした結果](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_106892_0-small.jpg)
情報量が多く、常に決断を迫られる時代を生きていると、脳は決断を重ねるごとに疲弊していく。そんな「決断疲れ」に限界を感じ、生活改善を迫られた30代女性たちに話を聞いた。
「決断疲れ」という症状が話題になっている。
ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授の研究によると、人は1日に最大3万5000回の決断をしているということだ。朝起きて、何を食べるか、何を着ていくかに始まり、人と話すときの言葉のチョイス、あるいは座る、立つ、歩くという動作に至るまですべて含めると、その数字になるという。
脳は決断を下せば下すほど疲労を起こす。だからといって、ただずっと休ませればいいというわけでもない。チョイスを減らすという方法はある。いつも同じ服を着ている人は、着て行く洋服を選ばないですむという選択をしているのだろう。
情報番組で紹介されていた男性は、ほぼ毎日、同じ食事をとっていると話していた。栄養不足はサプリで補う。何を食べるか考えずに済むことによって、仕事でのパフォーマンスも上がったということだった。
35歳、情報量が多すぎて「決断疲れ」
ファッションもメイクも、友人との関係も思い切り楽しみたい。そのためにも携わっている仕事に全力投球、毎日、生き生きとしていたはずだったと語るのは、マユミさん(35歳)だ。ところが最近は、「いろいろなことが面倒」になってきた。
「年齢的にも疲れが出るころなのかなあと思っていました。毎日、考えることが多すぎて、いざ決めなきゃいけないとなると情報量が多すぎて決められない。友だちと食事に行くときも以前だったら率先して店のリストを作ってグループLINEで送っていたのに、それさえ面倒になってきたのが半年前。
決められないことが増えていって、洋服も3パターン作って日替わりで着るようになった。朝、決められずに遅刻するよりマシですから」
「決断回数」を減らすため日常を人任せに
今年になってから、「決断疲れ」という言葉を聞いた。「あ、私だ」と思ったという。決断回数を減らせばいいんだと気づき、仕事以外の決断をほぼ放棄するようにした。妹に来てもらって、1週間のコーディネートを決めてもらい、食事の献立も作ってもらった。すぐに食べられる冷凍食品、作り置きできる惣菜などがメインだ。「本を読むのが好きなのに、何を読もうか決断するのが億劫だったから、妹に読む本まで決めてもらいました。妹はおもしろがっていろいろなジャンルの本を積んでくれたので、かえって私も視野が広がるかもしれないと思えた」
そうやって日常生活を人任せにして過ごしてみたところ、そのうち「何を食べるか自分で決めたい」という欲求が湧いてきた。もともとは、すべて自分で決断できることを幸せだと思っていたタイプだから復活も早かったのかもしれない。
「自分で決めたいと思うのと、決めなきゃいけないと思うのとではまったく意欲が違いますよね。でも今でも、疲れたなと思うと早く寝て、ファッションも食事も手抜きしてと自分に言い聞かせています。以前の私は頑張りすぎていたのかもと気づきました」
生き生きと活動することが好きで、友だちも多かったマユミさんだが、少しだけ人生を見つめ直す時期かもしれないと思うようになったそうだ。
33歳、スマホ依存で「決断疲れ」
「私、かなりのスマホ依存だったんです。ちょっとしたことでもすぐスマホで調べてしまう。それでわかったからといって覚えているわけではないんですが、『わからない』ことが気持ち悪くて調べるんですよ。そうしていたらスマホが手放せなくなり、仕事の打ち合わせ中もひっきりなしに調べている状態になった」そう言うのはカリナさん(33歳)だ。そのうち、調べてもどの情報を信頼したらいいかわからなくなり、その真偽をさらに調べるという悪循環に陥った。情報量の多さに振り回され、どれをチョイスするか決断できなくなっていった。
「会社の医務室からメンタルクリニックを紹介されて行ってみました。医師といろいろ話していたら、なんとなくスマホがなかった時代を思い出した。スマホを持っていても、そんなに依存していない時期もあった」
「きみの言うことには根拠がない」
気付いたのは、1年前の恋人との別れだった。些細なケンカから別れに至ってしまったのだが、別れ際、彼に言われた「きみの言うことには根拠がない」という言葉が引っかかった。仕事上も友人たちも、私に対してそう思っているのかもしれないと感じたことが、根拠探しをするためのスマホ依存につながっていった。「以前だったら友だちと食事に行くのも、あの店、おいしそうだよねという漠然とした選択で決めていたのが、必死になってSNSを調べ、口コミをたくさん読んで選び出す。そういう作業をしないと食事にも行けなくなった。今思えば、どうしてそこまで強迫観念を持ってしまったのかわかりませんが」
カリナさんは苦笑する。つい最近、別れたあと元カレが別の女性とすぐに結婚したものの離婚していたことがわかって、「症状はいきなりよくなった」そうだ。
「自分でも性格が悪いと思うんですが、彼が不幸だと聞いたら、何もかもどうでもよくなった(笑)。友だち同士の間では根拠ないままにしゃべってもいいじゃないと開き直れたというか。結局、元カレの一言に縛られていたんですよね、バカバカしい」
ただ、スマホ依存による決断疲れがあったのは確かだ。今後はもう少しのんびり生きたいとカリナさんはすっきりした表情で言った。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))
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