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『マッドマックス:フュリオサ』の8つの魅力。前作とは異なる評価軸、強化されたフェミニズムの精神とは

オールアバウト / 2024年5月31日 20時35分

『マッドマックス:フュリオサ』の8つの魅力。前作とは異なる評価軸、強化されたフェミニズムの精神とは

『マッドマックス:フュリオサ』 の8つの魅力を解説しましょう。「スピンオフ作品としてこれ以上のものは考えられない」理由ばかりなのです。(※サムネイル画像出典:(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. )

映画『マッドマックス:フュリオサ』が5月31日より劇場公開中。本作は2015年に公開され、革命的なアクションが特に絶賛の嵐となった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚にして、女戦士「フュリオサ」を主人公とした作品です。

その評価は数多くのスピンオフ作品の中でもトップクラス。アメリカの批評サービスRotten Tomatoesでの批評家および観客の支持率は90%に達しており(5月31日時点)、実際の本編を見ても『怒りのデス・ロード』の精神と面白さを引き継ぎつつも、その二番煎じにもならない異なる評価軸も備えた素晴らしい作品でした。
ここでは、その8つの魅力および特徴を解説しましょう。

1:『マッドマックス』を見たことがなくてもOK

今回の映画は『マッドマックス』シリーズを全く知らない人でも楽しめる内容だと断言します。フュリオサという1人の人物の幼少期からその半生を追う物語で、今作から見ても彼女の過酷な運命を見届けたくなるでしょう。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.ただ、上映時間が2時間28分とやや長尺であることにご注意を。スピンオフ作品にして『マッドマックス』シリーズ最長となったことに不安を覚えている人もいるでしょうが、実際の本編はなるほどそのボリュームを必要とする物語が紡がれていました。

一定の物語間隔で区切られた「章立て」の構成のおかげもあるのか、個人的にはダレを感じることはありませんでした(ただ、直前のトイレはほぼ必須です)。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.なお、レーティングは「全篇にわたり殺傷をともなうアクションが続く」という理由でPG12指定となっています。

『怒りのデス・ロード』の時はR15+指定だったため「そこまで露悪的なエログロ描写はないし、若い人にこそ見てほしい内容なのに納得できない!」との声も続出しましたが、今回は中学生も映画館で熱狂できるようになったのです(とはいえ、もちろん暴力的な描写があるのも事実なのでご注意を)。

2:引き継がれたフェミニズムの精神

『マッドマックス:フュリオサ』は前作『怒りのデス・ロード』に引き続き、フェミニズムの精神がはっきりと表れた作品になっています。

『怒りのデス・ロード』で描かれたのは、文明が崩壊して資源は乏しく、独裁者が全てを牛耳り、人間はモノのように扱われ、若者たちがその価値観に支配され自決することもいとわない、狂った世界でした。それでも強い女性たちが団結し、「自らの力で抑圧的な状況を変える」様に、女性ならずとも勇気や希望を抱いた人が多いのではないでしょうか。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.前日譚である今回の『フュリオサ』では、冒頭から幼い娘を救おうと奮闘する「母親」の強い姿がはっきりと打ち出されています。そして、故郷や家族を奪われたフュリオサは、憎むべき相手のディメンタス将軍の元で「表向きは娘として」生きることを余儀なくされ、しかも前作の最大の敵であるイモータン・ジョーとの土地の覇権争いにも巻き込まれます。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.また、前作『怒りのデス・ロード』は、「行って帰るだけ」ともいえるシンプルな物語であると同時に、鮮烈な世界観の構築、そして尋常ではない熱力のアクションを盛り込むことでこそ語られる、キャラクターの奥行きや「語られていない余白」を想像できることも魅力になっていました。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.対して、今回の『フュリオサ』の主人公は、2つの勢力の板挟みにも近い立ち位置で、アクション以外のドラマパートの割合も増えており、それでこそ「前作で語られていない余白の一部を語る」ようになっており、やはり異なる魅力を打ち出しています。

そのため、今回の『フュリオサ』では「強い女性が奮闘する」「その強い女性の意思も無惨に踏みにじられてしまう」「それでも決して消えない心がある」という構図もまた強調されています。

『怒りのデス・ロード』の「革命」への行動に至るまでの彼女に何があったのか、どれほどの思いがあったのか。その過程のドラマにも注目してほしいのです。

3:前作にも引けを取らないアクション

ただ抑圧される苦しい状況が描かれるだけでなく、前作にも勝るとも劣らないアクションが、キレキレな演出と共に怒濤(どとう)の勢いで繰り出されるのも大きな見どころです。

実際にオープニングから感じられるのは「速さ」。追われる者と追う者、それぞれの一挙一動が通常の映画よりもかなり速く動いているように感じられ、それは「少しでも遅いほうが負ける」過酷な世界の攻防戦が「こうなる」と納得できるテンポでもあったのです(実際にジョージ・ミラー監督は、1.3倍ほどの速さで俳優たちが演じるべきだと意識していたのだとか)。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.その後も「勢い良く寄っていくカメラワーク」「空間を意識した大胆な構図」「“ウォー・タンク”という巨大な乗り物の先から後ろまで全てを生かしたギミック」などを、これでもかと楽しめるでしょう。特に、中盤の15分間にもわたるアクションの撮影には78日もかかり、毎日200人近くのスタッフが作業にあたったそうです。
それらのアクションは見ていて頭がクラクラしてくるほど、褒め言葉として狂っているようにも思えるのですが、実際は極めて計算し尽くされていることも、前作から引き継がれた大きな魅力です。

何しろ、その15分間の中盤のアクションでは、フュリオサの戦闘スキルや、その知恵や不屈の精神もはっきりと表れているのです。それもまた「アクションでこそ物語を語る」という『怒りのデス・ロード』の魅力をストレートに受け継いでいるポイントでしょう。 

4:アニャ・テイラー=ジョイの「眼光」

今回のフュリオサを演じたのは、実写映画『スプリット』や『ラストナイト・イン・ソーホー』のほか、アニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ではピーチ姫の声も担当したアニャ・テイラー=ジョイです。

前作で同キャラクターを演じたシャーリーズ・セロンは、屈強な女戦士だと心から思える風格を見せながらも、わずかな表情の変化で恐怖や寂しさの感情も伝える、豊かで複雑なキャラクターを余すことなく表現していました。その若き日の姿を演じるアニャに求められるハードルは、並大抵のものではなかったでしょう。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.今回のアニャで注目してほしいのは「眼光」。前作同様に極めて口数が少ないキャラクターで、実際に映画でのセリフは30行ほどだったそう。しかし、長い間抑圧を受け続け、さらに「戦い始めて間もないからこその未熟さ」「それでも揺るぎない意思」の両面を、アニャという俳優その人が持つ「目の強さ」から感じられるのです。

アニャはこれまでの出演作でも、抑圧的な社会で生きる女性の役柄を数多く演じてきました。今回はそのキャリアの集大成ともいえる、「不屈の精神」そのもの体現したキャラクターを演じきっており、感慨深いものがありますし、だからこそ感情を強く発露させる場面の印象もまた「強い」ものになっているのです。

もちろんアニャはアクションにも果敢に挑んでおり、撮影が始まる1年前からスタントダブルと共にトレーニングを積んだのだとか。しかも、免許を持っていないまま、スタント学校の初日にJターン(直進走行している最中にハンドルを切り、一気に反対方向へと車体を向けること)を学んでいたりもしたそうです。

難役に対してベストを尽くしたことも間違いない、全編にわたる眼光の鋭さや、アクションでの身のこなし、「ここぞ」という時のアニャの演技にもぜひ注目してください。

5:いい意味で器の小さい悪役のクリス・ヘムズワース

今回のもう1人の主人公といえるのは、悪役であるディメンタス将軍。彼は初めこそ理性的かつ残虐な印象がある、恐るべき存在にも思えるのですが……徐々に「情けない」印象も覚えるようになっていくキャラクターでした。

もちろん、その悪役像も意図的なもの。前作であれだけのカリスマ性に満ちた(今回も登場する)イモータン・ジョーと対照的な印象そのものが面白く、「フュリオサを自身の娘として支配しているようで全くできていない」などの種々の場面から、いかに薄っぺらな人物であるかが伝わってくるのです。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.そんなディメンタス将軍は(映画冒頭で極めて悪逆的な行いをしている、主人公にとって本当に憎むべき相手にもかかわらず)、その情けなさも含めてチャーミングに思えてもくるでしょう。演じているのは『マイティ・ソー』シリーズのヒーローでもおなじみのクリス・ヘムズワースで、その人間臭さ、もっといえば精神的な弱さが、「悪」に転じれば、ここまで器の小さい存在にも映るというのも興味深いのです。

そんな悪役をクリス・ヘムズワースがめちゃくちゃ楽しそうに演じていることに笑顔になれますし、彼自身が「リーダーシップをとる立場にある人の多くは、ある種の威圧的な支配力があるものだが、彼は全く逆で、思いやりと寛容さ、協調性をもって指導にあたってくれる」とディメンタス将軍について語っており、確かにその通りの親しみやすさや、なんだかんだで部下に慕われる程度のカリスマ性もあるのだと、納得できたりもするのです。

6:『北斗の拳』の逆オマージュ的なセリフも?

余談ですが、『マッドマックス2』が日本の漫画『北斗の拳』(集英社)に強い影響を与えていることはよく知られており、その『北斗の拳』には「お前はもう死んでいる(You're already dead)」という有名なセリフがあります。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.詳しいシチュエーションはネタバレになるので秘密にしておきますが、その「お前はもう死んでいる」の「逆オマージュ」かもしれない(?)、とても似ているけど、意味自体は正反対ともいえるセリフを、ディメンタス将軍が口にするのも、また興味深いものがありました。 

7:合わせて見てほしいジョージ・ミラー監督作は?

最初に掲げた通り、今回の『フュリオサ』は予備知識がなくても楽しめますが、もちろん他の『マッドマックス』シリーズを合わせて見れば、その一貫した作品の精神性やキャラクターの関係性のさらなる深掘りもできるでしょう。

個人的に本作と合わせて見てほしいのは、日本では2023年に公開された、同じくジョージ・ミラー監督作の『アラビアンナイト 三千年の願い』です。
こちらは、幽閉されていた魔人が、「1人で生きていた」現代の女性の学者に3000年にわたる物語を聞かせるという内容。今回の『フュリオサ』と同様に、ジョージ・ミラー監督らしいフェミニズム精神と、「孤独」にも優しく寄り添う優しい作家性が、最もダイレクトに表れた作品だと思えるのです。

8:スピンオフ作品として「理想的」「最適解」な内容に

総じて、今回の『フュリオサ』はスピンオフ作品としては「理想的」「最適解」な内容に仕上がったとも思えます。

何しろ、前作はとんでもない世界観およびアクションが構築された、映画史を更新するほどの革命的な1本。その新鮮な驚きはどうしても減ってしまう中でも、前作に引けを取らないアクションを見せ、さらにフュリオサというキャラクターを深掘りして、映画を見終われば『フュリオサ』のストーリー上の“続編”である前作『怒りのデス・ロード』をすぐにでも見たくなるという……重ね重ね、「これ以上のものは考えられない」とさえ思える内容なのです。(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.また、ジョージ・ミラー監督によると​​、今回の『フュリオサ』の物語は、『怒りのデス・ロード』の時にすでに作られていたそうです。俳優、デザイナー、そして全てのスタッフは、その物語を脚本として受け取っており、フュリオサを演じたシャーリーズ・セロンも役作りの参考にしていたのだとか。

今回の『フュリオサ』の全編にある圧倒的な「説得力」は、世界観の構築やアニャ・テイラー=ジョイを筆頭とする俳優の熱演はもちろん、「『怒りのデス・ロード』の時にすでに考えていた物語」という「土台」があってこそなのでしょう。それでこそ、見た人がさらに『マッドマックス』シリーズにハマることも、また期待しています。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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