51歳貯金1700万円。心身が疲弊し、このまま退職しても大丈夫か、相談させてください
オールアバウト / 2024年6月9日 22時20分
休職中の51歳の会社員女性。このまま仕事を辞めて自営業を始めたいと考えているものの、老後の生活に不安があるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
退職したら自営業をする夢があります。老後資金は大丈夫でしょうか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、休職中の51歳の会社員女性です。このまま仕事を辞めて自営業を始めたいと考えているものの、老後の生活に不安があるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
ぽぽさん女性/会社員/51歳
東京都/借家
家族構成
一人暮らし相談内容
現在休職中です。独身で、兄弟姉妹やいとこもおらず、一人で老後の生活をしっかりやっていく必要があります。このまま退職しても大丈夫か、相談させていただきたいです。同じ会社で長年働いてきましたが、心身ともに疲弊し、休職することになりました。傷病手当金で生活しております。退職したら、自営業を営む夢があります。店を借りてお金がかかっても、老後資金が足りるか、相談したいです。飲食の仕事は会社員時代からやっており、いつかメインにしたいと思いながら、なかなか会社を辞める勇気が持てず、今に至りました。いろいろ考えこのまま退職したいと思います。
しかしながら、退職後、すぐにお店を開くのはリスクが高いと思っていまして、週3日ほどアルバイトをして10万円くらいを確保しつつ、5万~6万円を自営業の仕事で頑張っていきたいと思っております。
退職して2年後くらいを目標に、お店を持ちたいというのが、今後のイメージです。飲食店を開業する場合、自分の老後のためにどの程度の金額を手元に残しておくのがいいかも、お教えいただけるとありがたいです。
家計収支データ
ぽぽさんの家計収支データは図表のとおりです。家計収支データ補足
(1)収入について記載の収入は休職前のもの。現在は、傷病手当金23万円と飲食イベントへの出展、およびネット販売(月により変動2万~6万円)が収入になります。
(2)ボーナスについて
基本ボーナスは全額貯金。
(3)加入保険について
・生命保険(61歳まで払込、死亡保障500万円、三大疾病、高度障害、介護各500万円、医療特約付き)=毎月の保険料1万5000円
※生命保険をやめて、月5000円くらいの医療保険に入ろうと思っています。ただ、心療内科に通院していると入れる保険があまりないようで、どうしようかと困っております。
(4)働き方について
現在の勤務先は、退職したいと考えております。退職金は300万円くらいではないかと思っております。
(5)公的年金について
退職後に、60歳まで国民年金保険料を納付します。今後、万一納付できなくても(収入が少なく国民年金保険料が免除となっても)、老齢年金額は1カ月10万円ほど。
(6)その他
今は賃貸マンションで生活していますが、両親の介護などが必要になれば実家に戻る予定です。
両親は持ち家で生活しております。持ち家が2軒ありますがいずれも古く、リノベーションは必要なため、1軒を売った利益で、もう1軒を建て替えるかリノベーションしようと両親と話しています。不動産屋さんに聞いたところ、人気のエリアなので売却はできるとのことでした。
FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:会社を辞めて、休養中は収支トントンで生活をアドバイス2:2年後に開業するとしたら、使えるのは400万円ほど
アドバイス3:65歳時点の金融資産を残せるように収入を得る
アドバイス1:会社を辞めて、休養中は収支トントンで生活を
現在休職中とのこと。傷病手当金が終わった段階で会社を辞めてもいいでしょう。精神的なストレスを抱えながら仕事をすることはありません。しばらくの間は無理をせず、心身ともにリフレッシュできるような生活を心がけてください。ただ、収入が途絶えてしまうと貯蓄を取り崩すことになりますので、生活費15万円をまかなえる収入は得るようにしてください。ご自身もパート・アルバイトをしながら自営業をして、計15万円の収入を得たいと書かれていますので、その考え方でいいと思います。
生活費については、現在16万7000円。これを15万円にするには、家計の見直しが必要です。
あまり削減できる費目はありませんが、保険を見直せば月1万円は削減できます。現在加入している生命保険は不要です。生命保険に医療特約がついているため、解約すると医療保障がなくなります。共済など割安なものに加入し直してください。
通院歴がありますので、引受基準緩和型になり、保険料は少し高くなりますが、それでも月4200円程度に収まるはずです。一度、共済に相談してみてください。
これで、1万円は削減できます。残りは雑費などの支出を見直して、月15万円に抑える工夫をしてください。
アドバイス2:2年後に開業するとしたら、使えるのは400万円ほど
仮に2年後にお店を開業するとして、どのくらい開業資金として使えるか試算してみましょう。現在の貯蓄が1700万円、退職金の300万円を加えて2000万円です。このあと毎月の貯蓄ができないとすると、この2000万円は老後資金として残しておくお金となります。
65歳から公的年金の受給が始まりますが、現時点での見込み額が146万7000円。手取りは127万円ほどでしょう。毎月の支出が15万円で変わらないとすると、年間で53万円が不足します。65歳から30年で1590万円を使うことになります。約1600万円です。
つまり、1600万円は残しておかなければならないお金ですから、開業資金として使えるのは400万円程度ということになります。
どのような形態のお店かわかりませんが、400万円に収まるようであれば、開業も無理ではないでしょう。
アドバイス3:65歳時点の金融資産を残せるように収入を得る
ただ心配なのは、本当に毎月15万円ほどの収入を継続して得ることができるか、ということです。年金受給までは、どんな形であれ、収支トントンで生活できれば、老後をそれほど不安に思うことはありません。逆に、もっと収入を得ることができれば、老後はゆとりある生活になります。せっかく開業するのであれば、パート・アルバイトをしなくてもいいぐらいの収入を得るよう、頑張ってほしいと思います。
また、将来的にご実家に戻ることを予定しているのであれば、開業は実家の近くにする、もしくは店舗併用住宅にリノベーションするなど、実家を活用する方法もあるのではありませんか? 住居費もかからなくなりますし、生活費をもっと下げることも可能になります。
開業を2年後として試算しましたが、現在のお住まいの地域でなければ開業できないものなのか、ご実家のある地域でも可能なのか、そのあたりから考えてみてはいかがでしょうか。
焦ることはなく、今は休養することが第一です。この期間に、開業の計画をじっくり練ることをおすすめします。
相談者「ぽぽ」さんから寄せられた感想
丁寧な説明をいただき、ありがとうございました。深野先生にアドバイスいただいて、うれしく思っております。いただいた内容をもとに、ゆっくり考えていきたいと思います。教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)
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