「そうめんスライダー ポケットモンスター」 開発担当者に聞く、企画から完成までの長い道のり
オールアバウト / 2024年6月7日 21時50分
![「そうめんスライダー ポケットモンスター」 開発担当者に聞く、企画から完成までの長い道のり](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_107401_0-small.jpg)
毎年の夏のお楽しみ、タカラトミーアーツの「そうめんスライダー」。今年の新作はなんとポケットモンスター仕様のデザインと仕掛け。早くも増産し、それもすぐに完売しそうな勢いですが、開発担当者にその裏側を伺いました。
タカラトミーアーツの「そうめんスライダー」シリーズは、毎年、面白い企画の製品が登場するだけでなく、あっという間に完売するほど大人気の夏のヒットシリーズです。
販売されるのは、基本的には毎年、スタンダードな「そうめんスライダー」と、さまざまな企画とアイデアを凝らした限定製品の2種類。
2024年は、去年まで代表商品として販売されていた「ビッグストリーム そうめんスライダー カスタム・ベーシック」をパワーアップした「ザ・そうめんスライダー」と、ポケモン仕様の「そうめんスライダー ポケットモンスター」。
ただでさえ注目度の高い「そうめんスライダー」が、ポケモン・バージョンになったのですから、その反響は大きく、しかも、ポケモンへのリスペクトが感じられる製品デザインもあって、発売前からネットでも大きく取り上げられました。
この記事の取材は、2024年4月の終わりに行われたのですが、その時点で、初期ロットは予約で完売していて、季節性を感じさせるモデルとしては滅多にない、増産が始まっているということでした。
その人気の最大のポイントは、単にポケモンをあしらっただけの製品になっていない、ポケモンと流しそうめんが見事に融合したアイデアとデザイン。
その誕生の経緯を、「そうめんスライダー」の生みの親であり、シリーズの全ての開発を担ってきた、平林千明さんに伺ってきました。
「流しそうめんマシン」の可能性が広がったポケモン・バージョンの仕様
![内部に構造を組み込まなければならないにもかかわらず、フィギュアレベルの造形を実現。水を吐き出す口の中が赤いことにも注目。また、とぐろを表す水流を受ける部分の造形も凝っている](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa/gm/article/5/0/3/6/0/0/202405241351/ss_poke_r1.jpg)
――「そうめんスライダー ポケットモンスター」は、企画を立ち上げてから製品化まで、かなりの時間がかかったそうですね。
平林千明さん(以下、平林):元々いろいろなコラボをやりたくて、ポケモンでも商品化したいなというのがあったんです。
そこで、「そうめんスライダー」のポケモン版を出させてくださいと言って、ポケモンを付けたり印刷したりした製品の提案をしたのですが、それでは面白くないしと、いろいろ迷いながら、企画を考え続けました。
――どのように企画を考えていったのですか?
平林:私がポケモン世代ではなかったこともあり、あんまりポケモンに詳しくなかったんです。なので、まずポケモン図鑑を読んで勉強するところから始めて、みずタイプのポケモンや、世代を問わず親しまれているポケモンを書き出したりしていました。
ただ、みずタイプポケモンでスライダー向きのものがなかなかいなくて。面白いものになる可能性があるのはどういう方向かを探っている内に、水を操る技を使う「レックウザ」を見つけたんです。
これをスライダーに生かせないかなというところから、今回の製品につながりました。
水の機能がレックウザの中に入る構造になるので、造形が難しかったのですが、そこはきちんと見せたい部分でもあったので頑張りました。結果的には、普通のフィギュアのレベルといってもいい製品になったと思います。
レックウザの造形と機能の完成度の高さに注目
![レックウザの頭部は、このように内部にホースを通す構造。この構造のため、フィギュアで使われる柔らかいPVC樹脂ではなく、固いABS樹脂を使う必要があり、その分、細部の表現は難しくなった。さらに角や手はシャープな造形が必要なので、硬質PVCを使うなど、素材の異なる複数のパーツに分かれた複雑な構造になっている](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa/gm/article/5/0/3/6/0/0/202405130231/pokemonsomen03.jpg)
――レックウザ部分の色の再現度やレールの色など、とてもポケモンらしい製品になっていますよね。
平林:色も造形も、とてもしっかり監修していただきました。図面監修、立体の造形監修、彩色監修と、本当にフィギュアを作るのと同じ過程でした。ポケモンを使って造形物を作るのですから、確かに、それはフィギュアですよね。
最初は、食品衛生上の問題もあるので、レックウザの口の中は彩色なしで行く予定だったのですが、やっぱり口の中までこだわりたいという要望があって、食品衛生上問題のない塗料を探して使いました。
新しい塗料を使う場合、出荷前の最終的な化学検査でNGと言われてしまったら発売日が延期になってしまいます。そういうかなりリスクの高い道なのですが、そこは譲れないということで、頑張りました。
――今回の「そうめんスライダー ポケットモンスター」は、今年のもうひとつの新製品「ザ・そうめんスライダー」と同じ、新しいモーターが採用されていますね。
平林:モーターは、ここ2年くらい開発を続けていました。モーター自体は既製品を使っていて回転力は変わっていないのですが、プロペラの形を研究して、より水を吸い上げる力が得られやすい形にするなど、中の機能を改良しました。
また、以前は「モーター部分は洗わないで」という仕様にしていたのですが、うっかりつけ置き洗いしてしまって、翌夏にはモーターがさびて使えなくなってしまったという声があったので、より防水機能をアップしました。
翌年使えないというのはユーザーさまも残念だと思うので、全部作り替えて、構造を改めて見直したんです。
![フィギュアレベルで再現されたレックウザの口から勢いよく水が噴き出すのは、新しいモーターの開発による](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa/gm/article/5/0/3/6/0/0/202405130234/pokemonsomen04.jpg)
――その新しいモーターだからこそ可能になった機能などはありますか?
平林:やっぱりそこはレックウザですから、水を勢いよく噴射してほしいというのはありました。それが実現できたのは、この新しいモーターができたからですね。
本当は、水を平たく、面で出したかったのですが、ホースの口の形状を変えてもうまくいかず、それは諦めました。水の動きをコントロールするのは難しいなと思います。
また、この新しいモーターのおかげで、そうめん自体の流れるスピードも上がっています。
![レックウザの胴体を模したコース途中には、水流で揺れるポケモンたちが配置されている。ポケモンの魅力も加わり、エンターテインメント性を増したデザインだ](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa/gm/article/5/0/3/6/0/0/202405130236/pokemonsomen05.jpg)
――コースの色や、コースにあしらわれたポケモンなども良くできています。
平林:コース自体はベーシックなモデルと同じですが、うまく世界観に合わせられたと思います。コース上のポケモンが揺れるギミックは、「そうめんスライダー ビッグハワイ」を作ったときに考えた水車の構造を使いました。
オブジェとして飾りたいという感想も
![細かいパーツも多いので、しっかりと梱包されたパッケージ。シーズンオフ時に片付けられるように、丈夫に作られている](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa/gm/article/5/0/3/6/0/0/202405130238/pokemonsomen06.jpg)
――市場やファンからの反響がすごいそうですね。
平林:すごかったです。発表した日に完売してしまって、発売前なのに、問合せが問屋さんからきたりしました。
Yahoo!のトレンドで3位まで上がったのですが、おもちゃのトレンドではなくて、全体の社会のトレンドで3位で、なんだかおかしなことになったなと(笑)。
商談会でも、レックウザが大好きだという記者の方に造形を褒められたり、部屋にオブジェとして飾りたいと言ってくださった方がいたり。ずっと、机の上にポケモン図鑑を置いて勉強した甲斐があったと思いました。
――もし去年実現していたら、新しいモーターもなかったし、全然違うものになっていたわけですよね。
平林:そういう意味ではタイミングも良かったかもしれません。
ただ、商品化OKのお返事をいただいたときには、すでに「ザ・そうめんスライダー」の開発に入っていて、夏まであまり時間もなかったので、今年発売するのは無理かもしれないと思ったのですが、間に合ってよかったです。
商品監修の方にも協力的に助けていただき、製造会社も無理難題なのに素早く対応してくださって。時間がないことで妥協することもなく、面白い製品になったと思います。
納富 廉邦プロフィール
文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。(文:納富 廉邦(ライター))
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