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サウナが根付く国の人々は「控えめでシャイ」。大統領も認める、日本人とフィンランド人の意外な親和性

オールアバウト / 2024年6月20日 21時25分

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サウナの本場であるフィンランドでは、人々はサウナとどのような関わりを持っているのか。その文化から見えてきた、日本とフィンランドで共通する「国民性」とは何か。

「ととのう」というのを経験したことがあるだろうか。サウナで汗を出して爽快感や幸福感を得ることを指す。作法としては、サウナで汗を流して水風呂に入り、またサウナで汗を出すというのを繰り返すことで、「ととのう」という状態になるといわれている。

日本でサウナは広く普及している。最近では漫画やドラマなどが人気を後押ししており、2021年の「新語・流行語大賞」では、「ととのう」がノミネートされているほどだ。

温泉施設や健康ランド、スポーツジムなどでもよく見かけるが、2023年1月に日本サウナ総研が実施した「日本のサウナ実態調査2023」によれば、今では1680万人以上がサウナを利用しているという。また、日本にはサウナ施設が1万2000カ所あるとされる。

「サウナ」はフィンランド語

この「サウナ」という言葉はフィンランド語だ。北欧のフィンランドでは、熱気浴や蒸気浴として国民の生活に深く根付いていて、人口約550万人のフィンランド国内にあるサウナの数は320万カ所にもなる。2020年にはユネスコの無形文化遺産にも登録された。

筆者もサウナはよく利用している。爽快感に加え、サウナの独特の閉鎖空間で気分転換しながら考え事もできるからだ。そんな筆者は先日、安全保障関連の取材でフィンランドを訪れた。そしてその合間にサウナ取材も敢行。そこで今回は、本場フィンランドのサウナ事情をお伝えしたい。

フィンランドでは、ホテルの部屋にサウナが併設

まず、これはフィンランド以外では考えにくいが、宿泊したホテルには部屋にサウナが設置されていた。シャワールームの横に、ガラス張りで個人用(2人用)のサウナ室がある。

入るときは、まずサウナルームのストーブに加熱スイッチを入れ、サウナストーン(火成岩)を熱する。しばらく待ってから水をためた桶を持ってサウナルームに入り、サウナストーンに水をかけて熱い蒸気を発生させて温度を高めていく。

そしてある程度汗をかいたら、隣のシャワールームで水を浴び、またサウナに戻る。ホテルの部屋でできるので、誰にも気兼ねなく何度でもサウナを楽しめる。

「サウナ島」といわれるロンナ島へ

ただせっかくサウナの本場であるフィンランドに来たら、地元のサウナも味わいたい。ということで、首都ヘルシンキのマーケットから出航している水上バスで「サウナ島」として知られるロンナ島に向かった。水上バスではバルト海を約20分ほど航行すると島に到着。料金は往復で、1人8.5ユーロだ。島にはパブリックのサウナがあり、利用料は20ユーロ。日本と違うのは、水着を着用してから利用し、男女混浴というところだ。

フロントでチェックインを済ますと、サウナの建物に向かい、男女別のロッカールームで着替え、いざサウナに。12人が入れるロフト型のサウナが2つあり、フィンランド人らと一緒に汗を流す。ここのサウナは小さな島ということもあり、水風呂の代わりにバルト海に入って体を冷やす。筆者が訪れたときは、従業員が「今日のバルト海の水温は11度です」と教えてくれた。

そして、海とサウナを往復して「ととのう」のである。ロンナ島には、サウナの後に食事ができる自然派レストランがある。そこで、サウナでととのった状態のまま、ワインを飲みながら食事を楽しむことができる。

フィンランド人の90%が週に1回サウナに入る

そんなフィンランドのサウナの歴史は古い。フィンランドでは、諸説あるが、実に2000年も前からサウナが存在していた(紀元前7000年前からあったとの説もある)。もともとフィンランドの森林部で極寒の冬を越えるために、地面に穴を掘り、動物の皮でカバーをして、加熱した石で暖をとっていたことから始まったといわれている。その後、サウナは地上で利用されるようになっていった。

現在では、フィンランド人の90%ほどが、週に1回はサウナに入るほど生活の一部になっている。この文化は、地方などでは住民の憩いの場になっている。筆者が訪れたアパートには住民用の共有のサウナ室が完備されており、住民たちが予約をしてサウナを利用している。

日本にサウナが入ってきたのは、1957年のこと。フィンランドなどから派生した海外のサウナが日本に持ち込まれ、最初のサウナは東京の銀座にできたとされる。その後はどんどん広がっていき、2021年には流行語大賞に「ととのう」がノミネートされるまでになった。

筆者がロンナ島で、バルト海に入った後でサウナルームに戻ると、そこには40〜50代の5人の男性と2人の女性のグループがいた。その団体と何気にあいさつを交わすと、こちらが日本人であることに気づいていたようで、「私たちは日本企業で働いている」と言う。聞けば、日本でも名の知れた大手企業の現地法人で勤めている人たちで、同僚同士でサウナに来たという。今の日本では考えられない付き合い方かもしれない。それほどフィンランドではサウナが自然に社会に組み込まれている。

フィンランドのサウナでは、いわゆる「裸の付き合い」が行われる場所でもある。

日本人もフィンランド人も「控えめでシャイ」な国民性

こうしたサウナ文化をはじめ、日本とフィンランドは親和性が高いようだ。日本人ならフィンランド生まれのムーミンを知らない人はいないし、キシリトールやサンタクロースなども日本で自然に受け入れられている。フィンランドも欧米の国にしては珍しく、日本のように自宅では靴を脱ぐ。ステレオタイプ的に言えば、控えめの性格で、時間を守る国民性だとされる。

実はこれについては、アレクサンデル・ストゥブ大統領も同意する。筆者は今回、ヘルシンキの大統領府でストゥブ大統領をインタビューしたが、そこで大統領はこう話している。「フィンランド人と日本人はよく似たメンタリティを持っていると思います。人は信頼感を大事にし、尊敬の念を持ち、お酒を飲むとき以外は少しシャイなところもある。木などを使ったデザインや、美的感覚も似ています」

フィンランドは非常に清潔な国で、その点も日本に似ている。そしてサウナも日本人とフィンランド人が共感しやすい文化だということだろう。

サウナファンなら、フィンランドで本場のサウナ文化を体験してみてはいかがだろうか。

この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル」
(文:山田 敏弘)

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