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中学受験の難化で高い壁も。共働き家庭が、泥沼の受験にしないために知っておきたいこと

オールアバウト / 2024年6月26日 17時30分

中学受験の難化で高い壁も。共働き家庭が、泥沼の受験にしないために知っておきたいこと

子どもの数は減っているのに加熱気味の中学受験。共働き家庭が増えている中、仕事と子どもの受験を両立し、やってよかったと思える受験にするために大切なことは何か。20年以上中学受験を見てきた筆者がお伝えします。

共働きでは無理? 「中学受験の壁」とは

2000年代前半までは、中学受験をするのは専業主婦の家庭が多く、主に母親が子どもの受験サポートを担ってきました。しかし、現在では約72%(1177万世帯)が共働き世帯(※)です。当然、中学受験を考える世帯でも共働きの割合は増えています。

共働きの世帯の中には、「中学受験は、親のサポートがかなり必要」という話を聞いて、「共働きで中学受験をさせることはできるのだろうか?」という不安を持ち、中学受験をきっかけに仕事を辞めるという人もいます。小1の壁ならぬ、「中学受験の壁」です。

しかし、本当に親が仕事を辞めてまでサポートしないと、中学受験はできないのでしょうか。

筆者は、これまで20年以上中学受験の世界を見てきました。最初は受験生の親として、その後は教育ジャーナリストという立場で塾や学校を訪れ、200校以上を取材し、校長先生や塾の有名講師への取材も行っています。また、合格体験インタビューや模試会場での講演会などを通して、受験生の親御さんにもお会いし、話を伺ってきました。

その中で感じるのは、むやみに始めると「この道」は1度ハマったらなかなか抜け出せない“沼”になりかねないということです。

子どもの成績に一喜一憂し、いつの間にかハマる受験沼

とりあえず子どもを塾に通わせてみたら、案外成績がよかった。そこから欲が出て、どんどん受験にのめり込んでしまった……という人もいれば、子どもの成績が芳しくなく、なんとか上のクラスに上げようと親の方が受験に必死になってしまったという人もいます。

もちろん、皆さん子どもの将来のためによかれと思ってやっているのですが、子どもの成績に一喜一憂し、知らぬ間に沼にハマってしまうのです。

その結果、子どもが受験勉強で疲弊して潰れてしまったり、親子関係が壊れたり、塾の勉強についていくために、さらに塾に通って、気が付いたら大金を注ぎ込んでいたり。さらには過酷な競争を勝ち抜き、なんとか高偏差値の学校に合格したものの、入学後にやる気を失い、成績不振に陥って荒れたり、逆に成績はよくても友達付き合いがうまくいかず、ストレスから身体症状が出てしまい学校に行かれなくなったり。第一志望の学校に落ちて、偏差値的に塾から勧められた学校に進学したものの、自分の性格と合わなくて、苦しくなってしまったり……そんなケースも珍しくありません。

えー、そんなに大変なら、中学受験をしない方がいいのかなと思われたかもしれませんが、もちろん「中学受験=絶対やらない方がいい」ということではありません。やってよかった!という人もたくさんいますから、安心してくださいね。

でも、そのようになってしまう危険性もあるということを知ったうえで、受験するのかしないのか、するならどんな受験にしていくのか、ちゃんと考えてほしいのです。

なぜなら、塾に行く生活が始まれば、送迎やお弁当作りなど家族の負担も増えます。中学受験の勉強は、小学校の勉強とは比較にならないほど難しいので、子どもに任せっぱなしでは、なかなかうまくいきません。家庭学習のサポートも必要です。兄弟がいれば、その子の生活にも影響が出るでしょう。両親ともに仕事をしていたら、2人で協力し、これらをこなさなくてはなりません。

だから、受験のために仕事を辞めるという決断をする人もいます。しかし、子どものためと思って始めたことが、自分のためになっていく危険性もあるので、注意が必要です。

中学受験を考えるうえで大切なのは、「わが家の受験軸」を決めることです。どんな受験にしていくのかを、夫婦でしっかり話し合うこと。その上で、子どもも交えて「わが家の軸」を決めてからスタートしましょう。

なんのために受験をするのか、どういう受験にしていくのか

まず話し合ってほしいのは、「なんのために受験をするのか」という目的です。

親として「うちの子にはこんな中学生活を送ってほしいから中学受験を考えよう」、あるいは子どもが「自分は中学校でこんなことをしたいから受験をする」という現段階でのビジョンを考え、それを家族で共有することが大事です。

次に話し合ってほしいのは、「どういう受験にしていくのか」というスタンスです。

例えば、覚悟を持って進学塾に入れて、4科目で最後まで走り抜け、志望校合格を目指す。塾には通うが、ライフバランスに軸を置いて、無理はせず、それで合格できるわが子に合った学校に行ければいいとする。習い事と併用しながら、公立中高一貫校との併願や2科目受験、新タイプ入試を活用した中学受験をする……などなど。

家庭ごとに、子育てで大事にしていることも、家族の中で重要なものも異なります。目的を見据えたうえで、子どもの状況や家族のルールを大事にしながら、どのように受験に取り組んでいくかの基準を作っていきましょう。

仕事と子どもの受験を両立するために大事な「塾選び」

目的とスタンスによって、塾選びも変わってくるでしょう。塾によって家庭学習に関する考え方もシステムもまったく異なります。どんな塾に入るかで、生活がかなり変わります。ご家庭のライフスタイルやお子さんのタイプと、塾のシステムや考え方が合っているかを見極めて選ぶことが大切です。

これは私見ですが、家で学習サポートができないというご家庭は、大手塾ではなく、熟練講師がいて、個別サポートが充実している中規模の中学受験専門塾を選んだ方がいいのではと思っています。

仕事との両立のためには、塾選びも重要です。

共働きでも最高の結果を出せたわけ

ここからは、実際に仕事を持ちながら中学受験を経験した家庭の例を紹介しましょう。

ガチ受験をした事例

1人目は、ガチ受験をした事例。

子どもが麻布中学校に合格したAさんは、学童代わりに大手進学塾に1年生から通わせていました。4年生からは、中学受験の進学コースに在籍。山盛りのプリント教材で有名な塾です。教材整理や演習にコピーを取ることが多く、時短のために家に業務用のコピー機を買い、いつでも大量にコピーが取れる環境にしたそうです。

また、親が学習に関わりすぎると時間もなくなるうえに、こちらも精神的にキツくなるので、5年生の後半から個別指導塾を併用。あまり効果がなかったので、6年生の1年間、家庭教師に切り替えて受験をしました。

麻布中学校は本人の熱烈な希望だったため、成績はギリギリだったけれどチャレンジしたそうです。結果は、併願校は不合格だったけれど、本命は合格しました。進学塾の過酷な受験の中で、できるだけ家庭を健全に保つために、お金を有効活用した事例です。

習い事と共存した事例

2人目は、習い事と共存した事例。

子どもが慶應義塾中等部に合格したBさんは、1年生から花まる学習会に通い、野球ができる中学校に行きたいという子どもの希望をかなえるために中学受験を選択。5年生から週2日の通塾とオンラインの1:1の個別指導がセットになった中学受験コースに切り替えました。勉強は塾に任せて、もっぱら学校選びと習い事との両立のためのスケジュール管理と健康管理に努めたそうです。

最初は全く考えていなかったけれど、6年生の夏に甲子園で活躍する姿を見て、本人が「あの学校で野球をしたい」と熱望。偏差値的には15の差があり、かなり難しいと思ったけれど、考えても仕方ないので、塾にお任せして、応援していたそうです。結果は、慶應義塾中等部だけ合格しました。

2人とも、本人の「ここにどうしても行きたい!」という気持ちがあったから、頑張れたのでしょう。

「サポートや仕事との両立の仕方は、家庭や子どもによっても全く違ってくるので、どこまでやるかは、自分で探りながら、納得の形を探すのがいいと思う」と言うのは、Aさん。

確かに、住んでいる場所や仕事の環境、子どものタイプによって、事情は異なるので、これが正解というのはありません。ただ、2人とも受験軸がしっかりあったから、ブレずに最高の結果を出せたのだと思います。

親の役割は、覚悟を持って生活リズムを乱さないこと

親としては、家庭学習でも自走してほしいと思うでしょうが、子どもが全てを自分で管理して自力で勉強し、親はノータッチというのはかなり無理があります。

最近は、親自身も中学受験経験者という人も珍しくありませんが、今の中学受験の塾での学習内容は、親世代より数段難しくなっています。この道30年のベテラン塾講師によると、30年前に6年生でやっていた内容を4年生がやっているくらい難しくなっていて、しかも進度も早くなっているそうです。

入試問題も以前のような暗記型の問題中心から思考力を問う問題が増えています。その理由は、時代の変化とともに教育に求められることも変わってきているからですが、塾はこれをテキストの難易度を上げ、膨大な量の演習で乗り越えさせようとしているのです。

これが今の中学受験の現況です。その結果、塾の成績を上げるために、塾の掛け持ちや、深夜まで勉強するのが当たり前になっています。特に6年生になると、寝る時間が23時を過ぎるご家庭も多いのではないでしょうか。それが常識のように語られることに、筆者はずっと違和感を感じてきました。

前述の通り、せっかく入学した学校を続けられなくなったり、親子関係が壊れてしまう事例がたくさんありますが、その大半が、長い間夜更かしの生活を続けたこと。親の期待を一心に背負って、競争にさらされてきた結果なのです。

受験はゴールであると同時に、スタートです。子どもを追い詰めないようにすることが何より大切です。そのためにも、中学受験における親の役割は、生活面と精神面のサポート、そして偏差値にとらわれず、子どもに合った学校選びをすることだと筆者は考えています。(学校選びについては、別に書きますね)

何のために受験をするのか、どんなスタンスで向き合うのか、軸を持てば、暴走することも止められます。

ご自身の仕事と両立させるためにも、お子さんにとってやってよかった受験にするためにも、わが家の軸を持って受験に向き合ってください。

2024年8月末に発売される筆者の新刊『中学受験 親子で勝ちとる 最高の合格』(青春出版社)でも、中学受験を「やってよかった!」で終わらせる方法をご紹介しています。楽しみにお待ちくださいね。

(※)「男女共同参画白書(令和4年版 男女共同参画局)」より

この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。
(文:中曽根 陽子)

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