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東海道新幹線60周年。品川駅の「特大パネル絵」で振り返る、新幹線の忘れられないエピソード

オールアバウト / 2024年6月28日 20時45分

東海道新幹線60周年。品川駅の「特大パネル絵」で振り返る、新幹線の忘れられないエピソード

今年、東海道新幹線は開業60周年を迎える。その記念事業の一環として、JR東海は絵本作家の鈴木のりたけ氏にイラスト制作を依頼し、品川駅構内に特大パネルとして展示中だ。この絵を見ながら、改めて東海道新幹線の魅力や思い出を振り返ってみた。

あなたと新幹線と60年

2024年10月1日で、東海道新幹線は開業60周年を迎える。その記念事業の一環として、JR東海は絵本作家の鈴木のりたけ氏にイラスト制作を依頼し、品川駅構内に特大パネルとして展示中だ。

「あなたと新幹線と60年」と題して新幹線の旅における象徴的なシーンが描かれた絵を見ながら、改めて東海道新幹線の魅力や思い出を振り返ってみた。なお、このパネルのイラストはポスターとなって各駅に掲出される予定である。

「あなたと新幹線と60年」と題されたイラストは、60という大きなフレームを中心にさまざまな旅のシーンを描き出している。60周年といっても、車両の変遷は描かず、あくまで車内の様子が中心となっている。60年で何と70億人が利用した新幹線。老若男女、実に多種多様な人々が客となったが、人生の節目節目で乗った人も多い。

青春時代の希望とともに

英単語の暗記に余念がない受験生
その1つが、絵の中央下の若い女性である。彼女は、一心不乱に英単語カードに目を通している。マフラーをしているから、季節は冬。受験のために東海道新幹線に乗車したようだ。

筆者も郷里の名古屋から1人新幹線で上京したことを思い出す。大学の同級生の中には関西からやってきた者もいて、誰もが新幹線のお世話になっている。ちなみに、イラストに描かれた英単語はappreciate(感謝する)。東海道新幹線に対する感謝とも受け取れ、象徴的だ。

受験だけではなく、芸能界などで一旗揚げようと東京を目指した若者もいただろう。パネル絵の右上のギターケースを持った若者が、それを表している。新幹線は、若者たちにとっては、未来への希望を運んできたともいえる。

シンデレラ・エクスプレス~愛と別れとともに

山下達郎の音楽が聞こえてきそうなクリスマス・エクスプレスのイメージ画
青春の日々、さまざまな出会いと別れがあった。学校や仕事の都合で離れ離れになったカップルもいたが、そうした2人の仲を取り持ったのも新幹線だ。

バブル期に流行したシンデレラ・エクスプレス。週末の一時を仲良く過ごしたものの、別れの時はやってくる。ホームで1人新幹線に乗り込みプレゼントを抱えた女性は、雪景色の車窓を目にしながら旅路を急ぐ。クリスマス・エクスプレスという言葉が流行したのは1990年頃だった。

そういえば、筆者も名古屋から上京した女性を東京駅の新幹線ホームまで迎えに行ったことがあったなあ。いつの間にか疎遠になってしまったけれど、別れがあれば出会いもあるわけで、そうした過去の古傷があればこそ、今の妻との出会いもあったのだ。

筆者にとっても東海道新幹線とともにあった60年間のさまざまなエピソードが通り過ぎていく。まさに、中島みゆきの歌のように、「別れと出会いをくり返し、時代は回る」のだ。

出張、帰省、そして観光、「そうだ京都、行こう」

社会に出て仕事をすれば出張で新幹線を利用する人も数多い。仕事を終えて、新幹線に乗り込み、夜の東京タワーを眺めながら缶ビール片手にくつろぐ会社員。一方、結婚して子どもができると、幼子を抱いて実家に戻る女性もいる。お盆の時期や年末年始には、幼子で車内はにぎやかになる。

働きづめだった人生も定年を迎えると、のんびり旅にでる機会が増える。「そうだ京都、行こう」のキャンペーンは、始まって30年を過ぎている。左端のシニアがそのイメージであろう。

筆者もコロナ禍が始まる直前に「フルムーン夫婦グリーンパス」を利用して、京都、由布院、広島とグリーン車利用で優雅な旅をした。その「フルムーン夫婦グリーンパス」もなくなってしまい、過去の思い出となって久しい。

酒のツマミ、駅弁、そして食堂車があった時代

新幹線の車内では、さまざまな飲食の思い出もある。ビールのお供としてはスナック菓子のチップスターが人気だ。とりわけ、東海道新幹線限定商品があり、最近では伊勢エビ味を購入したことが記憶に新しい。筆者は胃腸が弱いので避けているけれど、シンカンセンスゴイカタイアイスの人気は驚異的だ。

関東の名物としては横浜の崎陽軒「シウマイ弁当」、関西の551蓬莱の「豚まん」が有名だ。しかし、新大阪駅で購入して車内に持ち込むと豚まんのニオイが気になると物議を醸したことがあった。裏を返せば、それだけの人気だということなのだが……。あと、浜松出身の作者らしく、うなぎパイの姿もちらりと見えるのがほほ笑ましい。

食堂車を知っている世代には懐かしいビーフカレー
また、忘れてはならないのが、カレーライスのイラストだ。ナプキンとスプーンが添えられていることから分かるように、これはお弁当ではない。かつて、新幹線に連結されていた食堂車の人気メニューの1つ、「ビーフカレー」のことだ。食堂車がなくなって久しいけれど、人気だったので「復刻 新幹線 懐かしのビーフカレー」として商品化されている。

懐かしいといえば、左端に添えられている硬券切符。今となっては信じられない話ではあるが、開業当初の新幹線の切符には硬券が用いられていた。鋏(はさみ)を入れた跡があり、乗車区間が東京~米原となっているところに作者のこだわりがある。

もっと楽しみたい、東海道新幹線の車窓

東海道新幹線の代表的な車窓といえば富士山。謎の看板727も……
東海道新幹線に乗車すると、すぐにパソコンを開いて仕事に集中する人、酒を呑んで居眠りをする人も少なくないけれど、車窓を無視するのはもったいない。いくつもの新幹線がある中で、比較的トンネルが少なく、変化に富んだ車窓が展開するのは東海道新幹線だけといっても過言ではないからだ。

代表的なものは、富士山であり、浜名湖をはじめ海や水辺の風景も見ごたえがある。そして、所々で出現する謎の看板「727」。某化粧品メーカーの広告看板であることをどれだけの人が知っているのだろうか? そして名古屋駅のJRセントラルタワーズ。その名の通りイラストの「中央」に配置されているのは偶然ではないだろう。

60年の思い出を胸に、明日を目指し走る東海道新幹線

東海道新幹線の魅力と60年の思い出をぎっしり詰め込んだイラストの特大パネル。子細に見ていくと、すっかり忘れていた過去の甘酸っぱい思い出や、懐かしい情景が走馬灯のように現れては消えていく。若いころとは違って、思い出したくなかった過去も今では懐かしく振り返ることができる。

何度乗ったかは思い出せないけれど、東海道新幹線の旅とともに人生は流れていく。ありがとう、東海道新幹線。そして、これからもよろしく!

取材協力=JR東海

この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
(文:野田 隆)

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