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血筋から「最初の愛情」を得られなかった47歳女性、今も「愛する」の意味がわからない

オールアバウト / 2024年7月4日 22時5分

血筋から「最初の愛情」を得られなかった47歳女性、今も「愛する」の意味がわからない

身勝手な母に振り回され、愛情を感じずに育ったからか、誰かに愛されたり、愛することに二の足を踏んでしまう女性。熱烈にアプローチされて結婚した過去もあるが、「夫という家族」に違和感しかなかったと振り返る。

多くの人が「愛情」を学ぶのは、家庭において家族からだろう。父親、母親、きょうだい、そして祖父母や親戚、結局、人は「血筋」から最初の愛情を得るか得られないかという状況で生まれてくるのだ。

幼少時に感じた、自分の家族が「おかしい」こと

「私が最初に友だちの家に泊まって、その家庭の様子を見たのは中学生のとき。それまでは他人の家庭は知らなかった。自分の家しかモデルがないんですよね」

ユキノさん(47歳)はそう言う。両親と弟の4人家族だったが、ユキノさんにとっては、自分が生まれ育った家庭が、人間関係の根本となった。

「でもねえ、なんだかおかしいというのは子ども心に感じていました。父は機嫌が悪くなると威張り散らし、あげくはしゃべらなくなってしまう。母は父が機嫌悪くならないよう気を遣っているように見えたけど、私には父の悪口ばかり言っていた。しかも母は父を結局はバカにしていたし、下に見ていましたね」

ユキノさんが小学校低学年のころ、母が体調を崩した。それでも母は夕方起き出して、ごはんを炊き、味噌汁や煮物を作った。父が帰宅すると母は起きて、ごはんをよそった。

「見れば母の具合が悪いことはわかるのに、父は一言も大丈夫かなんて聞かない。目の前のごはんと味噌汁、煮物を見て『他に何かないのか』と。『今日はつらくてできなかった』と母が言うと、父は『卵焼きでも干物でもいいから、何かもう一品』とだけ言ったんです。

私が魚を焼こうとすると、父は『もういい』といきなり茶碗を母に投げつけ、食べずに寝室に行ってしまいました」

「あんなバカ、さっさと死ねよ」と母は呟いた

さっぱりわからない父の不機嫌なのだが、母はちらかったごはんを淡々と片づけながら「あんなバカ、さっさと死ねよ」とつぶやいていた。

ユキノさんの記憶では、いきなり父が不機嫌炸裂だったのだが、数年前、亡くなった父の通夜のとき1つ違いの弟と話すと、「あのとき、お母さんは浮気してたんだよ」と衝撃的なことを言った。

「弟によれば、当時、母はパート先の上司と関係を持ち、父はそれを知って非常に苦しんでいたそうです。のちに父が弟と酒を酌み交わしながら、『絶対にユキノには言うなよ、あいつはお母さんの味方だから』と言って打ち明けてくれたんだ、と。

中学生になるころから私はどちらにも味方はしない、夫婦の問題を子どもに押しつけるなと思っていたので、家族それぞれがみんな違う認識を持っていたんでしょうね」

たとえ家族でも、心の内はわからないものなのだ。

人の「愛し方」がわからないことに気づく

そんな家庭で育ったせいか、ユキノさんはなかなか恋愛にも踏み出せなかった。初めて恋人ができたのは短大を出て勤め始めてから。ところが1年ほど経ったとき、完全に二股をかけられていたことを知る。

「男を見る目がなかった。と同時に、私は彼に引っ張られていっただけで自分から相手を愛することもできていなかったんでしょうね。当時は気づいていなかったけど、愛し方もわからなかった。今は自覚していますが」

その後、26歳のときに仕事で知り合った5歳年上の男性から熱烈なアプローチをされて結婚した。だが結婚後はますます混乱してしまったという。

「彼は素直な人で、好きだ、愛してるとしょっちゅう愛情表現してくれるんです。でも私はまっすぐに受け止められなくて『それは何か後ろ暗いことがあるから?』と思っちゃう。何でも一緒にしたがるのもうっとうしかった。それでもいい人だとは思ったので結婚した。

でも子どもが欲しいねと言われて、え、何それって思っちゃったんです」

家族という概念がなかったのだとユキノさんは言う。他人である彼を、夫という目で見ることもできなかったし、子どもなどできてもどうしたらいいかわからない。そもそも愛情を注ぐことがどういうことなのか、頭ではわかっても心がついていかなかった。

「夫という家族」が違和感だった

「彼が飼っていた犬がいたんです。私、犬は好きなのにどうやって近づいたらいいのか、どうやって撫でていいのかわからない。犬に迷惑なんじゃないかと考えると、近づくタイミングを失ってしまう。夫にはよくそれを指摘されました。『いいんだよ、近づきたかったらどんどん近づいて触れあえばいい』って。

でもできなかった。それは夫に対しても同じですね。結局、心開いて愛情を伝えられなかった」

3年足らずで離婚を申し出た。「夫という家族」がいる自分に違和感があり、それがどんどん肥大していってつらくなってきたからだという。

離婚してひとり暮らしを始めてから、ユキノさんの気持ちはかなり落ち着いた。ひとりが合っているとわかったのだ。恋愛も何度か経験した。

それでも最近、70代後半になった母とときどき会うと、「この人のせいで私は愛情を学べなかったのだ」と思うことが多々ある。

「結局、母は無言で人を支配するタイプだったと思いますね。父には従順なように見せながら完全にバカにしていたし、それを父もわかっていたんでしょう。父は自分が愛されていないことに苛立っていた。母は支配まではできない父を蔑視していて、代わりに私を味方につけた。

弟はいち早く母から逃げましたが、私は嫌だなと思いながらも、今も母とはよく会っている。会えば会うほど、この人は人の神経を逆なでする天才だなと思うんです。はっきり言って母への愛はありません。母も私を愛しているとは思えない。それを確認するために会っているのかもしれませんね」

最後はひどくつらそうな表情になったユキノさん。だが、それを認めたときから気持ちが楽になったと微笑んだ。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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