1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

安藤サクラ主演映画『百円の恋』の中国版リメイクで、俳優が「50キロ以上減量」して挑んだ凄み

オールアバウト / 2024年7月8日 13時10分

安藤サクラ主演映画『百円の恋』の中国版リメイクで、俳優が「50キロ以上減量」して挑んだ凄み

安藤サクラ主演の『百円の恋』を中国でリメイクした映画『YOLO 百元の恋』、その主演俳優のとんでもない挑戦と、作品の魅力を解説しましょう。(※サムネイル画像出展:(C)New Classics Media Corporation)

7月5日より中国映画『YOLO 百元の恋』が劇場公開中です。本作は2014年製作の安藤サクラ主演の日本映画『百円の恋』のリメイク。タイトルの「YOLO」は「You Only Live Once」の頭文字を取ったスラングで、「人生は一度きり」の意味が込められています。『YOLO 百元の恋』 2024年7月5日(金)公開 配給:東映ビデオ (C)New Classics Media Corporation

監督兼主演俳優が2作続けて大ヒット作を届けた

この『YOLO 百元の恋』は中国での最終興行収入が約35億元(=約730億円)を超え、アメリカを含む世界累計興行収入が740億円を突破する超大ヒットを遂げ、中国でリメイクされた日本映画の最高興行収入記録を大幅に更新しています。

本作で主演および監督を務めたジャー・リンは、Weibo(中国最大のSNS)のフォロワー数が1760万人を超える、中国を代表するコメディアンの1人。初めて監督と脚本と主演を務めた映画『こんにちは、私のお母さん』も、中国国内で歴代2位の興行収入を記録し、全世界興行収入が約900億円にもなるという、社会現象的な盛り上がりを見せていたのです。

「同じ人は見えない」ほどの大変身

その数字だけでもすごいのですが、今回の『YOLO 百元の恋』ではジャー・リンが文字通りに「身を削る」挑戦をしていることを特筆しなければならないでしょう。

公式のポスターには「太っていた頃」と「ボクシングに挑み減量した姿」それぞれの主人公の姿があるので、「なるほど2人の俳優がそれぞれ演じているんだな」と思う人もいるのではないでしょうか。(C)New Classics Media Corporationしかしながら、実際に主人公を演じたジャー・リンは「元々80キロほどあった自身の体重からさらに約20キロ増量。100キロを超えた状態で撮影を開始し、撮影と並行して取り組んだ厳しいボクシングトレーニングを経て、最終的に50キロ以上もの減量に成功」という、こちらもまた数字だけ見てもとんでもない、大変身をしているのです。(C)New Classics Media Corporationしかも、そのジャー・リンは1年以上もメディアから姿を消し、本国では映画公開直前まで減量後のジャー・リンの姿が伏せられていたため、大きな話題を呼んだのだとか。(C)New Classics Media Corporation見た目だけだと「本当に同じ人なの?」と疑ってしまうほどの大変身ですが、実際に本編を見ると「本当に同じ人だった!」とはっきりと分かるシーンがあります。フィクションの物語を紡ぐ劇映画であると同時に、俳優の挑戦がそのまま主人公の奮闘にも重なるという、ドキュメンタリー的な側面も持ち合わせている作品なのです。

いい意味で「笑えなくもなる」悲喜劇の物語

本作のあらすじをかいつまんでいえば、「無職で引きこもりだった32歳の女性が、立て続けにひどい目に遭ってしまい、『一度は勝ちたい』と思いボクシングに挑む」というもの。基本的にはコミカルな場面が多くクスッと笑えたりもするのですが、いい意味で「笑えなくなる」ほどの事態が訪れることも重要でした。(C)New Classics Media Corporation主人公は初めこそ、何もかもが褒められたものではない怠け者。何をするにも人任せで母親から呆れられ、彼氏は親友に「寝取られ」てしまい、妹とは大げんかをして、家を出ることになりしぶしぶ1人暮らしを開始し、なんとかバイトを始めます。ダメダメですが、どこか憎めないキュートさもあり、まともな感情も持ち合わせていることも、少しずつ前向きに人生を歩もうとはしていることも分かるので、ちゃんと応援する気になれるでしょう。(C)New Classics Media Corporationそんな彼女は、偶然出会ったボクサーに一目惚れをして、彼から「デートっぽい誘い」を受けたりもするのですが、バイトの同僚からは「どうせジムへの勧誘だって」と軽んじられます。その後のデート(と主人公は思いたいこと)が具体的にどうなるのかは伏せておきますが、これがまた冗談みたいなシチュエーションでもあり、「そのコミカルさがむしろ切なさを際立たせる」効果を生んでいたのです。(C)New Classics Media Corporationそれでも、主人公は大事な試合を控えた彼を支えることに、心からの希望を見いだすのですが、それから先の事態もまた悲喜劇のおかしみと切なさが同居する……いや、いい意味で「もういいから! 主人公をこれ以上いじめないであげてくれ! 幸せになってくれ!」と心から願ってしまうほどのものとなっていました。(C)New Classics Media Corporationもちろん、それも作品には必要なもの。人生でとことん負け続けた、いや大切なものを失い続けた主人公の姿を見せ続けたからこその、「たった1つ残された」ボクシングに挑む様、その理由が「一度は勝ってみたい」という切実な理由であることにも、涙腺が刺激されます。クライマックスの、試合に挑む前、そして試合そのものでの彼女の姿は、とても美しく見えました。

理想的なリメイクへのアプローチ

本作は初めに掲げた通り日本映画『百円の恋』のリメイク。「32歳で引きこもりの女性が妹とけんかして家を出ていく」土台となる設定や物語は踏襲されているのですが、アレンジも効いています。

例えば、「テレビ番組への出演依頼」をめぐる葛藤のほか、とある事実を「後から明かす」構成からは、ただ同じことを繰り返すだけでなく、オリジナルをリスペクトしながらも、独自の魅力を打ち出すという、リメイクの姿勢としてもとても真っ当なものに思えました。(C)New Classics Media Corporationまた、元の『百円の恋』は直接的な性描写がありR15+指定がされていたのですが、今回はそれを避けて日本ではG(全年齢)指定となっています。

さらにオリジナルと異なるのは、ラストシーン。どう具体的に違うのかはもちろん伏せておきますが、今回の方が好きだという人も、きっといるでしょう。(C)New Classics Media Corporationまた、主演俳優および監督のジャー・リンは、『百円の恋』で主演を演じた安藤サクラに感銘を受けて、中国の映画会社が東映グループにリメイクのオファーをして制作が決定したそうです。『百円の恋』の脚本・足立紳、監督・武正晴、プロデューサー・佐藤現が監修として開発段階から参加しており、理想的なまでのオリジナルとリメイクの橋渡しもできていたといえるでしょう。(C)New Classics Media Corporationまた、オリジナルの『百円の恋』はアメリカのアカデミー賞の外国語映画賞日本代表作品に選出され、第39回日本アカデミー賞では最優秀主演女優賞、最優秀脚本賞を受賞するなど、とても高い評価を得た作品です。何より安藤サクラの俳優としての挑戦と演技、見事にボクサーを体現したことに特に称賛が集まったオリジナル作品と、「比べられる」ことにもなるジャー・リンのプレッシャーや覚悟は半端なものではなかったでしょう。(C)New Classics Media Corporationそして、ジャー・リンは前述した通りの1年以上をかけての大変身を遂げ、オリジナルへのリスペクトとアレンジから鑑みても、理想的なアプローチがされた、完璧と言ってもいいほどのリメイクを送り届けてくれたのです。

本作が、たくさんの「負けたことがある人」に届くことを願っています。きっと、「YOLO」のタイトル通り、「一度きりの人生」で何かの挑戦をする、はたまた前向きに生きるためのヒントも、きっと得られることでしょう。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください