思春期にとっての容姿問題…子どもに脱毛や美容整形を相談されても「ダメとは言えない」
オールアバウト / 2024年7月6日 22時5分
![思春期にとっての容姿問題…子どもに脱毛や美容整形を相談されても「ダメとは言えない」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_109181_0-small.jpg)
アンチ・ルッキズムは世界的風潮ではあるが、現実はそうはいかないのかもしれない。美容整形も手軽にできる現代、小学生や中学生までが脱毛や整形を望むケースがあるという。親としては、悩みが深い問題だ。
「ルッキズム」とは、外見至上主義のこと。人の価値の中で外見に優先順位をつける考え方だ。この考え方をやめようという動きは世界中で以前から起こっている。痩せすぎたモデルが仕事を得られないこともあった。
それでもやはり、「人は見た目」という考え方は強い。就職活動をする前にプチ整形をする男女も多い。
親世代もプチ整形などに抵抗のない世代なのだろう。整形はどんどん低年齢化しているようだ。
小学生が脱毛するのはアリかナシか
「姉の娘は小学生なんですが、脱毛のため皮膚科に通っているんです。もうちょっと大きくなってからでいいんじゃないのと言ったんだけど、毛深いことを学校でからかわれてどんどんコンプレックスが大きくなっていったんですって。姉も私も毛深いほうなので、親としては何とかしてやりたいと思ったんでしょうね」そう言うのはミエコさん(42歳)。確かに、1度コンプレックスを感じ、そこをからかわれたら今後の人生にも差し支えるだろう。親としては心配するのもやむを得ない。
「姉は若いころ本気で悩んで、いつもカミソリで剃っていたんだそうです。それでかえって肌が荒れたりしていた。だから娘にはそんな思いをさせたくないって。姪っ子は脱毛に通うようになって明るくなりました。ツルツルしてきたよって私にも見せてくれた。彼女の笑顔が増えるなら、悪いことでもないのかなと私も思うようになりました」
ミエコさんにも小学生の娘がいる。娘も比較的毛深いほうだが、一向に気にする気配はない。同じ世代のいとこが脱毛に通っていると聞いても「へえ」と言うだけ。彼女は今、ストリート系のダンスに夢中なのだ。
思春期の男女にとっての容姿問題
「夢中になるものがなかったら、毛深いことにコンプレックスを抱いていたかもしれない。娘は早くに好きなものに出会えただけ。いずれ脱毛に通いたいと言い出すかもしれませんしね。もしどこかにコンプレックスを感じたら、娘が言いやすいような環境を作っておくことが大事かなと思っています」毛深いことだけではなく、思春期の男女にとって、容姿は大きな問題なのかもしれない。気にしなければいいと言っても、そう簡単に悩みは消えない。毎日鏡を見てはため息をつき、悩みがどんどん深くなるケースも多いだろう。
中学生で「二重整形」を熱望
中学生の娘が、どうしても二重まぶたにしたいと毎日、泣いて訴えてくるので困惑しているというのはミチコさん(46歳)。「なんだかかわいそうになってしまって。でも夫は猛反対。『今は勉強したりスポーツしたりするのが一番大事な時期。見た目なんかにとらわれるな』と叱咤激励しているんです。その年代だからこそ、見た目にとらわれてしまうのよと言ったら、『ルッキズムに負けるな』とまで言う。両方の気持ちがわかるだけに、どうしたらいいんだろうと思います」
ただ、娘は先日、学校には行きたくないと言い出した。いじめられているのかと心配したが、そうではなく娘自身が「こんな目で外に出たくない」と言っているのだそう。
「私の時代は、顔に文句なんか言ったら、『親からもらった顔に文句をつけるな』と怒られたところですが、今の時代、そんなことは言えないですよね。私自身も、奥二重が嫌でたまらなかったから、比較的、安価で簡単な方法なら夏休みなどに合わせてやってもいいんじゃないかと思うんですけどね……」
ミチコさんも仕事を続けてきたため、娘には寂しい思いをさせたという負い目もあるようだ。だからこそ、娘がここまで熱望しているなら叶えてやりたいとも思っている。つい先日、夫には内緒で娘を連れて美容整形の病院に行ってみた。
もし医師が「今はやらなくてもいい」といえば娘も納得するだろうと思ったのだ。
親として毅然と「ダメ」とは言えない自分
「でも、今は中学生でもやる人は多い。そんなに危険なわけでもないと言われて、娘はすっかりその気になってしまった。夫に話したら怒られました。私自身も、すごく悩んでいます。危険ではないと言われても心配だし、そもそも夫同様、ルッキズムに巻き込まれていく娘がどこか危うくて」それでも毅然と「ダメ」と言えないのは、ミチコさん自身が深く悩んだことがあるから。今のうちに娘の心を前向きにさせたい思いもある。
「娘には、ごねれば親は言うことを聞くとか、人生は自分の思い通りになるとか、そんなふうに思う人間にはなってほしくない。ルッキズムで悩む人に『整形すればいいじゃん』と気軽に言うのも違う。そういったもろもろの深いところまでまだわかっている年齢ではないですからね。
18歳になったら成人だから、そこまで待ってもいいと本当は思ってる。ただ、このまま学校に行かないと言われても……」
親の悩みは尽きない。そして娘も苦しんでいる。何が正解なのか、誰にも答えは出ないのかもしれない。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))
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