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みどりの窓口に頼るしかない…JRのお得なきっぷが「ネット予約できない」3つのケース

オールアバウト / 2024年7月8日 17時30分

みどりの窓口に頼るしかない…JRのお得なきっぷが「ネット予約できない」3つのケース

JR「みどりの窓口」の混雑ぶりが報道されている。日本人の旅行者のみならず、訪日外国人の増加、さらには人員や経費削減のために窓口の閉鎖が相次ぎ、混乱に拍車をかけているという。できれば長蛇の列に加わりたくない、何か良い知恵はないだろうか?

短距離の移動は大都市圏に関する限り、Suica、ICOCA、TOICA、SUGOCAなどのICカード乗車券の普及により、事前にきっぷを購入することはまれになった。改札機にICカード(あるいはモバイル用ICカードを内蔵したスマートフォン)を直接タッチすることにより、ストレスなく乗車、下車できる。従って、事前にきっぷを購入するのは、長距離列車に乗車するときであろう。

東海道、山陽、九州新幹線の指定券は「エクスプレス予約」が便利

京都市内を走る東海道新幹線JRによる長距離移動で多くの人が利用するのは、新幹線であろう。今では新幹線も多方面に路線が延びている。その中で最も利用が多いのは、東海道新幹線とそれに続く山陽新幹線、九州新幹線だ。

このルートに関しては、JR東海エリアを中心に普及している「エクスプレス(EX)予約」というサービスがある。事前にインターネット予約をすると、原則、専用のカードを改札機にタッチすることにより、列車に乗車、そして下車できる会員制のサービスだ。

エクスプレス予約の会員カードと改札機にタッチすると発券される利用票年会費は1100円(税込)。指定席の会員料金は通常価格よりも若干安いので、東京~名古屋を「のぞみ」指定席で1往復するだけで元はとれる。年に2往復以上乗る予定があり、新たなクレジットカードを作るのに制約がないのであれば、入会を考えてもよいのではないだろうか。

年に1回利用するかどうか分からないとか、年会費を払いたくないのであれば、「スマートEX」というサービスもある。こちらはエクスプレス予約の会員価格よりも割引率は低いけれど、すでに所持しているクレジットカードで決済ができ、持っている交通系ICカードで入退場可能なのが便利だ。

いずれにせよ、混雑した窓口に並んで指定券を購入する必要が全くないのがよい。東海道新幹線のみならず、九州新幹線の博多~熊本といった九州内での乗車にも使える。

「エクスプレス予約」や「スマートEX」の方が割高になることも

ただし注意点がある。それは、あくまで新幹線の乗車のみに限定されるチケットであり、新幹線乗車前や乗車後の在来線の運賃は一切含まれない点だ。

紙のきっぷであれば、新幹線指定券とは別に発券される乗車券に、新幹線乗車前後の運賃が含まれている。例えば東京から名古屋に出かける場合、「東京都区内→名古屋市内」という乗車券が発行される。これを利用すると、JR西荻窪駅からJR中央線を利用して東京駅から新幹線に乗車、名古屋駅で下車後、JR中央線(西線)で新守山駅まで乗っても、追加料金は一切不要だ(東京駅、名古屋駅でいったん改札外に出ることは不可)。

一方、「エクスプレス(EX)予約」や「スマートEX」の場合は、上記の中央線(在来線)の運賃は別払いとなる。従って、新幹線料金が若干割引となっても、乗降する駅によっては紙のきっぷを利用する場合に比べてトータルで割高になることもある。新幹線以外はJRを使わない(地下鉄やバス、タクシー利用)のであれば影響はない。

紙のきっぷ(東京都区内→名古屋市内)
乗車券=6380円、新幹線特急券(のぞみ)=4920円、合計=1万1300円
(通常期)

エクスプレス(EX)予約=1万880円(東京駅→名古屋駅)
西荻窪→東京=406円(SuicaなどIC乗車券利用)
名古屋→新守山=250円
合計=1万1536円……紙のきっぷより236円割高!

(閑散期の場合は200円安い1万680円となるので、割高分は36円となり これなら、それほど気にならない人もいるであろう)

JR東日本の新幹線なら「えきねっと」が便利

「えきねっと」トップページ(部分)東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線などJR東日本を中心とした新幹線ネットワークなら、「えきねっと」を利用してみたい。こちらも、「新幹線eチケットサービス」(事前にSuicaなどのICカードを登録して乗車する。特急券と乗車券がセットで販売される)を利用する方法と、予約した区間のきっぷを指定席券売機で発券する方法の2種類がある。

株主優待券やシニア向けの大人の休日俱楽部の割引も受けられるので、在来線の特急列車など複雑な乗り換えを必要としない単純な往復(東京~仙台、東京~長野など)にはストレスなく活用できるだろう。

ところが、いいことばかりではない。相変わらず窓口を利用せざるを得ない場合が歴然と存在するのだ。

JRの切符、みどりの窓口に頼らざるを得ないケース

そうしたケースを3つ紹介しよう。

1. 一筆書ききっぷはネットでは購入できない

JRの乗車券は距離が長いほど割安になるという遠距離逓減制が適用される。国鉄時代から引き継がれた制度で、遠くに行けば行くほど1キロあたりの単価が低くなる。それゆえ、「一筆書ききっぷ」というものが鉄道ファンや旅行の達人には広く知れ渡っていて、利用する人は少なからずいる。

筆者も最近、北陸に行く時に往復でルートを変え、「東京→(北陸新幹線)→金沢→(北陸新幹線)→敦賀→(北陸本線)→米原→(東海道新幹線)→名古屋→(東海道新幹線)→東京」というルートのきっぷを購入した。

要するに「東京都区内発、東京都区内行き」という乗車券を購入したのだ(7日間有効で、都区内以外では途中下車OK)。ところがこれを「えきねっと」で申し込もうとすると、「乗車駅と降車駅は異なる駅を入力してください」と表示されてしまう。東京駅発東京駅行き乗車券は発券不可能少々考えて「乗車駅=上野、降車駅=東京、経由駅1=金沢、経由駅2=名古屋」と入力してみる。

丸1日でのハードな乗り鉄になってしまう列車の選択肢今度は、「かがやき」「しらさぎ」「ひかり」「のぞみ」が選ばれたものの、合わせて4列車以上のため申し込みできないとのこと。工夫して3列車にしてみたものの、1日の行程となり、列車に乗るだけの慌ただしいスケジュールだ。いくら「乗り鉄」とはいえ、この行程はありえない。金沢や名古屋で途中下車し、宿泊してのんびり過ごしたいのだ。

それなら、いっそのこと、乗車券だけ申し込もうかと列車名を書かないで入力してみると、「条件を変えて再度検索してください」と表示される。要するに、「えきねっと」では無理なのだ。諦めて窓口に並んで申し込んだ。

2. ジパング俱楽部は今もアナログな手帳方式

ジパング俱楽部の会員手帳と中の旅行記録証。きっぷを申し込むと窓口の係員が押印するまた、JR全線の切符が3割引となる「ジパング俱楽部」(65歳以上限定)は、JR東日本&JR北海道の列車に関しては、大人の休日俱楽部カードを使ってネット予約や指定席券売機での申し込みができるけれど、他社(東海道新幹線を運行するJR東海など)の列車の予約は窓口でしか扱ってくれない。今やシニアでもネットを使える人は少なくないのだから、ネット予約も可能なシステムに移行すべきであろう。

3. 人気の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」の予約

人気の寝台特急「サンライズ出雲」人気の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」の寝台券に関しても制約がある。「えきねっと」で予約できるのは、「ノビノビ座席」と呼ばれる雑魚寝スタイルの車両のみ。寝台券不要で特急券のみの席だ。これ以外の個室寝台は「えきねっと」では予約できない。

JR西日本が運営する「JRおでかけネット」のサイトからであれば、個室寝台が予約できる。いわゆる「e5489」での発券となる。住んでいる場所がJR西日本のエリア内であれば、みどりの窓口や指定席券売機のある最寄りの駅で受け取りが可能だ。しかし、JR西日本エリア外、例えば首都圏在住の場合、受け取り駅が限られる。

原則、JR東日本の駅では不可能で、JR東海の駅ならOKだ。となると、首都圏では東海道新幹線の停車駅である東京駅、品川駅、新横浜駅の窓口あるいは券売機のみとなる。

横浜駅はJR東日本の駅なので発券できない。こうなると、上記の駅近くの人以外は、最寄り駅の「みどりの窓口」に並んで購入するのが確実であろう。あるいは、旅行会社でサンライズ瀬戸・出雲に乗るツアーを探して、それに申し込む方法か……。

「えきねっと」は優しく教えてくれない

筆者の妻が「えきねっと」で発券した特急券筆者の妻が「えきねっと」を利用して水戸まで日帰りで親戚を訪問した。すでに何回か往復しているので、ネット利用に慣れているはずだった。

往復の乗車券と特急券を用意して、帰りの特急「ときわ」に乗車したら、その列車は臨時列車で終点は品川ではなく上野だった。東京駅で降りるつもりだったので、慌てたことはいうまでもない。東京駅に発着する常磐線特急「ひたち」「ときわ」鉄道ファンであれば、列車番号や列車ダイヤに注目するであろうが、鉄道ファンではなく、用があって列車を利用する人はそこまで気にしないものだ。

「えきねっと」で予約するとき、水戸発17時台発車で検索し、最初に表示された列車を何の疑いもなくクリックしたという。これまで何回か同じことをしてきたのであるが、今回は金曜日だったので、金曜限定で運行される上野止まりの臨時列車が、いつも乗る列車の20分前に走っていたのが運の尽きだった。乗車券の行き先は東京山手線内だったし、支払金額もいつもと変わらなかったから全く「異変」に気づかなかったそうだ。

もし、窓口で購入するのなら、係員が「17時台の『ときわ』ですね。2本ありますが、どちらにしますか? 33分発は上野止まりなので、東京まで行きたいのなら53分発ですね」と聞いてくれるから、間違いが少なくなる。鉄道に詳しくない人が有人窓口に向かいがちなのは、こうしたダイヤの複雑さも一因だろう。

「みどりの窓口」を削減しても混乱するだけ

券売機は乗り慣れていない人に優しくないまた別の話。指定席券売機の操作が終わったとき、隣の券売機を操作していた女性が、「すみません……。『あずさ』の自由席に乗りたいのですが、どのボタンを押せばいいのでしょうか?」と聞いてきた。「自由席」のボタンの中に「あずさ」の選択肢がないのだという。

「今は、あずさの自由席はないですよ」「えっ、ないのですか?」……。未指定券などといっても混乱するだけだろうから、分かりやすくそう教えてあげた。きっと「あずさ」には何年も前に乗っただけで、久しぶりなのだろう。

券売機は、ふだん列車に乗り慣れている人には問題ないけれど、たまにしか乗らず、列車の知識がない人には決して優しくはない。JR側にとっては面倒ではあるけれど、「自由席」という選択肢の中にも「○○○号、○○○号、……に自由席はありません。全車指定席です」という表示が必要なのかもしれない。きめ細かい対応が券売機のキャパシティを超えていて無理なのであれば、まだまだ有人窓口の方が安心な人は多そうだ。

航空機や高速バスと違って、JRの列車や運賃体系は複雑怪奇だ。いきなり、「みどりの窓口」を削減しても混乱するだけ。JRの運賃および料金体系の複雑さは、世の中の鉄道に詳しくない人には、敷居が高すぎるだろう。

この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
(文:野田 隆)

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