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「短すぎる給食時間」にどんな弊害が? 授業短縮でなんとか20分確保する日も…小1年担任に実態を聞いた

オールアバウト / 2024年7月9日 12時0分

「短すぎる給食時間」にどんな弊害が? 授業短縮でなんとか20分確保する日も…小1年担任に実態を聞いた

小学校の給食では、児童が落ち着いて食べる時間がどの程度確保されているのだろうか。小学校1年生の担任を務める白石先生(仮名)に、給食時間の長さや課題を聞いた。

給食時間が短くて食べ終わらない、急いで食べている

「給食の時間が短くて、食べ終わらない」「時間を気にして、急いで食べている」――。学校給食の時間について、児童からそんな声を耳にすることがある。

過去には、給食中の窒息事故も起きている。文部科学省が発行している『食に関する指導の手引』には、窒息事故未然防止のポイントとして、「食べ物は食べやすい大きさにして、よく噛んで食べるよう指導する」「早食いは危険であることを指導する」などと記載されている(*)。

早食いをせず、よく噛んで食べるためにも、十分な食事時間の確保は必須ではないだろうか。特に小学校低学年では、食べ終えるまでに時間がかかる児童も多い。

実際の教育現場では、食べる時間はどの程度確保されているのか。大阪府の公立小学校で1年生の担任を務める白石先生(仮名)に、給食時間の様子を聞いた。

配膳にも時間がかかる1年生。食べる時間を最低20分は確保したいが

白石先生が勤めている小学校では、学校給食センターより「教職員向け給食指導の手引き」が配布されている。そこには、一例として給食時間のタイムスケジュールが記されている。

確保されている給食時間は、12時20分から13時00分までの40分間。子どもが着席して給食を食べる時間は、準備15分間と片付け5分間を除いた20分間だ。

実際は、どれくらいの時間を確保できているのだろうか。

「記載されているタイムスケジュールの通り、最初の15分間で準備をして、その後の20分間で食べることが多いですね。ただ、特に1年生の最初の頃は、15分間で準備するには難しさがあります。それも考慮して、給食前の授業を5分から10分程度早めに終わらせて、その分を配膳準備に当てることもあります。そうすると、20分ちょっと食べる時間を確保できます。食べる時間が短いことは、子どもにとってはしんどいことだと思うので」

時間が足りなくて食べ終わらない子も

理想的には30分程度の時間を確保できるとよいが、準備や片付けをすることを考えると、現実的には難しいという。白石先生自身も小学校での給食時間の短さを指摘する声は耳にすることがあり、少しでも食べる時間を長くできるよう工夫している。

なかには食べる時間が30分間あっても、食べ終えられない子もいるという。

「給食時間内に全部食べ終わらない子どもが、1年生だと4~5人はいます。お腹がいっぱいだったり、好き嫌いがあったりして食べきれないのではなく、時間が足りなくて食べきれないんです」

そのような児童には、どのような対応をしているのだろうか。

「それはもう仕方がないため、『時間がきたから、そこまでにしようか』と声をかけています。ただ、食べているのに片づけを促すのは申し訳ないという気持ちはもちろんあります。1年生ならではのことだと思うんですけどね。2年生以上になれば、そういう子は減っていきます」

また保護者からは、子どもが給食時間内に食べ終えているかを心配する声もあるという。

「保育園や幼稚園で、食べるのが遅いことを指摘されたことがあるんだと思います。私自身は、食べるのが遅いこと自体は何も問題ないと思っているので、『頑張って食べていますよ』とお伝えするようにしています」

十分な給食時間の確保が、丁寧な個別対応にもつながる

食べる時間が短いことは児童にとって負担が大きいだけではなく、教員にとっては児童一人ひとりに丁寧な対応がしづらくなることにもつながる。

例えば、白石先生のクラスでは、食べ始める前に食事の量を個別に減らせる時間を設けている。苦手な食べ物があったり食べきれないと思ったりした児童は、事前に量を減らせるのだ。その際には、児童と個別にやりとりする必要がある。

「食事の量を減らしに来た子どもに対して『ひと口だけでも食べてみよう』と声をかける先生もいます。ただ、その声かけをするかどうかは悩ましいですね」

ちょっとしたひと言ではあるが、一体どのような点に悩むのだろうか。

「食べず嫌いなこともあるので、『ひと口だけでも食べてみよう』と声をかけたい気持ちはあるのですが、感覚過敏があって食べられない子もいますし、その食材が苦手で少し食べるだけでも苦痛を感じる子もいます。ちょっとした促しであっても、そのひと言が負担に感じる子もいるわけです。本来ならば、もう少し子どもと丁寧にやりとりをして、食べるか食べないか、どの程度食べてみるかなどを決めていく必要があります。現状だと、短い給食時間の中で個別にそれをやるのはなかなか難しいです」

給食時間を十分に確保することは、自分のペースで食べられることはもちろん、教員が一人ひとりの児童にきめ細かい対応ができることにもつながる。限られた時間のなかで、児童が楽しみながら食を学ぶために、工夫を重ねる教員は多いのではないだろうか。

*:「食に関する指導の手引」第二次改訂版(平成31年3月)第5章/文部科学省

この記事の執筆者:建石 尚子
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3ヶ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当。
(文:建石 尚子)

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