元セクシー女優だから「ゾーニングすべきでは?」の気持ち悪さ。「差別的で怖い」との声も…
オールアバウト / 2024年7月9日 22時5分
![元セクシー女優だから「ゾーニングすべきでは?」の気持ち悪さ。「差別的で怖い」との声も…](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_109384_0-small.jpg)
特定の職業に就く人を「ゾーニングすべきでは?」というネット上の意見について賛否の声があがっている。人を差別する表現としてゾーニングという言葉を使うのは「怖さがある」と、子育て経験のある40代女性は言う。
「ゾーニング」という英語は、本来「区割り、(都市計画での)地区制」などのこと。それが日本独自の解釈で、物品・コンテンツ・情報などの販売や利用を年齢によって制限する意味に広がっていった。
「ゾーニング」とは? セクシー女優という職業
つい先日、タレントの三上悠亜さん(30)がアパレルブランドとコラボしたことが炎上する事態へと発展した。三上さんはもともとSKE48のメンバー。2009年から5年間、アイドルとして活動後、2015年にはセクシー女優としてデビューして人気を博した。昨年夏にはセクシー女優を引退し、現在はタレント活動を行っている。2023年秋に台湾プロ野球の始球式に呼ばれて参加した際にも、「ゾーニングすべきでは?」と賛否の声が上がった。
そして先日のアパレルブランドとのコラボの件である。
「セクシー女優が、子ども用品も扱っているアパレルサイトに出るなんて、とんでもない。子どもを守りたい」
そんな声が大多数なのだが、どうも意味がわからない。アパレルメーカーの公式サイトでセクシー動画が流れているわけではないし、彼女は現在、セクシー女優ではなくタレントである。たとえセクシー女優であったとしても、アパレルとコラボすることに問題があるとは思えない。これは明らかに職業差別ではないのだろうか。
彼女自身は、X(旧Twitter)で以下のように表明している(原文ママ、一部抜粋)。「今回のことだけに限らず、私は企業から頂いた仕事を真っ当してやらせていただいて、需要と供給で行っていることです」「私は現役当時からAV女優が全員に認められる仕事だと思っていません。
誰かに勧めたこともありません。リスペクトして欲しいとも思ったことはありません」だが、本人がこうして胸の内を明かすことと、他人が誹謗中傷を浴びせることとはまったく別の話。
子どもへの影響というが、子どもがそこまで気にするものだろうか。「この人誰?」と聞かれたら「タレントさん」と言えばいいだけのことではないのか。
子どもがいると「神経質になる」
「うちはもう子どもが20歳と18歳なので、すべて本人たちが選択、決断するしかないと思いますが、小さいころはやはり気を遣いました。子どもに悪影響がありそうなものは排除していくのが親の責任だと思っていた」ユウミさん(49歳)は、そう子育て中を振り返った。特に子どもたちが小学生のころは夫が持ち帰る雑誌や夕刊紙、テレビCMなどにもピリピリしていたという。
「今思えば、どうしてあんなに神経質になっていたのかよくわからないのですが、それが親というものなのかもしれません。今の時代、ネットがあるから親は余計に大変だろうなと思います」
ただ、子どもたちは学校で友だちからいろいろな情報を受け取る。いくら親がピリピリしていても、子どもには子どもの世界ができていく。
「昔は家族でテレビ視聴するような時間帯に、女性の上半身ヌードが平気で流れていたわけですし、そんな時代と比べてみれば、私の子育て中はそういうことには気を遣わないで済んだ。ただ、今回のことはそこまで否定するようなことでしょうか。
元セクシー女優で今はタレントさんなんでしょう。別に犯罪者でもないのに、テレビに出すな、コラボするなと他人が言う権利はないですよね」
ゾーニングという言葉が使われているのが怖いとも、ユウミさんは言う。コロナ禍では危険区域と安全区分を事務的に区別する際に使われていた記憶があるが、今回は「完全に人を差別する言葉としての“ゾーニング”でしょう。なんだか気分が悪いですよね。誰でもいつゾーニングされるかわからない危険性がある」と顔を曇らせた。
元キャバクラ勤務の女性「隠すつもりはないが」
「私は昔、キャバクラで仕事をしていたことがあるんです。別に隠すつもりはないので結婚するとき夫にも話しましたし、後悔もしていません。でも、ママ友の間でキャバクラ嬢を貶めるような発言を聞いたことがあって、さすがにこの場では自分がやっていたとは言えないなと思いました。世の中、そういう人がいるということですよね」そう言うのはアキコさん(39歳)だ。6歳のひとり娘がいるが、もし彼女がセクシー女優になることを決意したら、それは止めることができないだろうと考えている。
「親には、子どもにこうあってほしいという希望がある。でもそれを押しつけることはできません。子どもであっても別人格だから。セクシー女優さんにも親や家族がいる。他者に中傷されているとわかったら、娘がそういう仕事をしていることより傷つくんじゃないでしょうか。
彼女の親の気持ちになったら、コラボするなとかテレビに出るなとかは言えませんよね」
故・飯島愛さんが活躍した20年前は……
かつて飯島愛さんというタレントがいた。1992年にAVデビュー後、そのままテレビの深夜番組に登場、人気者となって2年後にセクシー女優を引退してタレント活動を続けた。2000年に波乱に満ちた人生をつづった自伝的小説を出版して話題になり、以降は作家としても活躍しながら、性感染症の予防活動に尽力した。この当時、彼女を「排除」しようという空気はまったくなく、当初は男性ファンが多かった彼女には、カミングアウト以降、若い女性ファンが激増した。彼女の人柄がそうさせたのだろう。
20年前は、まだ人には「何でも受け入れる」寛容さが残っていた。寛容さというと飯島愛さんに失礼かもしれない。AV出身だからといって差別するという意識が、一般人には薄かったということだ。あれから何があって、人はこれほどギスギスするようになったのか。そこが不思議でならない。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))
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