八方美人は嫌われる?「みんな仲良く平等に」したら中高時代はいじめられ、恋愛できない性格に…
オールアバウト / 2024年7月11日 22時5分
![八方美人は嫌われる?「みんな仲良く平等に」したら中高時代はいじめられ、恋愛できない性格に…](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_109397_0-small.jpg)
幼い頃から母に「美人じゃないのだから、いつもニコニコしていなさい」と言われていた。中学時代は八方美人だということでいじめられ、大人になってからは人の機嫌ばかりを取るようになってしまった。
「あなたは美人じゃないんだから、いつでも誰にでもニコニコ接してかわいくしていなさい」
こんな言葉を母親に言われ、それに従ってニコニコ「いい人」でいることを心がけてきた。そんな女性は少なくない。だが、それはある意味で「呪いの言葉」だ。
八方美人といじめられた中学時代
「母には子どものころから、誰にでも感じよく接しなさい、いつもニコニコしてかわいくいること。あなたは美人じゃないんだから、と言われていました。私はその言葉を守って、小さいころから愛想のいい子だった。小学校に入ってからもいつもニコニコ、誰にでも親切にしていたから小学生のうちはよかったんですが」
そう言うのはサエコさん(33歳)だ。
中学に入ると、クラスの中でグループができた。サエコさんはどこにも所属せず、誰にでも平等に接した。「どこでも誰にでもニコニコして八方美人だ」といじめられるようになった。
男の子からは人気があったのだが、それがかえって思春期の少女たちのやっかみを誘発したのかもしれない。
「グループなんて関係なく、みんなで仲良くすればいいのにと思っていました。もし私にもっとリーダーシップがあれば、それができたのかもしれない。でもリーダーシップはなかったから、みんなが言うようにヘラヘラしているだけに見えたんでしょうね」
いじめにはひたすらじっと耐えた。ニコニコしていれば、いつかみんなにわかってもらえると思っていた。母に相談しようと思ったこともあるが、自分の信念を疑わない母には何も言えなかった。
八方美人が災いして恋愛がうまくいかない
わかってもらえないまま中学を卒業して高校へ。「高校でも感じのいい人だよねというのが周りの反応。仲良しが数人いたので、なんとかしのいで大学へ行きました」
大学では何人かの男性にアプローチされたが、彼女が心動かされるような人には出会えなかった。「みんな仲良く、誰にも嫌われないように」することが大事だったと彼女は言う。
「自分が誰かを好きになったら、他のアプローチしてくれた人に悪いような気がしていました。今思えば、自らの意志で選ぶ、ということがあらゆることについてできなかったんでしょうね。情けない話です」
すぐに親しげに笑って距離を縮めるので、誤解されることも多かったという。
女友だちに「好きでもない人にヘラヘラしないほうがいいよ。つけ込まれる。あなたの悪いところだと思う」と言われたときには、びっくりすると同時に何かが腑に落ちた。
なかなか治らない八方美人癖
誰にも嫌われないようにすると、誰かから強烈に愛されることはない。その女友だちはそう言った。「ああ、もっと自分の気持ちや意志を前面に出していいのかと初めて気づきました。そういう視点で周りを見ると、友だちはみんな自由に物を言い、好きなように行動している。
私は自分の言動が誰かを傷つけないか、誰かに悪く思われないかとそればかり気にしていた。でも彼女の助言で、自分の本心を少しずつ見つめるようになれたんです」
嫌われたくはないが、それを恐れるあまり自分を制御しすぎたら、自分は何のために生きているのか。母の「ニコニコしていなさい」という言葉に、自分は縛られすぎていたのではないか。
「やっとそれに気づいたときには20歳になっていました。もう大人だし、これからは自分の意志で生きていこうと思った。それからは、まずはYESとNOをはっきり言うように努力しました」
社会に出ると「八方美人力」は役立った
少し生きるのが楽になったと彼女は言う。だが就職すると、また持ち前の「八方美人力」が頭をもたげていった。それでも「会社の中では、それがいいほうに働くことも多かった」そうだ。「使い分ければいいということも学んでいきました。ただ、相変わらず恋愛はうまくいかなくて……」
ここ数年は、同僚に聞いたマッチングアプリを試している。話が合って、実際に対面に至った男性も少なくない。
「会うと私、ついつい相手の話を聞いてしまうんです。しかも相づちとか、けっこう上手なんですよ(笑)。それで相手はますますノリノリになって、自分のことばかり話す。
で、結局、帰ってから疲弊している自分がいる。相手はまた会いたいと言ってくるけど、私はもういいわってなっちゃうんですよね」
心ある相手なら、「あなたの話も聞きたい」と言ってはくれる。だがなぜかサエコさんは、自分のことは最小限にして、また相手の話を促してしまうのだ。
母からの「呪いの言葉」から逃れられない
「ふたりきりだと逃げ場がないから、好きなことが言えないんです。仕事の打ち合わせなら、目的がはっきりしているから、わりとテキパキ進めることができるんですが、プライベートで男性と向き合っていると、私は美人じゃないんだから相手を優先させなければと思ってしまう。これこそが母の呪いの言葉の悪影響なんだとわかってはいるんですよ。だけど払拭することができない」
あと少しがんばれば、もっと自由になれるとサエコさん自身、コツはつかみつつある。だが、その「あと少し」がなかなか思うようにならない。
「相手を意図的に傷つけるつもりがないのなら、何でも言ったほうがいいよと友だちには言われます。わかってる、わかってはいるんですが……」
同居する母は、相変わらず「あなた、愛想が悪いから結婚できないんじゃないの?」ととんでもなくぶしつけなことを言っているそうだ。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))
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