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「PTAがないと保護者は学校や行政に要望できない」はホント? 思い込みが要望の実現を妨げる例も

オールアバウト / 2024年7月12日 20時45分

「PTAがないと保護者は学校や行政に要望できない」はホント? 思い込みが要望の実現を妨げる例も

PTAの取材をしていると、時々「PTAやP連は学校や行政に要望を行うために絶対に必要だ」という声を聞きますが、筆者はこれにはちょっと賛同しかねます。要望を行う方法はPTAを通す以外にも、いろいろあるのです。それぞれの利点や不利な点を考えます。

PTAの見直し・改革の動きが広がっています。そんな中、時々聞こえてくるのが「PTAやP連(PTAの連絡組織)は学校や行政に要望を行うために必要だ。だから絶対になくしてはならない」といった声です。耳にしたことがある人も多いのでは。

筆者はちょっとこの意見には賛同しかねます。保護者と学校のコミュニケーションも、保護者が子どもの権利を守るために要望を行うことも大事だと思うのですが、現状「要望を出すためにPTAが絶対必要」とまでは言えないと思うのです。また、要望を行うほかのさまざまな方法を見えづらくするようにも思えます。

PTAやP連で行う要望については、いろいろと考えるべき点があると感じてきました。今回はそれを、お伝えできたらと思います。

要望を出す活動をしていないことも多い

「要望のためにPTAが絶対必要」に首をひねる理由の1つ目は、現状、要望を出す活動をしていないPTAやP連も多いことです。まずPTAに関していえば、そもそも「要望」を活動内容として掲げているところはほとんどないと思います。

良し悪しは別として、PTAは保護者が要望を出す場というより、学校が求めることに保護者が協力する場のように捉えられてきました(戦後に文部省が発行した「父母と先生の会(PTA)参考規約」などの影響もあると思うのですが、ここではいったんおきます)。

PTA会長や役員さんが校長先生と話をするときに、「こうしてほしい」といった思いを伝えることはあるでしょうが、それは「PTAとしての要望」とまでは言えないのでは。それはやはり会長や役員さん=一部の保護者からの提案・意見と考えるのが妥当かなと思います。

一方、P連は時々「要望」を行っているのを見聞きするのですが、これも全てのP連がやっているわけではありません。どちらかというと多分、要望していないところのほうが多いかなと思います。

「要望をしている」という場合も、中身を聞くと「え、それが?」と思うこともあります。例えばある自治体では、毎年地元の議員たちと各校のPTA会長が学校予算について話し合い、P連で要望を出しているというのですが、予算増額を求めるのでなく、どの学校が先にもらうか順番を決めているだけでした。それは要望ではないでしょう。

要望が通らなくても毎年同じ方法で続けている

2つ目の理由は、せっかくP連で毎年要望を行っていても「ほとんど実現していない」という話も意外と聞くからです。例えば、あるPTAが通学路の危険箇所の改善要望を毎年行政に出していたのになかなか実現せず、悲しい事故が繰り返されてしまった、ということもありました。

特別支援学校のP連についても、似た話を聞くことがあります。最近お会いしたあるPTA役員さんは、こんなふうに話していました。

「うちのP連では毎年保護者にアンケートをとって要望をとりまとめて、行政にあげています。でも、どれも毎年出している要望ばかりなんです。総会で私が『去年出した要望のうちどれが実現しましたか?』と質問したときは、会場が静まり返ってしまいました。

行政は『偉い人が話を聞いてあげたんだから、それでいいでしょ』と思っているし、保護者も保護者で、要望書を渡して担当者と並んで写真を撮って『よし、意見言ったぜ』みたいになっている。要は形だけなんですよね」

耳が痛いかもしれませんが、こういうケースも実は多いのでは。「例年通り、今年も要望を出しました/受け取りました」で、みんな満足してしまうのです。

「だからよく『PTAやP連がないと自分たちの意見を吸い上げてもらえない』というのは、申し訳ないけれど、思い込みでしょう。アンケートを準備したり回答を集計したりするのにも、相当手間と時間がかかるので、結果が出ないんだったら、要望はやめたほうがいいよって思います」(前述のPTA役員の女性)

そうだよね、と筆者も思います。要望を出して「それがどの程度実現したのか」を考えず、毎年同じ要望を、同じやり方で出し続けても、意味がありません。

なお、このP連で出した要望を見せてもらったところ、アンケートで集まった多様な意見や望みをそのまま伝えるものでした。これは受け取ったほうもアクションしづらいかもしれず? 公平に絞り込むのも難しい(手間がかかる)ので、そこはやむを得ないかな、とも思うのですが……。

要望の話に限りませんが、PTAやP連はただ前年通りの活動を繰り返すのでなく、活動の目的や、手間暇と効果のバランスを考えて、継続するかどうか、やり方をどうするか、毎年考えたほうがいいと感じます。

PTAを通す方法・通さない方法、それぞれの利点と弱点

こういった現状を考えると「保護者の要望を伝えるためにPTAやP連が絶対に必要」とまでは言えないと筆者は思うのですが、でももちろん効果が出ている場合や、見込める場合はよいのです。これからも続けたらよいのではないでしょうか。

ただ、必ずしもPTAやP連を通さなくても、保護者が要望を伝え、実現するための方法はほかにもあります。うまくいかないときは、いろいろ試したほうがよいのでは。

まず、個人での要望も可能です。「個人では聞いてもらえないよ」という人もいますが、複数の保護者から同じような声が届けば、学校や教育委員会が動くことは、意外とある印象です。

ただし、個人で行う要望は「なかったこと」にされてしまうリスクもあります。クローズドなやりとりになるので、学校から「そんな要望を言っているのはあなただけ、対応しません」と言われてしまえば、それで終わりです。その点、保護者がある程度まとまって要望すれば、学校側も簡単に無視はできず、少なくとも「なかったこと」にはされづらくなるでしょう(要望が通るかどうかはまた別の話ですが)。

無視されづらい、という意味では、ある種権威を与えられているPTA・P連を通して要望をすることは、やはり有効でしょう。ただし、ある要望をPTAとして出してもらえるかどうかは内容にもよりますし、そこは会長さんや役員さんの判断になります。「PTAとしてこういう要望を学校に伝えてほしい」と頼んだけれど断られた、という話も割とよく聞きます。そういったときは保護者の「有志」で要望することもできます。

ほかにもある、要望を実現するためのルート

あとは、このところよく見かけますが、署名サイト「Change.org」を使って教育委員会などに要望を行う方法もあります。これなら必ずしも団体をつくらなくてもいいですし、主張や賛同者が可視化されるので「なかったこと」にされるリスクも避けられます。最近はP連が「Change.org」を使って要望をするケースを見かけることもあります。ワンイシューで要望するなら、かなり有効な方法では。

さらに、議員さんに相談するというのも1案です。PTAやP連では通らなかった要望があっさり実現した、という話は実際、時々聞こえてきます。それはそれでどうかと思いますが(そんなことでいいのか)、いざとなればそんな手もあるわけです。

もっというと、テレビや新聞などマスコミを使う方法も考えられます。例えば、名古屋市では2024年度、学校に割り当てる予算が2023年度より4億円も増えました。これは地元のテレビ局である東海テレビが、市内の小中学校のPTAによる学校への寄付を徹底的に調べ上げ、市長に見解を求めたことなどにより実現しました。ほかの自治体でも、学校予算の増額を求める際、まねできる点があるのでは。

あれこれ書いてきましたが、つまり要望を実現するためのルートはいろいろあるわけです。「PTAでなければダメだ」と思い込んでいると、かえって実現が遠のいてしまうこともあるでしょう。もっと柔軟に試してみたほうがいいように思います。

最後に念のため、要望が通るかどうかはその内容にもよる、ということは言うまでもありません。どの方法で要望するにせよ、客観的に見て賛同を得られる要望かどうか、事前にほかの人たちにも意見を聞いてみるというのも大事なことかなと思います。

この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)

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