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“きしめん”人気復調の立役者! どんどんファンを増やす名古屋めし「幅広きしめん」って何だ?

オールアバウト / 2024年7月18日 21時15分

“きしめん”人気復調の立役者! どんどんファンを増やす名古屋めし「幅広きしめん」って何だ?

名古屋名物・きしめん。一時は需要が落ち込んでいたが、近年人気が復調。きっかけのひとつが「幅広きしめん」だ。もともと幅が広いきしめんをさらに幅広くしたもので、見た目のインパクトと独特の味わいで注目を集めている。これを食べられる店を中心に紹介する。

「きしめん」は名古屋めしの中でもとりわけ歴史のある一品。江戸時代後期の文献には「江戸でヒモカワという平打ちうどんを尾張名古屋ではきしめんという」と記述されており、明治後期にはかの泉鏡花がきしめんを名古屋名物として「他に類がなかろう」と賞賛しています。
きしめんは名古屋市内でも専門店はほとんどなく、うどん屋の麺の選択肢のひとつという位置づけ。薄く延ばす作業など工程が多く手間がかかるため、あまり積極的に扱わない店も多かった
名古屋めしという言葉が広まる以前から、名古屋を代表するご当地グルメだったきしめんですが、名古屋めしブームが巻き起こった2000年代以降は皮肉にも存在感が薄れがちでした。

他の名古屋めしと比べて見た目のインパクトに欠け、うどん店のメニューの中では味噌煮込みうどんという強力な一品があるため選択肢としての優先順位が下がってしまうのです。「きしめん離れ」なんて言葉が地元メディアでしばしば使われるようにもなってしまっていました。

幅広きしめんのインパクトで再び光が

しかし、近年はそんな低迷期を脱し、人気復調の兆しが。危機感を抱いた業界団体がPRに積極的に取り組んだことも需要アップにつながりましたが、個々の飲食店から生まれた“新しいトレンド”もきしめんに再び光を当てるきっかけとなりました。

それが「幅広きしめん」です。

きしめんはもともと幅が広いのが一番の特徴。「美味でおいしい」みたいな二重表現? なんて思われるかもしれません。しかし、一般的なきしめんよりもさらに幅が広い麺を打つ店が10年ほど前から少しずつ増えてきたのです。

きしめんは「幅4.5mm以上」が規準のひとつですが、これは食品表示基準(消費者庁)が乾麺を対象に定めたもの。生麺や飲食店で出されるきしめんに幅の規定はありません。それでもおおむね幅1cm程度が目安なのですが、その2倍以上の幅2~4cmもある麺が「幅広きしめん」と呼ばれています。

なかでもとりわけ幅広なのが「芳乃家」(名古屋市昭和区)のきしめん。その麺の幅たるや実に5cmはあるでしょうか。厚みもあって、箸で持ち上げるとまるで一反もめんのような迫力です。
「芳乃家」のきしめん650円(税込)。昔ながらの小さな麺類食堂は長く地域に愛されている。地下鉄桜山駅より徒歩3分
食感はもっちもちで、つるつるすするというより、むしゃむしゃという噛み応えと合わせて楽しむ感覚。麺の表面積が大きい分、つゆの乗りもよくなるため、つゆにもこだわりが。老舗醸造元のたまり醤油を使い、この地域特有の“ムロアジの力強いダシ”で、麺にも負けない存在感を発揮しています。

ミシュラン掲載店にカフェ風新鋭店も

Higashiyama Nikotenのきしめん。天ぷらトッピング付きで1500円(税込)。1960年創業の老舗で、2021年に熱田区から千種区に移転した。地下鉄東山公園駅より徒歩1分
『ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版』(日本ミシュランタイヤ)でミシュランプレートにも選ばれた名店「Higashiyama Nikoten」(名古屋市千種区、ミシュラン掲載時の店名は「千年(ちとせ)ニコ天」)の麺は約2.5cmの幅がありながら、透き通るほど薄いのが特徴的。

愛知のうどんやきしめんに合うように開発された県産小麦・きぬあかりの長所を生かし、薄いのにもちもち感やピンと張ったコシを感じられます。
星が丘製麺所は名古屋市千種区の星が丘テラス THE KITCHEN内と、東区の久屋大通店の2店舗がある。すだちをトッピングしたきしめん太門は790円(税込)
続いて紹介するのは、幅広きしめんのムーブメントを広く知らしめた「星が丘製麺所」(名古屋市千種区、東区)です。2021年にオープンした同店はきしめん店らしからぬカフェのようなおしゃれな空間、そしてインパクトのある幅広きしめんで一躍大ヒット店に。

これまできしめんに見向きもしなかった若者層を獲得したことで、きしめん新時代の到来を可視化させました。

冷たいきしめんの「きしころスタンプラリー」もファンを拡大

「きしころスタンプラリー」は毎年7~8月の2カ月にわたり開催。2024年の第10回は名古屋市内を中心に41店舗が参加。5店舗のスタンプを集めるごとに400円分の食事券がゲットできる
幅広きしめんと共にきしめんの人気回復をけん引してきたのが「きしころスタンプラリー」です(※)。きしころとは冷たいきしめんのこと。

きしめんというと駅ホームの立ち食いのように花かつおが湯気でゆらゆら揺れる熱々のものを思い浮かべる人も多いでしょうが、冷やすと麺がしまって舌の上を滑る独特の食感をよりダイレクトに楽しめます。

「きしころスタンプラリー」は、その魅力を広く知らせようと2015年にスタートし、毎年30~40店舗が参加。2024年で10年目を迎え、夏の風物詩的なイベントになっています。熱心に食べ歩くファンは増加の一途で、きしころをきっかけにきしめんの魅力を再発見する人が増えているのです。

もちろんスタンプラリー参加店の中にも、先の「芳乃家」「星が丘製麺所」をはじめ幅広きしめんを出す店は何軒もあり、幅広きしめんときしころ、きしめん人気を高めてきたふたつのトレンドを合わせて楽しむこともできます。

文字通り“幅広く”魅力が広がっているきしめん。麺の幅に着目して食べ歩けば、きしめんの新たなおいしさに出会えるはずです!

<参考>
※第10回 きしころ スタンプラリー(2024年7月1日~8月31日開催)

大竹 敏之プロフィール

愛知県常滑市出身。大学卒業後、名古屋の出版社に勤務し、その後フリーライターとして独立。雑誌や新聞、Webメディアなどに名古屋の情報を発信する。著書は『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)『名古屋の喫茶店 完全版』(リベラル社)など多数。
(文:大竹 敏之(名古屋ガイド))

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