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『魔女の宅急便』のマックのCMにそっくり? 映画『化け猫あんずちゃん』のかわいいだけじゃない魅力

オールアバウト / 2024年7月19日 20時45分

『魔女の宅急便』のマックのCMにそっくり? 映画『化け猫あんずちゃん』のかわいいだけじゃない魅力

7月19日から上映中の、日本とフランスの合作によるアニメ映画『化け猫あんずちゃん』。「ロトスコープ」による独特の魅力と、『魔女の宅急便』との意外な共通点も記しましょう。(※サムネイル画像出典:(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会)

いましろたかしによる同名漫画を原作とした、日本とフランスの合作によるアニメ映画『化け猫あんずちゃん』が2024年7月19日より劇場公開中です。

結論から申し上げれば、本作はとっても楽しくて面白い! クスクスと笑えて、見た後はちょっと元気になれる作品として、万人におすすめできます。

さらなる具体的な特徴と魅力は後述するとして、あの『魔女の宅急便』との意外な共通点を先に紹介しておきましょう。

『魔女の宅急便』のマクドナルドのCMと似ている理由

『化け猫あんずちゃん』の監督の1人である久野遥子は、6月に公開されたマクドナルドのCM「魔女のお届けもの ヨーロッパバーガーズ」でアニメーションディレクターおよびキャラクターデザインを手掛けています。

このCMの原作は角野栄子による小説の『魔女の宅急便』。多くのファンを持つスタジオジブリによるアニメ映画版とはまったく異なるキャラクターデザインであったものの、「めちゃくちゃかわいい!」「CMだけで終わらせるのはもったいない!」など多数の絶賛が寄せられました。

久野遥子のX(旧Twitter)では、黒猫のジジのしっぽの赤いリボンは原作者の角野栄子のアイデアであることも明かされています。

そして、今回の『化け猫あんずちゃん』では久野遥子は共同監督だけでなくキャラクターデザインも担当しているため、主人公の1人である女の子「かりん」が、このCMでのキキにそっくり!

そのため、同CMのかわいらしさを、長い映像でもっと見たいという人にも、この『化け猫あんずちゃん』はおすすめできるのです。

さらに、

・女の子と不思議な猫という組み合わせ
・女の子が初めて訪れた場所で「仕事」や「出会い」を経て成長する
・ファンタジー要素がありながらも、基本的には現実的な世界での出来事が展開する
・日常的な描写を主軸としながらも、終盤にはあっと驚くアクションも!

というのも、『化け猫あんずちゃん』と『魔女の宅急便』との共通点だったりもします。

実写をアニメにしていく「ロトスコープ」の利点と魅力

今回の『化け猫あんずちゃん』の最大の特徴といえるのが、「ロトスコープ」のアニメだということ。ロトスコープとは、「実写の人物や風景を撮影して、それをもとにアニメに描きおこす」という手法で、古くは1937年のディズニー映画『白雪姫』、近年では2020年の日本映画『音楽』もロトスコープのアニメでした。

ロトスコープの利点の1つは「実写の動きを“なぞる”ためにリアルな動きにできる」こと。厳密にはロトスコープではありませんが、2022年放送のテレビアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)や2023年公開の映画『BLUE GIANT』では、生身の人間の演奏の動きを「モーションキャプチャー」する手順を経ており、だからこそのリアルなライブシーンをアニメで表現することができていました。

そして、この『化け猫あんずちゃん』で感じたロトスコープの魅力はそれとは少し異なります。それは実写の俳優による演技が、かわいらしくて親しみやすいアニメに落とし込まれたということ。その魅力は、公開されている「実写とアニメの比較映像」からでも分かるでしょう。

化け猫の「あんずちゃん」を演じる森山未來が猫耳をつけていて、絵で描かれたキャラクターがまったく同じ動きをする様はそれだけでニヤニヤしてしまいます。それ以上に、実写では見た目から「やさぐれた」印象を持ってしまう森山未來が、アニメになると「とぼけた」かわいらしさのほうが強調されるという、味わい深い「変化」をもたらしているのです。

「最初からアニメで描けばいいのでは」と思う人もいるかもしれませんが、現実の風景を基にしているからこそ作品内世界に反映される「実在感」や、実写ならではの「間」もある俳優の演技が心地良く、それはカット数の多い(それはそれで真っ当な)通常のテレビアニメの演出とは異なる面白さであり、魅力なのだとも気付かされたのです。

そういう意味で、この『化け猫あんずちゃん』はロトスコープの可能性を広げた記念碑的な1作ともいえるでしょう。

余談ですが、2013年のテレビアニメ『惡の華』(TOKYO MXほか)もロトスコープで作られており、「原作漫画とは異なる絵柄」などに批判の声があった一方、だからこその「いい意味での生々しさ」「居心地の悪さ」「田舎特有の閉塞感」を表現しているといった好意的な意見もありました。

そのことからも、ロトスコープの目指す表現は1つではないことが分かるでしょう。

ダメ中年な主人公「あんずちゃん」が憎めない

今回の『化け猫あんずちゃん』のさらなる魅力は、「ダメな中年男性が孤独な女の子のための行動を起こす」物語が紡がれていることでしょう。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会何しろ主人公の化け猫のあんずちゃんは37歳で、たまにアルバイトをするものの基本的には無職で、平気でオナラをし、バイクの無免許運転で捕まって、さらには預かっていたバイト代をパチンコで使い込んでしまう始末。いい意味で「見た目はかわいいけど、こいつダメだ!」と思わせてくれます。

そんなあんずちゃんですが、地元の小学生からは慕われていたりもしますし、友達や女の子に取り憑こうとする「貧乏神」をなんとか立ち去らせようと画策したりと、一定の倫理観やまともな感覚を持っていることも分かります。「いや本当にダメだけど、こいつ憎めないなあ」とも思えてくるでしょう。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会そんなあんずちゃんを「実写」で撮ったのが、この2024年に『カラオケ行こ!』が大評判となったことも記憶に新しい山下敦弘監督というのが最高の人選です。何しろ、山下監督は2013年の『もらとりあむタマ子』や2016年の『ぼくのおじさん』など、とにかく「ダメ人間」を描く名手。さらには2007年の『天然コケッコー』では「田舎の子どもたち」も魅力的に描いていたりもするのですから。

また、山下監督はいましろたかしの漫画の魅力について「どの作品も独特の正義感がある」ことを挙げており、それは山下監督が手掛けた、いましろたかし原作(作画)の映画『ハード・コア』でも、今回の『化け猫あんずちゃん』でも、もっと言えば山下監督の過去作にも通じているとも思えました。

口も素行も悪い女の子「かりん」も魅力的

もう1人の主人公であり、実は原作漫画には登場しない、映画オリジナルキャラクターである11歳の孤独な少女「かりん」もまた魅力的です。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会実は、かりんはそのかわいらしい見た目に反して、言動はかなり「辛辣(しんらつ)」。田舎の小学生男子を自身のかれんさを生かして「手玉に取った」かと思いきや、せっかくの彼らのおもてなしに対して「つまんねーぞ!」と言ったり、はたまた気に入らないことがあると「蹴り」を入れたり「舌打ち」までもする、2024年のアニメ映画『トラペジウム』の主人公と同じムーブをすることに笑ってしまいました。

「子どもにも見てもらうことも想定したはずのアニメ映画で、ここまで口も素行も悪い女の子が主人公で大丈夫?」と少し心配になってしまうほどでしたが、彼女は借金まみれで頼りない父を持ち、田舎にほぼ“置き去り”にされた立場であり、そのような態度、性格になってしまうことも理解できますし、後述する物語終盤の「優しさ」もあって、全体的には教育的にも真っ当な内容にもなっていました。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会ダメ親父に捨てられた(と思っている)上に、さらにダメ中年のあんずちゃんにイライラを募らせていたかりんには、ちょっとずつの「変化」も訪れる。その過程で彼女の「本質的にはやっぱり良い子」な部分もしっかり見えてきたりしますし、「塾に通っていた男の子」との会話には胸が締め付けられるような切なさもありました。

そんなかりんの悲しさや苦しさを、ダメ中年だけどほんわかとしていて一定の正義感もあるあんずちゃんが、「受け止める」様も大きな魅力です。個人的には終盤のかりんからのひどい罵倒に対しての、あんずちゃんの「化け猫だから」こその納得感しかない、とある返答に大笑いしてしまいました。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会また、ロトスコープのアニメのほうの監督を手掛けた久野遥子は、2015年の映画『花とアリス殺人事件』でもアニメーションディレクターを手掛けており、そちらでもいじめっ子をボコボコにしたりする気の強い女の子が主人公だったりもしました。アニメそのものの表現だけでなく、もはや傍若無人とすらいえる女の子を描くにあたっても、こちらも相性が抜群の作家だったのではないでしょうか。

ちなみに、そのかりんについて、山下監督は1993年の映画『お引越し』で田畑智子が演じた11歳の少女をイメージし、久野監督も1990年の映画『つぐみ』の主人公・つぐみ(牧瀬里穂)の性格なども重ね合わせていたとのこと。制作初期のイメージボードでも、そういった要素を踏まえて不良性のあるおかっぱ姿なかりんが描かれていたりもしたのだそうです。

アクションもすごい活劇も展開して大満足!

『化け猫あんずちゃん』はほのぼのとした日常描写や、ダメ中年と孤独な少女が出会ってこその「ほんのちょっぴりの成長物語」が大きな魅力というわけですが、さらに終盤の「アクションの大見せ場」も大きな魅力です。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会本作でキャラクターの動きを描いたのは、『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』で知られるほか、直近では2023年のアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』も絶賛された日本のスタジオ・シンエイ動画(背景美術と色彩を担ったのはフランスのMiyu Productions)。終盤のアクションの迫力はそのものずばり、『劇場版クレヨンしんちゃん』の躍動感を連想させました。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会そして、その活劇があってこそ、「死んだ母親に会いたい」と願うかりんの年相応の寂しさや健気さも、より強く伝わるようになっています。大切な人を亡くしてしまった「喪失感」に向き合う物語にはとてつもない優しさを感じましたし、それをもってのかりんの「選択」にも大きな感動があったのです。

『化け猫あんずちゃん』は、全体的にはいい意味で「ゆるい」雰囲気があり、それこそが心地良い作品です。同時に、何気ないセリフや行動が伏線として回収されたりする、実は計算し尽くされた物語になっていることも称賛するしかありません。94分と上映時間は短めながら、その全ての瞬間がいとおしいとさえ思えました。(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会最後に余談ですが、本作はやはりロトスコープによる「もともとは実写だけど、かわいらしくて親しみやすいアニメに落とし込まれた俳優たちの演技」が大きな魅力。あんずちゃん役の森山未來、かりん役の五藤希愛が素晴らしい表現力を見せていることはもちろん、他の豪華俳優陣の実写からアニメへの「変わりっぷり(または印象そのまま)」もまた楽しいのです。

そのキャスティングをあらかじめ知って見てももちろんいいですが、知らないまま見て鑑賞後に「あのキャラってあの人だったんだ!」と驚いてみるのも、いいかもしれませんよ。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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