1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

パスポート保有率17%の日本人に「海外旅行」は高嶺の花なのか? 空港関係者らに聞いてみた

オールアバウト / 2024年7月19日 21時0分

パスポート保有率17%の日本人に「海外旅行」は高嶺の花なのか? 空港関係者らに聞いてみた

円安の今、日本人にとってハードルが高い印象がある「海外旅行」だが、実情は? 夏休みシーズンを目前に、旅行ジャーナリストが航空会社や空港関係者に動向を聞く。

日本人の海外旅行が今、気軽にできない状況になりつつある。その要因として、円安や現地の物価高、また日常生活に余裕がないなどの事情が挙げられる一方、海外旅行イベントは盛況であるなど関心の高さは健在だ。

今回、航空会社や空港関係者らに「もはや海外旅行は手の届かないものなのか」どうかなどを聞いてみた。

2024年夏、人気は「近場」で欧州も回復傾向

韓国・ソウルの繁華街、明洞(ミョンドン)は日本人旅行客に人気(筆者撮影)
国内旅行会社最大手JTBによる「2024年夏休みの旅行動向」によると、海外旅行者数の推計は175万人。前年(2023年)をわずかに上回ったものの、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と比較すると57.8%にとどまった。また、平均旅行費用(単価)は、円安や物価高に加え、旅行が長期化、長距離化する傾向が前年より上昇した。

行き先としては、韓国や台湾などアジアを中心とした近隣への短期旅行が引き続き人気で、欧州など遠方へ長期で旅行する意向もやや回復。さらに、「円安の影響が少ない地域」を選ぶ傾向もあるという。

いずれも前年と比べると、コロナ禍の入国規制があった頃より、「海外旅行に対する抵抗感がなくなった」のが垣間見られる。

「旅行費用が安くて済む近場」が人気なのは健在でありつつ、旅行先として人気が高いヨーロッパのような遠方へも足を運ぶ人が増えたと見られる。

理想は「もっと遠方」だが……現実は厳しい

JTBによる旅行動向、行先別、今後の海外旅行の実施意向(出典:JTBニュースリリース)
今後の海外旅行の実施意向での人気行き先は、上から「ハワイ」「ヨーロッパ」「オーストラリア・ニュージーランド」「台湾」「韓国」「米国本土」「グアム・サイパン」「東南アジア」「香港・マカオ」「中国本土」の順。近場のアジアより、遠方のハワイやヨーロッパ、オーストラリア・ニュージーランドが上位に来ていた。

実際、「海外旅行、もっと遠方へ行きたい」というのが大半の人々の本音だろう。昨今の円安や現地の物価高などの影響で、「近場で我慢」という人が多いと考えられる。

筆者は昨年2度、欧州へ行った。特に、ドイツやフランスなどの国々では現地の物価がコロナ前より上昇し、ランチで3000~4000円、ホテルも3つ星クラスで1泊2~3万円した。滞在期間が長くなるほど旅費がかさみ、対ユーロでの日本円が弱い日本人旅行者への厳しさを実感させられた。

また韓国や台湾を訪れた際も、以前より物価が上がり、ホテル代も倍近くなり、飛行機の運賃も高止まり状態で、旅費合計でコロナ前の2倍はかかった印象だ。

しかし近距離かつ滞在期間が短いため、ヨーロッパなどと比べると旅費としての出費は少なくて済む。国内旅行では満足できず、「どうしても海外」にこだわる人々とって、韓国や台湾など身近な国・地域が人気というのがこういった事情であるのは間違いない。

海外旅行イベント盛況、空港や航空会社は……

「旅博2024 in 関西」の会場風景(筆者撮影)
2024年6月29日、大阪市北区のグランフロント大阪で、海外旅行イベント「旅博2024 in 関西」が開催された。主催は関西空港、伊丹空港、神戸空港を運営する関西エアポートで、航空会社、観光局、空港、旅行会社など75団体が出展した。

関西エアポートによると、来場者2500名を予想したところ、3833名(速報値)が来場した。入場料は事前申込400円・当日申込500円で、朝10時の開場前から多くの人々が並んだ。年齢層や性別もさまざまで、旅行セミナーなどは軒並み満席、出展ブースはどこも長蛇の列となっていた。

コロナ後に急増するインバウンドに対し、アウトバウンドは苦戦が続く。関西空港における国際線の旅客数は、2024年5月(速報値)で、日本人が全体の約14%と、外国人が圧倒的に多い。

関西エアポートの担当者は、イベントの盛況ぶりを目の当たりにし、「為替の問題もあり、日本人のアウトバウンドはまだまだ低調な状況ではありますが、皆さまの旅行に対するマインドが非常に高いことが再確認できました」と語る。

出展した航空会社や観光局などからも「来場者の熱意に驚いた」「現地に関する突っ込んだ質問や、『早く行きたい』という声もとても多かった」などの感想とともに、LCC(格安航空会社)のブースでは「旅費の節約に『燃油サーチャージがない航空会社ですよね?』といった、コロナ前よりよく調べている印象を受けた」といった声も聞かれた。

「欧米やハワイは高値」の今、航空会社が推すエリア

LCC「タイベトジェット」の案内チラシ(筆者撮影)
さらに、アジア系航空会社の担当者から「この円安では、行き先次第」という話も。

「欧米やハワイなど今は高値で、現地で楽しみづらい状況。ベトナム、タイ、フィリピンなど、この機会にまだまだ物価が安い国・地域へ行くのがおすすめです」と言い、「首都などでなく、地方都市を狙うのも手。例えばタイだと、バンコクでなくチェンマイとか。地方は物価やホテルも安い傾向にあります」とのことだった。

日本人のパスポート保有率は「17%」だが……

日本人のパスポート保有率は17.0%にとどまるが……
外務省が毎年発表する「旅券統計」によると、2023年末時点で、日本国内在住日本人の有効旅券数は2064万5745冊。つまり、パスポート保有者の割合は全国民の「17.0%」で、コロナ前の78%にとどまる。パスポートの有効期限は、5年または10年で、その更新には費用が必要だ。コロナ後に海外旅行の旅費が上昇傾向の中、「海外へまた行きやすくなった時に、パスポートを更新すればいい」と考える人も少なからずいる。

日本は、地域ごとに見どころやグルメなどが豊富で、海外旅行せずとも国内旅行だけで十分に旅が楽しめるのも事実。しかし、海外へ出てこそ得られることは非常に多く、特にそれぞれの経験は貴重なものとなる。

欧米やハワイといった、日本人にとってこれまで人気だった海外旅行先は、現時点で、特に旅費の面で厳しい。だが、世界は広く、定番以外にも数多の国や地域があり、それぞれに現地でしか得られない経験は多々ある。

飛行機はLCC、宿泊先はAirbnb、移動はUberやGrab(東南アジアを中心に展開する配車アプリ)など、安価な手段も普及している。行き先や過ごし方、楽しみ方などを以前と変えてみると、海外旅行はまだまだ楽しめる要素は十分にある。

<参考>
「2024年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向」(JTB)
「関西国際空港・大阪国際空港・神戸空港 2024年5月利用状況」(関西エアポート)
「旅券統計」(外務省)

この記事の筆者:シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに取材、執筆、撮影。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も行う。
(文:シカマ アキ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください