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性加害疑惑・伊藤純也選手のプーマ広告が復活 「告発女性を逆に訴える」という対応はアリだったのか?

オールアバウト / 2024年7月22日 21時50分

性加害疑惑・伊藤純也選手のプーマ広告が復活 「告発女性を逆に訴える」という対応はアリだったのか?

伊東純也選手が世界的スポーツブランド「プーマ」の広告に復帰した。週刊誌で性加害疑惑が報じられてから、わずか半年での登用となる。「告発女性を逆に告訴する」という対応がどう影響したのか、危機管理アドバイザーが解説する。

鹿島アントラーズからドイツ・マインツへの移籍が決まっていたサッカー日本代表の佐野海舟選手が、友人2人と都内のホテルで30代女性に性的暴行をおこなったとして、不同意性交容疑で逮捕された。本人が認めているため、4年から6年の実刑になるのではないかと報じられている。

そんな風に「性加害」で重い代償を支払うことになったサッカー選手がいる一方で、「性加害」が報じられても着々と「復活」に向けて動き出しているサッカー選手もいる。

フランス1部リーグ、スタッド・ランス所属の伊東純也選手だ。

性加害疑惑報道からわずか半年で広告に復帰

伊東選手は世界的スポーツブランド「プーマ」と契約をしており、2024年の1月1日には三苫薫選手、堂安律選手などとともに新しいキャンペーンに登場していた。

それが『週刊新潮』(新潮社)に性加害疑惑が報じられたことで、プーマ側は公式Webサイトからインタビュー記事を取り下げるなどの対応をしていた。著名人やアスリートを広告などに起用する企業が、ブランドイメージを守るための「初動」として、このような対応をとることは一般的だ。

しかし先日、伊東選手がプーマに「広告復帰」を果たした。愛用しているスニーカーの新コレクションが発売されるということで、公式WebサイトやInstagramに登場して、以下のようなリリースも流された。

「伊東純也選手や海外選手着用の『KING(キング) ULTIMATE(アルティメット)』が登場!『FORMULA(フォーミュラ) PACK(パック)』を2024年7月18日(木)より発売」

お笑い芸人の松本人志さんは、週刊誌で「性加害疑惑」が報じられただけで社会の批判を恐れるCM出稿企業が離れ、芸能活動の休業を余儀なくされているが、伊東選手はなぜこうも早く「イメージ回復」に成功したのか。

伊東選手といえば、準強制性交傷害などで刑事告訴した女性2人を「虚偽申告罪」で刑事告訴。さらにスポンサー契約を打ち切られたなどとして、この女性2人に対して2億円を超える損害賠償を求める民事訴訟を提起するなど「全面対決姿勢」を取ったことが大きな話題となったが、それが正しかったということなのか。

伊東選手が「イメージ回復」を果たせたわけ

結論から先に言ってしまうと、正しかった。しかし、伊東選手のような境遇になった人が全てこういう対応をすればいいというわけではない。伊東選手が海外クラブに属していたということが大きかった。

日本サッカー協会(以下、JFA)が伊東選手を代表に呼ばなかった理由を「さまざまなステークホルダーの影響も考慮した」と述べていることからも分かるように、日本では週刊誌に「疑惑」が報じられただけで「みなし犯罪者」という扱いだ。これはJFAがそのように厳しい考えというわけではなく、「被害者がいる人間を擁護するのか」「事実が確定するまで起用すべきではない」というクレームが、スポンサー企業など関係各位に寄せられてしまうことが大きい。つまり、「同調圧力」に弱いのだ。

しかし、伊東選手が活動を拠点としているフランスは全く異なる。社会全体に「推定無罪の原則」が浸透しているので、被害者が何を訴えたところで「容疑」の段階で仕事が奪われるようなことはないのだ。

事実、所属するスタッド・ランスは、JFAが伊東選手の代表離脱を発表する2時間ほど前にリリースを発表。伊東選手の人間性や振る舞いに対し、これまで1度も疑問を感じたことがないとして「連帯」を示しながら、法的な進展を見守っていくという説明をした。

そして実際にそれを裏付けるように、伊東選手をスタメンで起用し続けた。7月にはクラブ初の日本ツアーがスタート、ジュビロ磐田、清水エスパルス、FC町田ゼルビア、ヴィッセル神戸などと対戦するので、伊東選手も日本のサッカーファンの前でプレーすることになる。もし伊東選手が国内クラブに所属していた場合、やはりスポンサーへの配慮などから起用することは難しかっただろう。

「後ろめたいことは何もない」が通じた理由

このように「推定無罪の原則」に基づいてクラブも伊東選手を起用し続けたという事実があるからこそ、「全面対決姿勢」がプラスに働いて、「後ろめたいことは何もない」というアピールになった。

実際、伊東選手側は刑事・民事で戦いながら、沈黙することなく『週刊新潮』の報道が虚偽であるということをさまざまなメディアで積極的に反論し、このようにアクションを取った動機も説明している。

スポーツ選手に対して大きな大会前に女性との会合を設定した後で、「性被害」を訴えて表沙汰にしてほしくなければ金銭を払えと迫ってくる、いわゆる「美人局」のような金銭トラブルが多発しており、その問題提起の意味合いもあるというのだ。こういう「大義」もあることで、伊東選手側の主張に納得・支持する人たちも増えている。

そこに加えてダメ押しとなったのが、「不起訴」が見えたことだ。7月2日、伊東選手は準強制性交致傷などの容疑で大阪地検に書類送検され、同日、女性2人も虚偽告訴の容疑で書類送検されたが、報道によれすでに大阪府警本部はともに起訴をしないようにということを申し送りしているという。

つまり、刑事事件にはならず、あとは民事訴訟なので、第三者がとやかくいう話ではない。そこでプーマが「広告復活」を決断したというわけだ。

伊東選手の対応は日本企業の参考にはならない

このように伊東選手の危機管理対応は、本人が「推定無罪の原則」が浸透するフランスで活動していたということが大きい。堂々と自分の仕事を続けながら「全面対決」というスタンスを取ることに説得力があり、社会の共感を得たレアケースといってもいい。

日本の企業や有名人がこれを参考にできるのかというと難しい。

日本社会では嫌疑をかけられた時点で仕事を奪われ、裁判を起こしても弁護士から「裁判で不利になるのでしゃべるな」と反論できない。だから、週刊誌で疑惑を報じられた人は、その後に名誉毀損(きそん)裁判などで勝っても、ほとんど名誉は回復をしない。「市民裁判」でムードによって人を裁く傾向が強いのだ。

このような日本の「推定有罪の原則」を考慮に入れて、危機管理担当者は世論を味方につけるような対応をしていただきたい。

この記事の筆者:窪田 順生
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。(文:窪田 順生)

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