日本のにんにくは中国産が9割。「国産にんにく」と「中国産にんにく」の違いとは? 3つの産地で比較
オールアバウト / 2024年7月26日 21時5分
和洋中問わず、さまざまな料理に活躍するにんにく。スーパーでは国産だけでなく中国産など海外から輸入されたにんにくも並んでいますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。今回は国産、中国産、イタリア産にんにくの3種類をさまざまな視点から徹底比較してみました。
中国はにんにくの一大産地。値段が安く買いやすいのも特徴の1つですが、国産や、他の産地と比べてどう違うのでしょうか。今回は中国産・国産・イタリア産のにんにく3種類を「にんにく水」で比較してみました。
にんにくは国産と海外産が半々。輸入にんにくは中国産が9割以上
スタミナアップ食材の代表格・にんにく。日本での全体供給量は2022年で約4万4500トンにもおよびます。そのうちの約半数が国産にんにく、残り半分が海外からの輸入にんにくという割合です。日本国内で最もにんにく生産が盛んなのが青森県。次いで北海道、香川県と続きます。全国1位の青森県は毎年1万トン以上を出荷するなど他エリアよりも圧倒的な生産量の高さで、国内出荷量の約7割を占めています。
海外産のにんにくで、日本への輸入量が最も多いのは中国。広大な敷地で大量生産でき、価格を安く販売できる中国は世界トップクラスのにんにく生産地で、日本でも輸入全体の9割以上を占めます。中国に次ぐ輸入量2位にはスペイン産にんにくが続きますが、実は、世界全体の生産量から見るとスペイン産にんにくは1%以下。一方で、日本への輸出量は5.5%です。
日本国内に流通する輸入にんにくはほぼ中国かスペイン産なのですが、近年ではわずかながらイタリア産やアメリカ産にんにくも見かけるようになってきています。
にんにくは寒冷地・温暖地で品種系統が違う
にんにくは寒い地域と暖かい地域で、生育に適した品種の系統が異なります。大きく分けると、北海道や東北といった寒冷地では、1つのにんにくに6個のりん片が含まれる「六片種」が主流。中には雪の中でも育てられるような寒さに強い品種もあるそう。ひとつずつのりん片が大きく、形がそろっていて使いやすいことに加え、表皮は白く、甘みが強いのが特徴です。代表的な品種として、「福地ホワイト六片」「ニューホワイト六片」などがあります。一方、九州や四国などの温暖な地域では、1つのにんにくに複数のりん片が含まれる「多片種」が主流。中国から伝わったとされる「上海早生(しゃんはいわせ)」や、1個に12片が入った「壱州早生(いっしゅうわせ)」などが代表的な品種です。
“早生”という名前の通り、大きさはやや小ぶりで、ひとつずつのりん片も小粒。寒冷地のにんにくよりも表面の皮はやや茶色がかっており、特有の匂いや辛みがやさしくマイルドな味わいが特徴といわれています。今回は複数のスーパーを巡り、国産(青森県産)、中国産、イタリア産のにんにくを購入。3種類の違いを比べてみました。
国産(青森県産)にんにくの特徴は?
まずは国産(青森県産)のにんにくから。青森県の中でも特ににんにく生産の盛んな十和田市のもので、「福地ホワイト」という品種です。1つ約50グラムで税抜198円(購入時)でした。寒冷地のにんにくらしい、真っ白で美しい見た目です。中身を割ってみると、同じくらいの大きさのりん片が6個並ぶ「六片種」でした。大きさもそろっています。別の産地のにんにくとともに味を確かめてみたいと思います。
中国産にんにくの特徴は?
続いては中国産にんにく。一般的なスーパーでは中国産にんにくを見つけることができなかったため、業務用商品を多く取り扱うスーパーで入手しました。1つずつの重さは約40グラム、3個で98円とかなりお買い得です。こちらは中国の主なにんにく生産地である山東省で収穫されたもの。中国産は量産体制による農薬の大量散布など安全性も気になるところですが、本商品は契約農園での特別栽培農産物に指定されているそうで、タグの裏面には農薬の使用目的や回数なども明記されていました。正確な品種名は書かれていませんが、カットすると複数のりん片が入っている「多片種」系統のようでした。やや茶色がかっていて、全体的に小粒の印象です。
イタリア産にんにくの特徴は?
こちらはあまり見かけないイタリア産にんにく。私鉄系のスーパーマーケットにて、1個98円で購入しました。イタリア中部に位置するモリーゼ州で生産されているもので、高収量品種のフランス品種とスペイン品種を掛け合わせたものだそう。こちらの会社ではモリザーノ地区産のホワイト種に加え、シチリア産の赤にんにくも取り扱っているとのこと。中身は中国産にんにくとやや似ている「多片種」系統の様子。こちらもやや茶色がかっています。3種類を並べた図がこちらです。スライスしたものに鼻を近づけて香りを嗅いでみました。筆者の個人的な印象はこのような感じです。・国産(青森県産)→刺激臭が少なく、やや甘さのあるマイルドな香り
・中国産→刺激臭は少なく、やや薫製のような香り
・イタリア産→3種類の中では一番マイルドな香り
「にんにく水」で飲み比べてみた
2024年6月に放送された『あしたが変わるトリセツショー』(NHK)にて、「にんにくの香りのもとである「アリイン」はコク味物質でもあり、スライスしてお湯に入れるとうまみが増す」との紹介がされていました。そこで筆者も同番組にならい、上記3種類のにんにくをスライスしてお湯に入れ、飲み比べてみました。作り方は、沸騰したお湯500ミリリットルににんにくスライス約3グラムを入れて5分待つだけ。それぞれを小さなカップに入れたものがこちらです。
お湯の色が一番変わっていたのは中国産のもの。味も3種類の中ではにんにくのパンチが一番効いていて、にんにくらしさがありました。国産(青森県産)は、口当たりがまろやかで甘い印象。イタリア産は、にんにくの辛みがお湯に移り、キリッとした印象です。
また、中国産、国産(青森県産)のにんにくスライスは5分以内に沈みましたが、イタリア産はなぜかお湯に浮いていました。全て沈んだのは約20分後。理由は定かではありませんが、お湯を吸収しにくい品種ということなのでしょうか。
中国産にんにくと国産にんにくの違いとは?
中国産、国産、イタリア産という3種類のにんにくを比べてみました。産地や栽培環境の差はありますが、今回食べ比べたにんにくの場合、それぞれの品種系統が異なることが大きな違いだと挙げられます。さらに、国産として青森県産の「六片種」を選びましたが、九州や四国で主流の「多片種」と比べれば、違う結果になる可能性があります。味の面での選び方としては、「にんにくのマイルドな甘みを楽しみたい時は国産」「にんにくらしいパンチを感じたい時は中国産」「キリッとした辛みを感じたい時はイタリア産」と使い分けるのが良いのではと感じました。
最後に、先ほどのにんにく水でパスタをゆで、ペペロンチーノを作ってみました。にんにくのホクホクとした食感とともにいつもよりうまみが濃いようにも感じられました。
にんにくは食べ過ぎると「アリシン」の作用で下痢や腹痛を引き起こす場合があるため注意が必要ですが、ぜひ一度、にんにくを産地違いで食べ比べてみてはいかがでしょうか。
この記事の筆者:田窪 綾 プロフィール
調理師免許を持つフリーライター。約8年間のレストラン・キッチン勤務経験を生かし、食分野を主軸に活動中。飲食店&新商品取材、オーナーインタビュー、グルメコラムを中心に、「ツギノジダイ」「近代食堂」など複数メディアで執筆を行う。
(文:田窪 綾)
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