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もしトランプ氏が再選したら、世界は具体的にどう変わるのか。「確トラ」で予想される日本への影響

オールアバウト / 2024年7月28日 21時15分

もしトランプ氏が再選したら、世界は具体的にどう変わるのか。「確トラ」で予想される日本への影響

11月5日に控えるアメリカの大統領選投開票。共和党の候補者であるドナルド・トランプ氏の銃撃事件を経て、トランプ氏の勝利は間違いないと見るアメリカ国民も増えているが、実際にトランプ氏が再選したら、世界に対して具体的にどのような影響をもたらすのだろうか。(サムネイル画像出典:Michael Candelori / Shutterstock.com)

今、国際情勢で最もホットな話題は、なんといってもアメリカの大統領選挙だろう。

世界最大の経済大国であるアメリカの大統領選は4年に1度行われるビッグイベントで、その結果が世界の行方を左右するほど大きな影響力を持っている。

そんな大統領選挙だが、2024年はこれまでの選挙の中でも特に波乱の展開になっている。というのも、東部ペンシルベニア州で7月13日に、共和党の候補者のドナルド・トランプ前大統領が演説中に狙撃されて暗殺されかける事件が発生したのである。耳を撃たれたが、幸い命に別状はなかった。

「もしトラ」が「確トラ」に

ただ中継されていた演説中に暗殺未遂に巻き込まれて間一髪で生き延びたトランプ氏は、支持者などの間で「神が味方についた」と神格化され、大統領選でも勝利は間違いないと見る人たちが多くなった。メディアや専門家はこれまで、「もしトランプが再選するとすれば……」という場合について「もしトラ」と呼んでいたのが、暗殺未遂事件以降は「確実にトランプが再選する」という「確トラ」と言われるようになってきている。

さらに7月21日には、81歳のジョー・バイデン大統領が体力などの問題で大統領選から撤退を発表した。代わりにカマラ・ハリス副大統領が、バイデン氏に代わって民主党の候補者になる可能性が高くなった。8月19日からの民主党全国大会で正式指名される予定だが、ますます「確トラ」になったという声も聞こえてくる。

では本当に「確トラ」が起きるとすると、世界または日本にどんな影響を与えるのだろうか——。今回はトランプが大統領に復帰した場合に何が起きると考えられるのかを見ていきたい。

アメリカの大統領選を簡単におさらい

本題に入る前に、まずアメリカの大統領選を簡単におさらいしたい。アメリカ政治は2大政党制で、伝統的な価値観を重要視する保守派である共和党と、人権や福祉を重視するリベラル派である民主党が、それぞれ大統領選挙に出馬する候補者を1人ずつ選ぶ。そして11月の第1月曜日の翌日に、両党の候補のうち1人を選ぶ大統領選挙を実施するのである。2024年は、11月5日の火曜日に投開票が行われる。

そこでトランプ元大統領が間違いなく勝利するというのが「確トラ」を主張する人たちの見方だ。アメリカでは多くの企業が大統領選までにさまざまな世論調査を行うが、現時点ではトランプ氏と、ハリス氏の差が拮抗(きっこう)しているという結果もある。メディアでそうした世論調査が次々と報じられるので何が「実態」なのかは分かりにくい。

最近では、こうした調査に加えて、賭博などの予測マーケットと呼ばれる分野が注目されていて、カネをかけて勝敗を予測する人たちの声を集めた結果である「オッズ」の予測がより正確であるとの見方もある。それを見ていると現時点では「確トラ」が優勢という結果になっている。

トランプ氏の考える「アメリカファースト」の政治経済

では「確トラ」になった場合に、世界はどう変わるのか。最大の変化は、露骨なアメリカ第一主義(アメリカファースト)が復活することだろう。それによって、世界の調和が乱れる可能性がある。

第一次トランプ政権(2017~2021年)は、例えば、世界で協力して温暖化対策の排出量制限をする枠組みのパリ協定から速攻で離脱した。理由は、トランプ氏に言わせれば、経済大国のアメリカが損をするからだ。バイデン大統領は就任後に改めてパリ協定に復帰したが、トランプ氏が再び大統領になればまた離脱する可能性がある。

経済を見ると、トランプ氏は現在「アメリカの全輸入品に10%の関税を課す」と主張している。そうなると、ほかの国々が逆にアメリカから来る輸入品に関税をかける報復合戦になると指摘されている。そうなると世界の交易が不安定に混乱し、世界経済が縮小する可能性がある。

日本であれば、現在、日本の普通乗用車をアメリカに輸出する場合は関税が2.5%だが、それが10%になれば、アメリカで日本車が売れなくなる可能性がある。

また中国製品に対しては60%以上の税金を課す可能性があると発言しており、そうなると報復合戦などで中国との経済摩擦も深刻になるだろう。

戦争への影響、軍事介入の可能性は?

防衛などの安全保障面でも、トランプ氏はアメリカと欧州の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)を軽視して同盟内に緊張感を生み、アメリカが自国第一主義でNATOから距離を置く可能性がある。現在、ロシアによるウクライナ侵攻は、NATOの役割などで欧州諸国を苦慮させているが、トランプ氏はウクライナ侵攻について「24時間以内」に停戦させられると豪語している。

確かにそうなれば、世界的には紛争による犠牲者の減少をトランプ氏が実現するかもしれない。中東でも、現在、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの軍事行動で犠牲者が多く出ている状況だが、中東にも影響力を維持するトランプ氏は、バイデン大統領よりも、イスラエル軍による軍事行動に介入していく可能性がある。3月にイスラエルメディアのインタビューに応じた親イスラエルのトランプ氏は、イスラエルに対して「最後まで仕事を成し遂げて、平和に向かわなければならない」「明らかにPRとして失敗している」と発言し、大統領になれば関与する気満々だと見られている。

台湾情勢、在日米軍……日本への大きな影響も

日本に影響がある台湾情勢についてもトランプ氏は絡んでくる。中国は台湾を自国の領土であるとみなし、平和統一を目指すとしている。そして台湾の独立などの動きに反発し、中国の習近平国家主席は台湾情勢については武力行使も辞さないと発言している。

台湾情勢についてトランプ氏は安全保障と経済を結びつける可能性が高い。台湾は先端技術などで欠くことのできない半導体ビジネスで世界の中心地となっているが、トランプ氏は最近「台湾は我々から半導体ビジネスを奪った」と話しており、台湾へ対中国の安全保障面で協力を強化する代わりに、半導体分野のビジネス面で台湾からアメリカファーストになるような好条件を引き出そうとするだろう。これについては、筆者も台湾でビジネス関係者らの懸念を耳にしている。

安全保障では、日本にも直接的な影響がおよびそうだ。特に在日米軍。トランプ氏は世界各地にある米軍基地を「カネの無駄」として閉鎖する可能性が懸念されている。もちろんアメリカ政府は自国の影響力を行使するために適所に米軍を置いているのだが、トランプ氏はそれを真っ向から批判してきた。そして日本にある米軍もカネがかかるとして、安全保障を提供している見返りにさらなる在留経費の負担を日本に求めてくる可能性がある。

交流が深かった安倍元首相のいない日本で、どう向き合うべきか

そもそもトランプ氏は、暗殺された安倍晋三元首相と非常に仲が良かった。世界のリーダーたちがトランプ氏の扱い方や考え方を安倍元首相に聞いてくるくらいだったという。ただその蜜月の裏には苦労もあり、安倍元首相はトランプ氏との関係維持に、貿易関係などのむちゃ振りに対応しなければいけなかった。

例えば、アメリカでトウモロコシが大量に余った際には「日本が引き受ける」と記者会見で急きょ言わざるを得ないこともあった。安倍元首相はもういないので、トランプ氏とうまく付き合っていくには、こうした瞬時の対応ができるリーダーが日本には必要になるだろう。

日本経済への影響は未知数で、トランプ氏は円安の現状を好ましくないと発言しているが、実際にトランプ氏が再任した際に為替がどう変化するのかは専門家の間でも意見が割れており、はっきりと見通せない状況にある。ただ為替などが日本経済に影響を与えるので、その動向からは目が離せない。

トランプ氏は「予測不能」な人物であるとも言われているが、物事の決断には「アメリカファーストかどうか」「自分自身の得になるか」が根拠になっているようだ。そういう意味では分かりやすいのかもしれないが、その目的を実現させるための「ディール」には脅しを使う怖さがある。「確トラ」には今から備え始める必要があるだろう。

この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル」
(文:山田 敏弘)

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