「R15+指定のヒーロー映画」にハズレなし。『デッドプール&ウルヴァリン』からその面白さを振り返る
オールアバウト / 2024年7月28日 20時35分
![「R15+指定のヒーロー映画」にハズレなし。『デッドプール&ウルヴァリン』からその面白さを振り返る](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_110556_0-small.jpg)
『デッドプール&ウルヴァリン』が絶賛上映中の今、改めて「R15+指定のヒーロー映画にハズレなし!」と思える7作品を紹介しましょう。それぞれバラエティ豊かな魅力があることも分かるはずです。(サムネイル画像出典:(C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.)
7月24日より『デッドプール&ウルヴァリン』が劇場公開されています。
公開初日から「いい意味でやりたい放題」「アクションもサプライズも最高」「ヒーロー映画が好きで良かった」など好評の声が続々と届き、映画.comでは3.8点、Filmarksでは4.3点の高評価をマーク(執筆時点)。日本では本国アメリカよりも2日早く公開された影響もあってか、2024年の洋画1位の初日記録も達成しており、さらなる大ヒットも期待できるでしょう。
そんな『デッドプール&ウルヴァリン』の何よりの注意点は、「銃器・刀剣や爪による刺激の強い殺傷流血の描写がみられる」という理由でR15+指定がされていること。アメリカン・コミック原作のスーパーヒーロー映画と聞くとファミリー向けのイメージを持つ方も多いかもしれませんが、他にもR15+指定がされながら高評価を得た作品は多くあるのです。ここでは、一挙7作品を紹介しましょう。
1:『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)
2016年の『デッドプール』と2018年の『デッドプール2』がいずれも大ヒット&高評価を得たシリーズ3作目にして、映画『X-MEN』シリーズでは事実上の主役だった「ウルヴァリン」との「共闘」が描かれる最新作です。そのデッドプールは「観客に向かって話しかけてくる」「これが映画や漫画だと分かっている」など、いわゆる「メタ的なギャグ」を入れる破天荒なヒーローであり、今回は「他作品やヒーロー映画シリーズへのイジり」もパワーアップしていました。
![(C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa_news/article/2024/07/26/66a30852f3883.jpg)
一方で、「誰かの役に立ちたい」という普遍的で切実な心情が根底に流れていていて、「相性最悪に思えた2人が少しずつ心を通わせていく」正統派のバディものでもあり、さらには「身近な人を守ろうと奮闘する」姿も描かれるなど、ヒーロー映画としては真っ当な魅力も打ち出されています。
![(C)2024 20th Century Studios / (C) and TM 2024 MARVEL.](https://imgcp.aacdn.jp/img-a/550/auto/aa_news/article/2024/07/26/66a3089a9a6f9.jpg)
大筋の物語は予備知識がなくても楽しめますが、繰り出される細かなギャグやサプライズが「ファン向け」であることは事実。可能であれば、後述する『LOGAN/ローガン』を見ておくほか、「ディズニーが21世紀フォックスを買収した」などの「ヒーロー映画シリーズにもいろいろと大人の事情があった」ことを知っておくといいでしょう。
2:『ウォッチメン』(2009年)
ベトナム戦争やキューバ危機など、歴史上の事件の裏には監視者たち(ウォッチメン)が存在していた、というまるで現実の「IF」を見せてくれるようなヒーロー映画です。映画冒頭からスタイリッシュなアクションが展開しつつも、謎が謎を呼ぶ「探偵もの」のような物語も入り組んでいる、163分という大ボリュームの上映時間だからこそ重層的な内容になっていました。
エログロ描写以外にも、ヒーローたちが「平和とは何か?」と悩み、互いの主張を押し付けあい、皮肉に満ちた結末に導かれるなど、見る人をある程度は選んでしまうダークな要素がたくさんあります。しかし、「世界の問題を鋭くえぐる」シリアスな内容こそを求める人にはうってつけでしょう。映画では省かれたメッセージもある原作コミックや、2019年放送のテレビドラマ版を併せて見てみるのもおすすめです。
3:『キック・アス』(2010年)
冴えないオタク少年が自警活動を始めた矢先、ヒーロー(?)の少女とその父親に出会うという内容です。ヘタレだった主人公の成長物語と、危うさでいっぱいの少女(というよりも人殺し)との共闘、さらに観客の予想を裏切る展開と、王道の復讐劇までが展開して、笑いつつも時には登場人物を本気で応援できるという、アクションを主体としたエンターテインメントとしてはもはや究極的とすらいえる面白さが詰まっていました。残念なのは、現在は配信サービスでの提供がない上に、ソフトもプレミア価格がつけられており、見ること自体が難しくなっていること(2013年の続編の『キック・アス ジャスティスフォーエバー』は配信サービスにあり)。R15+指定のヒーロー映画における不動の最高傑作だと断言できる作品なので、早めに見やすくなることを願っています。
4:『LOGAN/ローガン』(2017年)
不死身の治癒能力が失われつつあるヒーローのウルヴァリンことローガンが、絶滅しつつあるミュータントの希望となる少女を守るため、共に逃避行をするという内容です。「西部劇」を連想させる渋い画作りや荒廃した舞台が魅力的で、命からがら子どもと共に脅威から逃げつつ戦う様は『ターミネーター2』も思わせました。ほぼ絶望的といっていい過酷な状況に加えて、劇中には「スーパーヒーローが本当にいたら暴力的な人殺しだ」という冷徹な視点が投げかけられており、その「暴力の重さ」をこれ以上なく示すためもR15+指定の苛烈な描写は必要でした。いい意味で『デッドプール&ウルヴァリン』とは正反対な作風であり、併せて見るとより楽しめる(または怒る?)かもしれません。
5:『ジョーカー』(2019年)
日本でも興行収入50億円を超える大ヒットを遂げましたが、劇場公開時に現実に与える危険性が指摘され、警察と軍隊が警戒態勢を取ったことも話題になりました。公式からは「ジョーカーというキャラクターもこの映画も、現実世界のいかなる暴力を肯定するものではない。ヒーローとして称える意図もない」という声明も出されましたが、いわゆる「無敵の人」になってしまった者の心情を生々しく描いているのは事実です。心理描写が冴え渡っており、とことん最悪な状況に陥っていていく主人公のことが「理解できてしまう」ことそのものが恐ろしく、直接的な残酷描写を抜きにしても、子どもには絶対に見せてはならないと強く思えました。現実か妄想か分からなくなるあいまいな作劇も、いい意味で不安にさせてくれます。2024年10月11日の映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』にも期待しています。
6:『ヘルボーイ』(2019年)
過去にも『ヘルボーイ』の映画は2004年と2008年に公開されましたが、本作はそちらとは連続していないリブート作。その内容はもはや「グロの万国博覧会」といえる勢いで「怪物たちにはいろんなものがぶっ刺さる」「人間たちもちぎっては投げられて引き裂かれる」様は本当に悪趣味です(褒めています)。それでも、主人公が「しゃ〜ね〜な〜、俺がやってやんよ」という感じの面倒見がいい人であり、真っ当な正義感が貫かれたヒーロー映画になっている点も見どころ。正直に言って物語はやや散漫かつ設定を盛り込みすぎていて完成度は高くないのですが、中盤のダイナミックなカメラワークとスケール感で展開するワンカットのアクションの面白さと、終盤での街で異形の怪物が次々に人を惨殺していく画のすさまじさは見る価値が大いにありますよ。
7:『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)
2016年にも『スーサイド・スクワッド』が公開されていましたが、そちらが全年齢指定だったのに対し、今回は「空いた口が塞がらなくなる」ほどの衝撃的なオープニングから、グロさが惜しげもなく投入されていました。出色なのが「サメ人間」の愛らしさで、人間を引きちぎったり丸呑みにするシーンも笑ってしまうのでやっぱり悪趣味です(もちろん褒めています)。
ジェームズ・ガン監督は過去にも2010年に『スーパー!』という冴えない中年男性が「通り魔」と化してしまう悲しくもおかしい(でも大きな感動がある)、大人向けのヒーロー映画を手掛けていましたが、今回はここまでの予算をかけ、スケール感のある、ヴィラン(悪役)たちヒーローになる(グロ満載で人の命が超安い)作品を手掛けたことにも感慨深さがありますし、そちらにも通ずる「はぐれ者たちの物語」には大きな感動が待ち受けているのです。
『異世界スーサイド・スクワッド』もぜひチェックを!
なお、2024年現在はテレビアニメ『異世界スーサイド・スクワッド』が放送中。こちらは年齢制限は設けられていないもののやはり刺激的な内容で、「異世界もの」のジャンルでヴィランたちが暴れる様がなんともすがすがしく、人気キャラクターのハーレイ・クインが過去最高レベルでかわいくて魅力的なので、ぜひ『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』と併せて見ることをおすすめします。その他、スーパーパワーを持つヒーロー映画とは少し違いますが、『シン・シティ』(2005年)、『キングスマン』(2014年)、『ジョン・ウィック』(2014年)も、刺激の強いR15+指定のアクション映画としておすすめです。
それぞれがやはり悪趣味や不謹慎が褒め言葉になる内容である一方、『LOGAN/ローガン』のように残酷描写が真面目に物語上で重要になっている作品があるのも事実。いわゆる「いい子」なヒーロー映画ももちろんいいですが、そうではないバラエティ豊かなR15+指定の作品も、ぜひ知ってみてください。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィールAll About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)
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