1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

『インサイド・ヘッド2』が新たな「思春期映画」の傑作となったワケ。“エンドロール後”にも注目を

オールアバウト / 2024年8月1日 21時10分

『インサイド・ヘッド2』が新たな「思春期映画」の傑作となったワケ。“エンドロール後”にも注目を

8月1日より公開中の『インサイド・ヘッド2』が「思春期映画」として秀逸な理由を解説しましょう。特に「思春期あるある」の描き方に注目してほしいのです。(サムネイル画像出典:(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.)

8月1日より(7月31日に前夜祭上映もされた)『インサイド・ヘッド2』が公開中。本作は2015年に公開された『インサイド・ヘッド』の9年ぶりの続編です。

本作は後述する特徴もあって、前作を見ていなくても、予備知識がなくても楽しめる内容ですが、ただ1つ事前に知ってほしいのは「エンドロール後にも重要なおまけがある」こと。お子さんがよほどぐずったり、トイレに急いだりしない限り、最後まで席に座っておくことをおすすめします。

その魅力と面白さを、ネタバレにならない範囲でさらに紹介しましょう。

アニメーション映画史上No.1の超大ヒットに!

『インサイド・ヘッド2』は、まずは歴史的超大ヒットについて触れなければならないでしょう。なんと『アナと雪の女王2』をも追い越して「アニメーション映画史上世界No.1」を達成しており、全世界での興行収入はすでに15億ドルを突破。ケルシー・マン監督とマーク・ニールセンプロデューサーからのお礼のメッセージも届いています。
評価も絶賛の声が多く、アメリカの批評サイトRotten Tomatoesでは執筆時点で批評家支持率91%、オーディエンススコアも95%までに到達。前作から「ピクサー最高傑作」と呼ばれており、ハードルがとてつもなく高い続編にもかかわらず、その期待をはるかに超える大成功作となったのです。

今回は冒頭から分かる「頭の中」の表現の面白さ

前作『インサイド・ヘッド』からある何よりの魅力は、「頭の中の感情」を個性的なキャラクターで表現したことでしょう。

「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」という5人の感情が頭の中の「司令室」にいて、主人公の女の子のライリーを幸せにするために、それぞれが努力をしたり、はたまた失敗したりします。

その「脳内会議」的なアイデア自体は珍しいものではなく、同年2015年には漫画を原作とした映画『脳内ポイズンベリー』が公開されていましたし、ギャグ漫画では定番ともいえる表現でしょう。

しかし、それをピクサーの圧倒的な技術力のアニメで表現し、子どもがワクワクできる冒険が展開しつつ、大人こそがハッと気付かされる「(ネガティブにも思えるカナシミという)感情がなぜ必要なのか」という哲学的な問いかけも投げかけられています。誰もが楽しめ、かつ多層性のあるエンターテインメントに仕上げたことが、あまりに偉大だと思うのです。

そして、今回の『インサイド・ヘッド2』では、冒頭のアイスホッケーの試合から、スピーディーに「感情それぞれの指令」の面白さを改めて示すことも実に巧みです。(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved. 前作を見ている人にも「そうそう、こういう作品なんだよ!」と改めて思い出せますし、前作を見ていない人にとってもこの後の展開につながる「作品内のルール」が明確に分かるのですから。

「思春期あるある」の表現

前作の面白さを冒頭で端的に示した上で、今回ははっきりと「思春期」の物語であることが打ち出されています。(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved. 物語は前作から2年後、主人公のライリーは13歳となり、高校入学を控えたタイミングで、頭の中では「シンパイ」「イイナー」「ハズカシ」「ダリィ」という4人の新たな感情たちが登場します。将来を心配したり、誰かをうらやましく思ったり、さらには親に反抗的な態度を取ったりする様を、新しい感情それぞれが表現してくれるのです。

いわば、これは「思春期あるある」の表現。大人になってみれば……いや、思春期まっただなかの当事者でも「どうしてあんなことを言っちゃったんだろう」と思う不可解な言動や、「なんでこんな気持ちになるんだろう」という不安定な心理状態までをも、「頭の中ではこうなっている」と示すことそのものが面白いのです。(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved. そして、その新たな感情のシンパイたちは「暴走」し、ヨロコビを筆頭とする5人の感情を「追放」してしまいます。そこから巻き起こる「感情の嵐」はどのようなものなのか。この騒動を経て、主人公のライリーはどのように「成長」するのか……そこには前作からさらに「先」を行く、“新たな感動”があったのです。

「私だけじゃない」という気付きの意義

この“新たな感動”の描写には、思春期まっただなかの人に、「こうなるのって私だけじゃないんだ」という気付きを与える、とても大きな意義があります。それは、現実の世界で誰かを表面的に見ているだけでは分からない「内面」の部分を、アニメーションで表現したからこそのものでしょう。(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved. 大人は「かつての自分もこうだったかもしれないな」と思いをはせることができますし、親御さんであれば子どもの心情を想像して、よりよい対応を考えるきっかけにもなるでしょう。前作に引き続き、エンターテインメントとして楽しいだけでなく、現実をより良くするためのヒントを与える作品としての「強度」は半端ではないのです。

それでいて、その気付きを説教くさいものではなく、やはりエンターテインメントとして提示していて、描写によっては“ギャグ”として昇華されているのも本作のすごいところ。(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved. 詳細は伏せておきますが、その思春期特有の恥ずかしさを、とある「驚きの見た目」をしたキャラクターが表現していることに大笑いしつつも納得ができました。ここは、何かの創作物を愛するオタク気質のある人こそ(それを隠そうとした経験もある人も含めて)「分かる!」と膝を打つことでしょう。

また、本作を見て「この感じでシリーズを続けられるじゃん!」と思う人も多いでしょう。例えば「結婚や出産」「中年の危機」など、その後の人生の節目における感情の変化もまた面白く、現実にフィードバックできる学びも得られるだろうと、想像できるからです。

監督の実体験と「思春期の当事者」からの意見も反映

ピクサー作品の多くでは、作り手の実体験が反映されており、そのことが物語をより普遍的に人の心に響くものにし、感動の源になっています。例えば、前作『インサイド・ヘッド』のピート・ドクター監督は、自身の娘が2歳のときに『モンスターズ・インク』を、9歳のときに『カールじいさんの空飛ぶ家』を手掛けるなど、作品を製作する時点での娘の年齢がそれぞれの主人公の子どもの年齢にシンクロしており、娘とのコミュニケーションの経験が作品に生かされているのです。

『インサイド・ヘッド』では、11歳になったピート・ドクター監督の娘が引越しと転校をきっかけにふさぎ込んでしまった実体験が反映されていました。今回の『インサイド・ヘッド2』でのケルシー・マン監督も、思春期の娘が2人いたこともあって、主人公のライリーがティーンエージャーだからこそ起こり得るアイデアに焦点を絞り、製作をしていったのだとか。(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved. さらに、今回の『インサイド・ヘッド2』では、趣味も育った環境も異なる9人の10代の女の子たちに、約3年に渡って製作過程の映像を見せて意見を募っていたそうです。ピクサーはこれまでもスタッフから率直な意見を募り、徹底的なリサーチと妥協のないブラッシュアップも繰り返して作品のクオリティを上げてきましたが、今回はさらに思春期の当事者から、「共感を呼ぶ説得力」もより追求したといえるでしょう。

併せて見てほしい、思春期を描いたピクサーの傑作も

ピクサーが明確に思春期を描いた作品は、今回が初めてではありません。2022年の『私ときどきレッサーパンダ』では、はっきりと「生理」を扱っており、しかも「どうにもコントロールできない感情を表に出してしまう」といった思春期特有の言動を「レッサーパンダに変身してしまう」ことを通じて描いた作品でした。

それでいてアイドルに夢中のオタクな女の子たちの友情を描く「シスターフッドもの」であり、過保護を超えてほぼ“毒親”となってしまった母親の物語としても、非常に誠実に作られた作品でした。

「思春期」という人生の中で最もセンシティブで、感情も激動を迎えるその時期を捉えたアニメ映画として、『インサイド・ヘッド2』と『私ときどきレッサーパンダ』という2作の傑作を送り出したピクサーに、改めて称賛の言葉しかありません。ぜひ、併せてご覧ください。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください