母が入院するたび「父のおもちゃになった」10代の私…母親になった今あらためて考える“父の罪”
オールアバウト / 2024年8月3日 22時5分
![母が入院するたび「父のおもちゃになった」10代の私…母親になった今あらためて考える“父の罪”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/allabout/allabout_110829_0-small.jpg)
11歳のころ、母の入院をきっかけに父からの性的虐待がはじまったと30代女性は振り返る。家庭をもち娘もいる今、彼女はあらためて「父の罪」を考えている。※性的虐待の体験談が含まれますので、ご注意ください
実父や継父からの性的虐待を黙って我慢するしかなかった女性たちが、声を上げ始めている。
実際に実父から7年にわたって性的虐待を受け続け、今は自分も母となった女性が「気持ちを整理したい」と過去に経験したことを話してくれた。
私が11歳のころ、母親が入院した
ノリコさん(39歳)によれば、彼女を「性的なおもちゃ」にしていたのは実父であった。会社員の父とパート主婦の母との間に長女として生まれたノリコさんには、4歳違いの妹がいる。「私が11歳のころ、母が病気で入院したんです。当時、私は知らされていなかったけど子宮がんだったそうです。手術のときは2週間前後、その後も治療のために何度か入院していました。
父の態度が“おかしく”なったのは、最初の手術のために母が入院のときです」
もともと仲のいい一家だった。父は母が大好きで、母はそんな父を甘やかし、子どものように世話を焼いていた。
「母ががんだと知ったとき、父は相当落ち込んだのだと思います。入院して家の中に母がいなくなったのも想像以上につらかったんでしょう。
普段は家事などしないのに、頑張って娘ふたりに料理を作り、まだ1年生だった妹の育児をして、父は父なりに大変だったのかもしれない。
母の手術があったその日、父は会社を休んで病院に詰めていました。私は普段通り学校に行って、帰宅すると父がいたんです。手術は無事に終わったと、ホッとした顔でした」
父にぎゅっと抱きしめられて……
父を手伝って夕飯を作り、3人で食べて妹を寝かせた。父はリビングでぼうっとしていたという。ノリコさんに気づくと手招きをした。「そばにいくと、父にぎゅっと抱きしめられました。そのくらいのことはよくあったのですが、気づくと父が私のスカートの中に手を入れていたんです。
私はすでに生理がありましたから、ある程度の知識もあった。
やめてよと言ったら、『お願いだからパパを慰めて。ノリコだけが頼りなんだ』と。嫌なのに、なんだかかわいそうな気がして突き放せなかった。
母がいないから私が母の代わりをするしかないと思ってもいた。長女の性(さが)なんですかね」
ノリコさんはそう言って自嘲的な顔になった。断れなかった自分を憎むような蔑むような表情だ。
「体中をまさぐられて、全身が固まりました。怖いというより、いつも優しい父がどうしてこんなことをするのだろう、でも、私が父の寂しさを埋めることになっているなら、それでもいいのだろうか……と、いろいろなことが脳内をめぐっていた」
それでもやはり「嫌」だった。母が退院するまでの間に数回そんなことがあったが、退院してきた母にはなにも言えなかった。
母の代わりに
その後、母が入院するたびに「父のおもちゃになった」とノリコさんは言う。そしてついに15歳のときレイプされた。「本気で抵抗しました。めちゃくちゃに暴れた。でも父はやめなかった。やめるどころか、『それなら妹を標的にする』と脅してきて。それで与するしかなかった。
父に対して殺意が芽生えました。あのあと、よく普通に高校に通えていたなと自分でも思うんです。あのことと普段の生活は別だと、どこかでスイッチを切り替えていたのかもしれません」
大学進学のため上京するとき、父に「あんたがしたことは人として腐ってる。私に殺されなかっただけよかったと思え」と凄んで家を出た。
それ以来、父には会っていない。なにも気づかずにすくすく育った妹によれば、「相変わらずお父さんとお母さんは仲がいい」そうだ。
「父のせいで男性不信になりました。恋愛なんかできないし、付き合おうと言われると、すぐに関係を壊しました。
行きずりの男性と関係をもったことも数えきれません。常に虚しくて、生きている意味も見い出せなかった」
35歳で結婚「夫は私の秘密を知らない」
就職して、仕事がおもしろいと思えたのは幸いだった。私は仕事と結婚すると周囲にも公言していた。だが35歳のとき、ノリコさんは結婚した。今は一人娘の母として共働きで家庭を大切にしている。「夫は私の秘密を知りません。あれはもうなかったこととして処理したつもりです。もちろん、ときどき黒い塊が心の奥から頭をもたげることもある。でも押し込めています」
ただ、夫は彼女と実家、特に父親との間に確執があることはわかっているようだ。無理に聞こうとしないのが夫のいいところだと彼女は言う。
「娘が生まれたとき、少し怖かったのは本音です。夫が娘とどうにかなるなんて、考えただけでおかしくなりそうだった。
今になって思うのは、もしかしたら母は薄々気づいていたのではないかということ。証拠はありませんが、自分が入院して帰ってくるたびに夫と娘の関係が進展しているんですよ。
わからないはずはないのでは、とも思うんです。
少なくとも上京してから私が一度も帰省していない事実を、母がどう思っているのか……。母とは東京で何度か会っていますが、なにも聞いてきません」
自分が母親になった今、考える「父の罪」
彼女から母に正すつもりはない。病を克服して、今は人生を楽しんでいる母に罪はない。だが、父には罪がある。父からのレイプを表沙汰にするつもりはないままにここまで過ごしてきたが、父本人に罪を償わせたい、謝罪させたい気持ちも出てきた。
「あくまで私の場合ですが、父親が娘に、男であることを知らしめるような行為をすることに罪がある。娘でありながら、父親にとって女にもさせられるというのは、私のアイデンティティが揺らぎました。
そういう人間の尊厳そのものに関わる行為なんだと父にはわかってほしい。私が全部バラしたら、たちまち一家崩壊だと思うと、なかなかそこまでする気にはなれませんが」
すでに20年以上、彼女は父と顔を合わせていない。それが父にとって痛手となっているか、あるいはホッとしているのかはわからない。
父を好きだったからこそ、今もノリコさんの胸はときどき苦しくなる。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))
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