フワちゃん問題で物議の「裏アカ」。投稿の“流出”はプライバシーの侵害に当たる? 弁護士に聞いた
オールアバウト / 2024年8月7日 20時50分
フワちゃんの問題発言騒動で、話題に上った「裏アカ」。なぜ若い女性はリスクを負ってまで裏アカを持つのか。アラサーの女性3人に裏アカを持つ理由、さらに法的トラブルに発展する可能性について弁護士に聞いてみた。(サムネイル画像出典:フワちゃんの公式X)
8月4日、タレントのフワちゃんが、元陸上自衛隊でお笑いタレントのやす子さんに対して発信したX(旧Twitter)の投稿内容が問題視され、SNS上で物議を醸した。同ポストはすでに削除され、同日にフワちゃんはやす子さんに対する謝罪文も投稿したが、自身のラジオ番組が放送休止になり、さらには出演したCM動画が非公開になるなどの事態に発展した。
問題のポストに対し、一部では「フワちゃんが、自身の裏アカウント(以下、裏アカ)と間違えて、公式アカウントで投稿したのではないか」という憶測も飛び交ったが、6日にフワちゃんの所属事務所が某メディアの取材に対して回答した内容によると「投稿時点では、既に凍結されていたアカウントを除き、Xの別のアカウントはございません」とのことで、フワちゃんの裏アカは存在しないという新事実が明かされた。
今回の“フワちゃん騒動”で話題に上った「裏アカ」だが、昨今、有名人の裏アカの流出が後を絶たない。アカウントが特定され、イメージダウンにつながることが多いのは20~30代の女性タレントである。なぜ若い女性はリスクを負ってまで裏アカを持つのか。アラサーの女性3人に裏アカを持つ理由を聞き、さらに法的トラブルに発展する可能性について弁護士に聞いてみた。
裏アカ=本当に信用できる友人と共有するもの
「裏アカというと、わいせつなアカウントみたいに思う人もいるかもしれないけど、ほとんどの子が『親しい友達のみに本音をつぶやく場』か『閲覧用』として活用してますよ」こう話すのは、筆者の友人の久美子さん(仮名/31歳)だ。彼女は学生時代の友人30人のみが閲覧可能な本音をつぶやくためのXアカウントと、閲覧専用のInstagramのアカウントを持っている。
「私は本名でやっているアカウントもあって、それは仕事関係の人も見ているので、それとは別に裏アカを作ったんです。そこには仕事の愚痴とかを書いています。愚痴を個別で友人にLINEすると、相手が返信したくなくてもしなきゃいけないじゃないですか。でも、Xだったら独り言のようにつぶやけて、リプライしたい人が返信をくれる。独り言だけど、誰かが見ていることのメリットも享受できるのが裏アカの魅力です。閲覧専用のInstagramの裏アカは、“足跡”をつけたくないストーリーズのチェックや、“推し”の投稿を見るためだけに使っています」
若い女性の多くは久美子さんのような理由で裏アカを作成しているケースが多いのではないだろうか。一方で、こんな声も。
裏アカを持つのは「承認欲求」のため
「いわゆるエロ垢と言われる際どい写真を掲載することもあります。でも、裏アカで男性と会いたいとかそういう感情はなくて」こう語るのは、美波さん(仮名/33歳)だ。彼女は、27歳の時にXで本音をつぶやく裏アカを始めた。
美波さんは現在結婚して7年目になる夫と2人で暮らしているが、夫には裏アカを内緒にしているという。現在は数千人のフォロワーがいるが、実際の知人は1人もいない。
「ちょっとエッチな画像を上げた時に『ぽっちゃりの人好きです~!』とか『かわいい!』とコメントがついて。夫には女として見てもらうことがないので、コメントで承認欲求が満たされる部分があって」
美波さんは、Xを通じてリアルで会うことを提案されることもあるというが、会う気は一切ないという。裏アカはあくまで承認欲求を満たすためのツールなのだ。
20代女性の裏アカ所有率は約4割
久美子さんや美波さんのように、SNSのアカウントを複数持つ若年女性は多い。NTTドコモ モバイル社会研究所が2022年、「スマホ・ケータイ所有者のアカウント所有状況」について全国の15~79歳男女6587人を対象に実施した調査によると、10代女性の約6割、20代女性の約4割が「X(旧Twitter)のアカウントを2個以上所有している」という結果となった。40代以上はそもそも1つもアカウントを所有していないのに対し、突出して10代、20代のアカウントの複数所有率が高い。
若年女性にとって、裏アカを持っているのが“普通”になりつつあるが、裏アカによってトラブルに巻き込まれたケースもある。
勝手にスクリーンショットで撮影され、祝われた
「裏アカで結婚報告の夫との2ショットをアップしたら、友人にインスタのストーリーに勝手にアップされて」こう語るのは、弘美さん(32歳/仮名)だ。彼女はタレント活動をしており、直近で恋愛リアリティー番組への出演経験もあることから、自身の恋愛や結婚については公表していなかった。そのため、結婚報告も学生時代の親しい人のみが見れる裏アカでひっそりしたという。
「この裏アカは、信用している人のみがフォロワーのアカウントだったので、特に心配していなかったのですが、アップした日の夜、中学生の同級生のインスタを見たら、ストーリーに『弘美、結婚おめでとう!』と私が裏アカに載せていた夫との2ショット付きでアップされていて」
同級生のInstagramには鍵がかかっておらず、オープンなものだった。
「同級生は純粋に祝福したかっただけで悪気はなかったみたいなのですが、番組放映直後で、恋リアの熱狂的なファンが見たらどう思うか……。すぐに削除してもらいました」
さらに弘美さんは「これが番組への愚痴とかだったとして、スクショを取られて拡散されたら……と思うとぞっとしました」と語る。過去には、出演した番組の裏話なども書いていたというが、裏アカはすぐに削除した。
裏アカの流出はプライバシーの侵害に当たる可能性も
コンプライアンスが強く求められる現代社会において、我々が自身をさらけだせる場はほとんどない。唯一、自分をさらけ出せる場として活用されているのが“裏アカ”だが、「裏アカを巡り、多くのトラブルが起こっている」と、SNSの誹謗中傷問題に詳しい尾崎聖弥弁護士はいう。尾崎弁護士「裏アカだからといって気が大きくなり、過激なことを書き込めば、悪質な誹謗中傷として開示請求されてしまう場合も多いでしょう。また逆に、誰かが非公開の裏アカに投稿した内容を、第三者が勝手に外部に流出させた場合、プライバシー侵害や名誉毀損(きそん)で違法となる可能性があります」
裏アカを持つ人も裏アカを見る人も、投稿する内容には気を付けたいものだ。
※取材協力者のコメントは原文ママです
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
取材協力:尾崎聖弥 プロフィール
第一東京弁護士会。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク所属。企業に対するコンプライアンス研修などを担当している。
(文:毒島 サチコ)
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