老齢年金を繰り上げ受給する前に注意したい7つのこと
オールアバウト / 2024年8月10日 18時30分
老齢年金は原則65歳から受給することができますが、「繰り上げ受給」をすれば、それよりも早くもらうことができます。ただし繰り上げ受給する場合の注意点があります。
老齢年金は繰り上げで減額し、繰り下げ受給で増額する
老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は原則65歳から受給することができます。もし、年金を65歳より早くもらいたい場合は「繰り上げ受給」ができます。繰り上げ受給をすると、年金が減額されるというデメリットがあります。減額率は「0.4%※×繰り上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」で計算しますが、最大で24%になります。
※1962年4月2日以降生まれの人。同年4月1日以前生まれの人は0.5%
一方、65歳よりも年金を遅くもらいたい場合は「繰り下げ受給」ができます。繰り下げ受給をすると、年金が増額されるというメリットがあります。増額率は「0.7%×繰り下げ請求月から75歳に達する日の前月までの月数」で計算します。もし、70歳まで繰り下げると年金が42%、75歳まで繰り下げると84%増額となります。
繰り上げ受給と繰り下げ受給どちらかを選択するのであれば、一般的には、長生きするほど、もらえる公的年金が多くなる繰り下げ受給の方が得と考える方が多いのではないでしょうか。ただし老後の貯金がないなど、やむをえず繰り上げ受給をしなくてはならない場合もあります。
今回は、繰り上げ受給する前に、注意しておきたい7つのことを紹介します。
1:年金の繰り上げ受給の取り消しはできない
繰り上げ受給の手続きは、お住まいを管轄する年金事務所などに「老齢厚生年金・老齢基礎年金支給繰上げ請求書」を請求すると、請求した日の翌月分から年金が支給されます。一度年金の請求手続きを行ったら、その後は減額された年金額で確定されてしまい、取り消しはできなくなります。2:年金の繰り上げした後は国民年金の任意加入・保険の追納はできない
国民年金保険は20~60歳までの40年間(480カ月)支払えば、65歳から老齢基礎年金の満額分が受け取れます。もし、国民年金保険料を480カ月払っていない場合は、60歳以降に、国民年金に任意加入したり、未納分を追納したりすれば65歳から受け取れる老齢年金を増やすことができます。しかし、老齢年金の繰り上げ請求をしてしまった後は、任意加入も保険料の追納もできなくなってしまいます。
3:雇用保険の給付と調整がある
65歳になるまでの間、雇用保険の基本手当(失業給付)や高年齢雇用継続給付金が支給される場合、繰り上げ受給した老齢厚生年金と両方を同時にもらうことはできません。その場合は、老齢厚生年金の一部または全部の年金額が支給停止となります(老齢基礎年金は支給停止されません)。4:厚生年金に加入すると老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になることも
厚生年金に加入して働いている場合、給与や賞与の額、繰り上げ受給する老齢厚生年金額の合計額に応じて、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる可能性があります(繰り上げ請求した老齢基礎年金は支給停止されません)。5:遺族厚生年金などをもらっているときは老齢年金と併給できない
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族がもらえます。もし、遺族厚生年金や遺族共済年金をもらっている場合、65歳になるまでの間、繰り上げした老齢年金とは一緒に受給することができず、どちらかを選ぶことになります。6:寡婦年金がもらえなくなる
寡婦年金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間および国民年金の保険料免除期間が一定以上ある夫が亡くなったとき、その妻が60歳から65歳になるまでの間支給される年金です。もし、繰り上げ受給をすれば、寡婦年金をもらう権利がなくなります。
7:障害年金がもらえなくなる
年金には老後を支えるもの以外に、病気やケガで障害を負ったとき障害年金がもらえます。障害年金は、初診日が65歳までに請求すればもらえる可能性があります。しかし、老齢年金の繰り上げ受給を請求してしまった後は、障害年金を請求することができなくなります。病気の治療中、持病がある方は、よくよく注意するようにしましょう。もし、繰り上げ受給を選択しようかと思う方は、請求前に注意点をよく確認しておきましょう。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
3匹の保護猫と暮らすファイナンシャルプランナー。会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方、心豊かに暮らすための情報を発信しています。
(文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー))
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