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「2024年夏に見てよかったアニメ映画ランキング」をガチで作ってみた。映画オタクが厳選したベスト5

オールアバウト / 2024年8月15日 21時25分

「2024年夏に見てよかったアニメ映画ランキング」をガチで作ってみた。映画オタクが厳選したベスト5

2024年夏に公開された、またはこれから公開されるアニメ映画から、心から見てよかったと思えたベスト5を発表しましょう。(※サムネイル画像出典:『劇場版モノノ怪 唐傘』より (C)ツインエンジン)

2024年夏、話題の映画が渋滞を起こしていますが、ここでは見てよかったと心から思えた、劇場公開中またはこれから公開される夏のアニメ映画の、個人的ランキングトップ5を紹介しましょう。

5位:『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』(8月9日より公開中)


同名漫画を原作としたテレビアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)は2022年の放送時に爆発的な人気を獲得し、アニプレックスのYouTubeチャンネルで公開されたライブ映像『星座になれたら』は2000万回再生を突破、劇中バンド「結束バンド」が現実の野外フェスに進出。アニメファンのみならずファミリー層からも支持を得るなど、もはや社会現象級の盛り上がりを見せていました。

本作は5月に公開された『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』に続く2部作の後編で、上映前のかわいいマナー講座の映像、本編での新規カットとオープニング、何より大スクリーンかつ迫力の音響でライブ映像を堪能できるなど、新たな魅力を十分に提供できていました。

基本的には4人の女子高生がバンドを組む、かわいらしくもほのぼのとした青春音楽劇であり、予備知識なく本作から見ても楽しめるでしょう。ライブ映像の迫力もさることながら、「メイド喫茶のおいしくなる魔法」の作画の良さも堪能でき、さらには人気キャラクターの「喜多郁代」の単なる「陽キャ」というだけではない内面もより伝わってより好きになれたのもうれしかったです。

そして、主人公の後藤ひとり、通称「ぼっち」ちゃんの度を越した「陰キャ」なギャグはやはり切れ味抜群で、共感を抱きつつもその極端さに大笑いできます。同時に、実はそのぼっちちゃんが抱く普遍的な「孤独」にも向き合っている作品であり、意外ではあるけれど納得もできるラストカットは忘れがたい余韻を残してくれました。同じくCloverWorks制作かつ、4人組の女の子の青春を描くアニメ映画『トラペジウム』にも通じている、「電車」という舞台を見事に活かした演出にも注目してみてほしいです。

4位:『めくらやなぎと眠る女』(7月26日より公開中)


こちらは村上春樹の6つの短編小説を原作とした、フランス・ルクセンブルク・カナダ・オランダ合作の作品です。短いエピソードが並べ立てられているようにも見えますが、基本的には「妻の突然の失踪に戸惑う青年」と「謎の“かえるくん”に大地震から東京を救ってほしいと頼まれる男」の2人を軸に捉えると、話を追いやすいでしょう。

(C)2022 Cinema Defacto - Miyu Prodcutions - Doghouse Films - 9402-9238 Quebec inc. (micro_scope - Prodcutions l’unite centrale) - An Origianl Pictures - Studio Ma - Arte France Cinema - Auvergne-Rhone-Alpes Cinema 中でも注目は、新海誠監督が『すずめの戸締まり』の発想元だと明言している『かえるくん、東京を救う』のエピソードがあることです。特に「ミミズ」というモチーフは『すずめの戸締まり』への影響を強く感じますし、一緒に地震を止めてくれと頼まれるのが「何も持たない中年男性」であり、女子高生が主人公の作品とは異なる、悲哀に満ちた心理描写もまた魅力的だったりします。

(C)2022 Cinema Defacto - Miyu Prodcutions - Doghouse Films - 9402-9238 Quebec inc. (micro_scope - Prodcutions l’unite centrale) - An Origianl Pictures - Studio Ma - Arte France Cinema - Auvergne-Rhone-Alpes Cinema 20歳未満の喫煙がみられるためPG12指定がされているほか、はっきり性的な話題もあって完全に大人向けの内容である上に、哲学的な思考を促す奇妙な物語が全編で貫かれているため、見る人をある程度は選ぶ作品でしょう。しかし、村上春樹の独特の文体や、“影”を感じさせるキャラクターなどの印象がアニメで表現されているということが面白く、ある種の「浮遊感」や「幻想的」な印象にもまた惹かれるのです。

さらに、日本語(吹き替え)版は『淵に立つ』『LOVE LIFE』などの実写映画で知られる深田晃司監督が演出を手掛けており、磯村勇斗や玄理などの俳優陣による、淡々としているようで奥行きを感じさせる演技も本作にはベストマッチ。“かえるくん”役の古舘寛治はいい意味での「うさんくささ」も含めて最高にハマっているので、それらを期待する人にもぜひ日本語版をおすすめしたいです。

3位:『劇場版モノノ怪 唐傘』(7月26日より公開中)


2006年に放送されたテレビアニメ『モノノ怪』(フジテレビ系)の劇場版で、なんと約17年ぶりとなる新作です。表現の独自性は極まっており、「和紙」の質感、「素早いカット割り」で見せる会話劇、「空間」を感じさせる3D作画、そして主人公の薬売りのかっこいいアクションなど、それぞれが惚れ惚れとできるでしょう。音響のこだわりも半端なく、映画館という閉じられた環境でこそ、『モノノ怪』の特徴である「限定空間でのサスペンス」をより堪能できるはずです。

(C)ツインエンジン映像面では絶賛に染まっている一方で、賛否両論を呼んでいるのは物語の難解さ。テレビアニメ版もあえて説明しすぎない、抽象的な表現で事態の背景を示す作劇もまた魅力的だったのですが、この劇場版では(次回作への布石のためか)明確な回収がされない要素もあり、良くも悪くもモヤモヤした気持ちが残ってしまうのは事実でしょう。

(C)ツインエンジンしかし、物語の舞台が「大奥」であり、その搾取の構造と、新人のお手伝いであり親友同士である女性2人の関係に注目すれば、現代社会でも決して他人事ではない、女性への苦しみに向き合った誠実なメッセージを受け取れるとも思います。怪奇ホラーテイストを主体にしつつも、実は王道かつ最新の「シスターフッド」ものでもあるのです。

筆者が劇場で見た時は女性の観客が9割以上を占めていた印象でしたが、テレビアニメ版からの話のつながりはほとんどなく、予備知識なくても楽しめるので、もっと男性にも見てほしい作品です。2025年3月14日に公開予定の『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』にも大いに期待しています。

2位:『化け猫あんずちゃん』(7月19日より公開中)


同名漫画を原作とした本作の何よりの魅力は、実写で撮った俳優の動きをアニメに描きおこす「ロトスコープ」で撮られているということ。「貧乏神に“くじ”での勝負を持ち掛ける」や「自転車を盗まれた時の戸惑い」といった、アニメで描かれたキャラクターそれぞれの「実写でもこうなんだよなあ」と思える動きそのものに感心できるし面白いのです。

『化け猫あんずちゃん』 2024年7月19日(金)全国公開 配給:TOHO NEXT (C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会小学生の女の子「かりん」が、母を亡くして、さらに父に捨てられた(と思っている)境遇で、舌打ちをしたり辛辣(しんらつ)な物言いをすることも、重要な意味を持っています。彼女は人前では猫をかぶり、喫茶店で男の子2人におごって手なづけようとしたりと「したたか」に振る舞っているようで、年齢相応の不安や悲しみを背負っていることも伝わるでしょう。かわいい絵柄の、しかも実写と同じ動きをするアニメという手法だからこそ、彼女の悪意を含めて「包む」ような優しさを感じました。

(C)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会さらに、実写だと異質な空間に思えるはずの「地獄」という舞台が「今までと地続き」に思えたり、ロトスコープでは表現し得ないアクションも『劇場版クレヨンしんちゃん』的な躍動感がたっぷりだったりと、アニメの特性を生かしつつ、その制約にもとらわれない挑戦そのものも作品に見事に結実していました。

余談ですが、前述した『めくらやなぎと眠る女』とは大きなカエルが登場するというまさかの共通点もあります。この『化け猫あんずちゃん』のカエルを演じているのは、現在公開中のホラー映画『Chime』で主演を務めた吉岡睦雄なので、『Chime』が怖すぎた人はこちらを見て恐怖を中和するのもいいかもしれません。上映開始から約1カ月がたち、上映回数はごくわずかになっていますが、本作は老若男女におすすめできる作品でもあるので、ぜひ最優先で見てほしいです。

1位:『きみの色』(8月30日より公開予定)


原作のない完全オリジナルのアニメ映画であり、2人の少女と1人の少年が、スリーピースバンドを組む青春音楽劇です。何より注目は山田尚子監督×吉田玲子脚本というタッグで、2009年からの放送のテレビアニメ『けいおん!』(TBS系列ほか)にもあった音楽活動をする女の子たちのやりとりのかわいらしさ、さらに2018年のアニメ映画『リズと青い鳥』に通ずる2人の女の子の心理が繊細かつ濃厚に描かれるなど、2人の「女の子大好き!」な作家性が全力で投入された作品に仕上がっていました。

『きみの色』 8月30日(金)劇場公開 配給:東宝 (C)2024「きみの色」製作委員会ミッションスクールという「神聖」な舞台で、その場を取り繕う“うそ”をついてしまった主人公と、学校を中退して古書店でアルバイトをしている女の子、さらには離島に住み母親に家業の病院を継ぐことを期待されている男の子が、それぞれが悩みを抱えつつも練習に向き合い、ちょっとした「冒険」も通じて成長していく様を描きます。女の子だけでなく男の子もバンドの一員となること、その男の子が中性的な存在感で違和感なくその中で溶け込むことも、今の時代らしい尊さを覚えました。

(C)2024「きみの色」製作委員会オリジナル企画の青春アニメ映画であることは『君の名は。』と共通していますが、そちらの壮大さとは正反対のミニマムな青春劇であり、絵柄と作劇が「淡い」印象であることこそが魅力的です。劇的な展開は少なく落ち着いていて、だからこそキャラクターの内面や背景に広がりを感じさせます。何より雰囲気そのものが心地よくて、「ずっと見ていたい」とさえ思えたのです。

そして、劇中歌の『水金地火木土天アーメン』のポップさとかわいらしさがまたとんでもない……! ポスタービジュアルにもなっているバンドの演奏シーンは、前述した『ぼっち・ざ・ろっく!』に通ずる魅力がありますし、やはり劇場の音響でこそ体感してほしいと思うのです。


なお、同じく山田尚子監督×吉田玲子脚本というタッグ、さらには牛尾憲輔による音楽も共通している、2016年の劇場公開当時に絶賛の嵐となった『映画 聲の形』が8月16日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で地上波放送されます。こちらは小学生時代のいじめという重い出来事を前提にしつつも、それからの背負い続けた罪からの救いを描いたとても尊い作品なので、ぜひ併せて見てほしいです。 『きみの色』は『聲の形』よりもややライトな作風ともいえますが、共通する物語の奥行きを備え、さらに学校や将来に悩みを抱えている少年少女の心理に向き合っていますし、夏休み終わりに公開されることにも優しさを感じます。『聲の形』と同様に、『きみの色』も若い人に届くことを願っています。

ほかにも注目のアニメ映画は?

広く公開中のアニメ映画には『インサイド・ヘッド2』『怪盗グルーのミニオン超変身』『クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』『劇場版すとぷり はじまりの物語 Strawberry School Festival!!!』があり、8月16日公開予定の『ねこのガーフィールド』や、さらに6月に公開され今も上映中の『ルックバック』もあります。

さらに、新作ではないですが、2022年公開のスポーツアニメ映画の金字塔『THE FIRST SLAM DUNK』、1987年公開の核爆弾が落とされる一軒家での老夫婦の会話劇を描いた『風が吹くとき』、1999年公開の人気テレビアニメの映画版『劇場版カードキャプターさくら』が短編『CLOVER』と併映で公開中。いずれも映画館という最良の環境で見られるこの機会を、ぜひ逃さないでもらいたいです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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