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自分基準で不快なら「誹謗中傷」と攻撃する匿名アカ…SNSで「意見」すら発信できない異常さ

オールアバウト / 2024年8月16日 22時5分

自分基準で不快なら「誹謗中傷」と攻撃する匿名アカ…SNSで「意見」すら発信できない異常さ

パリ五輪の開幕以降、SNSやネット上で「誹謗中傷」という言葉をこれまで以上に耳にするようになった。意見や提言までも「それは誹謗中傷だ」と指摘され炎上するとは、異常事態ではないか。

パリ五輪の開幕以降、これまで以上に「誹謗中傷」という言葉を聞くようになった。何でもかんでも誹謗中傷と言えばいいというものではない。この言葉だけが独り歩きをするのは怖い。

「これって叱咤激励ですか?」

競泳の元五輪選手・萩原智子さんが、日本代表選手について自分が偉そうなことを言える立場ではないと前置きしながら、自身のX(旧Twitter)上で「日本競泳チームは、次に向けて、収穫、反省、課題……分析してるよね?『チーム全体での対話』をお願いします。

年齢、上下関係なく、多少、ぶつかっても腹を割ってとことん話す……第三者が立ち合い、どんな立場であっても安全を保証してほしい。すべてを吐き出して、認め合えたら、本当の意味でのリスタートができると思う。あとはリーダーの選出」とつづった。

自身が代表選手のときも思うところがあったのだろう。第三者が立ち会うことなく、上から下への一方的な指導という名の抑圧もあったのかもしれないと感じるような文面である。

代表チームも組織であり、上に年配者が立っているのであれば、そういうことはありがちだ。今こそ、誰でも何でも言えるオープンな組織を渇望しているとも受け取れる。

ところがこれについて「これって叱咤激励って言うんですか? それとも誹謗中傷ですか? 私は成績について外野にあーだこーだ言われたら全て『誹謗中傷』に聞こえますが」というコメントがついた(現在は削除済み)。

「誹謗中傷」と「批判」は違う

誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言いふらして他人の名誉を損なう行いのことである。

類語のように使われる「批判」は善悪や正誤を見定めた上で指摘することであり、必ずしも悪意が含まれるとは限らない。他方、「誹謗中傷」は相手を貶める悪意が先行している。

萩原さんの文章に、悪意はまったくない。自らも身を置いたことのある組織に向けての前向きな提言であり、批判ですらない。

これを「誹謗中傷ですよね」と言い切ってしまうことに、世間の怖さを覚える。誹謗中傷だと言い切ることは、相手を黙らせる支配的な行為ですらあるからだ。

職場にもある「人格攻撃」や「潰し合い」

2年前、職場でチームリーダーとなったエリコさん(37歳)は、上は43歳、下は24歳という5人の女性部下を持つ。

「最初に言ったのは、私個人を批判するのもOK、システムを批判するのもOK、だけどメンバー同士の人格攻撃や否定はしないでほしいということでした。切磋琢磨することとお互いを潰し合うことはまったく違う。

話し合いの場に、否定や攻撃はいらない。忌憚なく意見を言い合うことと否定し合うことの違いを、みんなで勉強していきましょうということでした」

10代から20代にかけての10年間を海外で過ごしたエリコさんは、「ディベート」を知っている。議論の仕方も研究してきた。だからこそ、相手の人間性を議論の場に持ち出すのは違うと思っていた。

「最初はぎこちなかったけど、そのうちみんな、提言する楽しさをわかってきた。ひとつの提言を通して、だったらこうやればいい、ああやればいいと意見が噴出したんです。

これはいいね、やってみようと思ったとき、『でも、できないんじゃない? ○○さんはいつも気楽に考えているけど、もっと難しい話だよ』と相手の人格を取り混ぜて否定から入っていた人が、『難しいけど、やってみたいよね。そのためにはどうしたらできるか案を出していこうよ』と前向きかつ客観的になっていった。

そうなるとみんな仕事へのモチベーションが上がりますよね」

何を言っても否定されない、前向きに受け止めてもらえるとなると、「今までとはまったく違う発想なんだけど」と突拍子もない提言をする人も出てきた。だが、それが案外、新しい企画の元となる。

「批判精神」はアリ、「個人攻撃」はナシ

「ときには私に対して厳しい批判も飛んできましたよ。リーダーはこの言葉の意味をもっと深く考えてほしい、いろんな意見が出ているときにきちんと整理して伝えてほしい、もっと方向性をきちんと示せないのか、根拠をちゃんと説明してほしいなどなど。

落ち込むこともありましたが、それは私への個人的攻撃ではなく、チームリーダーへのまっとうな批判だった。だからそれに応えるよう努力してきたし、努力の経緯も示してきた。だから批判は大事。

どうせなら、ぬるい仕事をしたくないみんなの気持ちもうれしかった。未熟でしたが、リーダーという立場を経験できたのは大きかった」

このプロジェクトチームは今年度で終了するが、成果は上がり、すでに目標は達成している。ここから最後まで駆け抜けようとチームは一丸となって仕事を楽しんでいるそうだ。

「チームは話し合いを重ね、濃密で効率的な仕事ができていると思います。最近は、冗談も飛び交うし、みんな本当に仲がよくて、なおかつ刺激的な関係でもある。先日、男性上司に呼ばれて『女性が本気になるとすごいね』と言われてうれしかった。

『男の表面的でぬるい仕事ぶりにうんざりした女集団ですから』と言ったら、上司は苦笑していましたけど」

私たちのチームに批判精神は欠かせない。だけど個人攻撃はしない、単なる悪口もご法度。それがみんなに浸透したとき、信じられないくらいチームとしてのパワーが出るのかもしれない。エリコさんはそう言って微笑んだ。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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