1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

金利引き上げで「変動型」住宅ローンはどうなる?

オールアバウト / 2024年8月20日 11時30分

金利引き上げで「変動型」住宅ローンはどうなる?

7月31日、日銀が金利引き上げを行いました。「金利のある世界」で変動型住宅ローンに不安を持たれた方も多いでしょうが、住宅ローンのロジックを知ることで「将来に対する漠然とした不安」を小さくすることはできます。

7月31日、日本銀行(日銀)が金融政策決定会合(日銀会合)にて、「国債買い入れ額の減額」「0.25%までの金利引き上げ」を決めました。金融政策の正常化にまた一歩近づきました。

今回の日銀による金利引き上げを受けて、変動型住宅ローンを借りている方のなかには「将来に対する漠然とした不安」を抱えている方もいらっしゃるでしょう。

ということで、今回は、「金利引き上げ」にスポットを当てて解説したいと思います。具体的には「金利引き上げで具体的に何が変わるのか?」「金利引き上げで、変動型住宅ローンはどうなるのか?今後、どうなっていくのか?」などの疑問にお答えしていきます。

Q1:「金利引き上げ」って、具体的には日銀は何を上げたの?

A:国の政策金利を「0.0%~0.1%」から「0.25%」に引き上げました。

日銀が今回引き上げたのは、国の「政策金利」です。日本の政策金利は、中央銀行である日銀が市中銀行(民間銀行)に貸し出す金利です。この政策金利の変化が、私たちが民間銀行で利用する金融商品(預貯金やローンなど)の金利に影響します。今回日銀は、政策金利を「0.0%~0.1%」から「0.25%」に引き上げたのです。

結構、勘違いされている方もいらっしゃいますので、改めてご説明しますが、今回、「0.25%」引き上げたのではなく、「0.0%~0.1%」から「0.25%」に引き上げましたので、実際の引き上げ幅は「0.15%~0.25%」です。大きな数字の違いではありませんが、今後金利引き上げがあった際も、「実際の金利」なのか「引き上げ幅」なのか間違いないようにしましょう。

Q2:具体的には金利引き上げで何が変わるの?

A:主に民間銀行が取り扱う金融商品の適用金利が引き上げられます。

国の政策金利が上がることで、民間銀行が取り扱っている普通預金や定期預金の金利が上昇するでしょうが、家計にとって最大のポイントは住宅ローン金利への影響です。

国の政策金利の引き上げを受けて、早速三菱UFJ銀行は、短期プライムレート(短プラ)を9月2日から0.15%引き上げ、年1.625%にすると発表しました。みずほ銀行や三井住友銀行も、短プラの引き上げ(三菱UFJと同じ年1.625%)を発表しています。引き上げは2007年3月以来、17年半ぶりの引き上げとなります。住信SBIネット銀行も短プラを10月から改定します。

「短期プライムレート(短プラ)」とは、信用力のある企業に適用する、期間1年未満の短期貸し出しの最優遇貸出金利を指します。また、変動型住宅ローンの基準金利の目安にもなっています。つまり、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、住信SBIネット銀行の4行は、変動型住宅ローンの基準金利となる短プラを引き上げましたので、各行の変動型住宅ローン金利は各行のルールに則って上がることとなります。

Q3:他の金融機関の変動型住宅ローンで借りている場合はどうなるのですか?

A:変動型住宅ローンの基準金利は金融機関によって異なりますので、契約時の書面を確認しましょう。

住信SBIネット銀行以外のネット銀行は、変動型住宅ローン金利の基準金利を短プラではなく、東京銀行間取引金利(TIBOR)や、そのほかさまざまな市場金利や他行金利を基準としています。TIBORを基準金利としているネット銀行は、楽天銀行とソニー銀行です。既に楽天銀行は3月末に日銀がマイナス金利を撤廃した際、TIBORが上昇したことから4月に引き上げを実施しました。また、ソニー銀行も8月から0.2%引き上げると発表しています。

ちなみに適用金利(基準金利から契約時の優遇幅を引いた金利)が上昇したからといって、実際の返済額がすぐに増えるとは限りません。例えば、メガバンク3行は、毎月の返済額の見直しを原則5年後とする「5年ルール」を採用しています。また、5年経過後に返済額を変更する際は、それまでの返済額の125%までにするという「125%ルール」もあります。

ですので、こうしたルールを設定している金融機関から変動型住宅ローンを借りている場合、今後の金利上昇の影響を受ける方は、大体5年以上前に変動型住宅ローンを借り始めた人となります。

Q4:変動型住宅ローンを固定型住宅ローンに変更した方がいいのでしょうか?

A:選択肢の一つですが、固定型住宅ローンにもメリット・デメリットがあります。

将来の返済額増加に備えるために固定型への借り換えも選択肢の一つとなるでしょう。

一般的に固定型は変動型よりも金利が高い傾向があります。各行によって違いますが、同じ期間ですと1%ほどは高いので、借り換えると月の返済額は増えるでしょう。一方、月の返済額が確定することで、今後の教育や老後資金の準備など長期的なライフプランを立てやすいというメリットはあります。

変動型を選択して、金利上昇局面で少々不安を抱えながら生活を送るか、変動型よりも少し高い金利の固定型を選択して、将来的な安心を確定させるか、大きなメリット・デメリットはここだと思います。

住宅ローンを変動型から固定型に変更すべきか考えるためには、まず返済条件を把握する必要がありますので、契約時の書面を確認しましょう。

ちなみに、ある金融機関で私も変動型住宅ローンを借りていて、「あー、返済額が増えるなー」とは思っていますが、今時点で固定型に借り換えする気は全くありません。なぜならば、「今後、日本の金利は緩やかに上昇する可能性が高いため、支払総額は今の変動型の方が抑えられる」という考えを私自身が持っているからです。

日銀が目指す物価上昇率2%(消費者物価指数(インフレ率)前年比+2%)を考慮すると2%程度までは、政策金利が引き上げられる可能性はあります。ですので、ざっくりですが、変動型住宅ローン金利の適用金利は2%程度までは上昇すると私は見ています。

ただし1年やそこらで一気に引き上げるわけではありません。日銀が仮にそのようなことをすると、日本の景気が一気に冷え込み、日本は大幅な景気後退に陥ってしまいます。数年、もしくは十数年にわたって、日本経済の状況を確認しながらゆっくりと政策金利を引き上げていくと考えます。

その間、日本経済の状況が悪くなれば金利引き下げを選択するかもしれません。数十年にわたって金利が上がり続けるという状況は可能性として低いと見ていますので、私は変動型を選択しています。

もちろん、これは私個人の考えですし、1年後、日本経済の状況が変化していれば、当然ながら考えはガラッと変わります。経済状況やご自身のリスク許容度などを理解し、シミュレーションを立てておけば、「将来に対する漠然とした不安」は小さくなるはずです。まず契約時の契約書を確認し、よくわからない点は契約した金融機関に聞いておきましょう。

文:田代 昌之(金融文筆家)

新光証券(現みずほ証券)やシティバンクなどを経て金融情報会社に入社。アナリスト業務やコンプライアンス業務、グループの暗号資産交換業者や証券会社の取締役に従事し、2024年よりフリー。ラジオNIKKEIでパーソナリティを務めている。
(文:田代 昌之(金融文筆家))

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください