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猛暑の中、奔走する「宅配ドライバー」のリアル!1日3回は着替える、歩行距離はゴルフ18ホールと同じ!?

オールアバウト / 2024年8月22日 21時50分

猛暑の中、奔走する「宅配ドライバー」のリアル!1日3回は着替える、歩行距離はゴルフ18ホールと同じ!?

わずかな時間でも日陰に逃げ込みたくなるほどの猛暑。そんな中でも時間指定で荷物を配達してくれる人たちがいます。額に玉のような汗を浮かべ一生懸命に駆け巡る宅配ドライバーは「街のアスリート」と言えるかもしれません。そんな彼らのリアルに迫りました。

奇抜な開会式で注目を浴びたパリ五輪2024。現地では熱い戦いが繰り広げられました。一方、足元の日本では「物流の2024年問題」が世間の注目が集めています。

酷暑が続く日本では、体温を上回るほどの気温が続いていて、もはや熱帯ともいえる日本の夏。信号待ちのわずかな時間ですら、電柱の影に駆け込みたくなるほど、その暑さは尋常ではありません。

そんな中、時間指定で家の前まで荷物を届けてくれる人たちがいます。玉のような汗を額に浮かべ、荷物をしっかり届けてくれる物流のプロたち。台車を押しながら街を行く「宅配便ドライバー」の姿を見ながら、ふと浮かんだ言葉が「物流業界のアスリート」でした。

「宅配ドライバーの人たちは、一体1日にどれだけの距離を歩き、走っているのだろうか?」、そんな興味を覚え、実際にお話を伺ってみました。物流の担い手不足が懸念されるなか、私たちの便利な生活を支えてくれている人たちの姿に迫ります。

サラリーマンから宅配ドライバーに転身し26年

お話を聞いたのは大手宅配便の会社に務めるドライバーAさん(仮名)です。会社名とお名前を出さないことを前提にインタビューすることができました。Aさんは50代半ばとはいえ、細身の体は引き締まり、日焼けした二の腕には力こぶが盛り上がっています。

「28歳のときにサラリーマンを辞めて、今の会社に転職しました。宅配ドライバーになって26年です。いっときは資金を貯めて一旗揚げることも考えましたが、そうこうしているうちに50代半ばになってしまいました」

現在、日本のトラック輸送の担い手は高齢化が進んでいます。トラックドライバーの45.2%が40歳~54歳であり、29歳までの若年層は10.1%となっています(※)。

また、なり手も減少中。EC市場が拡大し荷物の量が増加する中、物流の担い手の不足によってこれまでと同じサービスの維持が困難になる“物流クライシス”が叫ばれています。トラックドライバーの残業時間が年間960時間に制限されることによって起こる物流の2024年問題は、私たちの生活にも影響を及ぼす課題です。

まずはAさんに宅配ドライバーのキャリアについてお聞きしました。

「都心部の支店で、法人向けの配送や集荷からスタートしました。東京都中央区日本橋や人形町が担当エリアでした。アパレル関係の会社が多かったので、原反(げんたん:加工前のロール上の布地)などを運んでいましたね。その後、湾岸エリアの支店で企業やタワマンの配送を担当しました。現在は新宿区の一部が担当です」

ひとくちに宅配便といっても、担当エリアによって配送先や集荷先の状況はさまざまです。企業が集積する地域、タワマンが林立するエリア、住宅街などによって配送のコツも異なります。

細心の注意を払ってトラックを運転

続いてAさんの日常の業務についてお聞きしました。

「支店には午前7時45分~8時の間に出勤します。その後、メールや連絡事項の確認、荷物の積み込みなどをしてから出発。運転するトラックは常温に加えて冷蔵の荷物も運べます。

支店から担当する配送エリアまでの移動は約1時間。大体午前10時前後に配送エリアに到着後、配送スタートです。担当エリアには、商店や戸建ての一般住宅、単身者用のマンションなどが混在しています。数は少ないですがタワーマンションも建っています」

Aさんの担当エリアは、表通りを一歩内側に入ると、細い路地や行き止まり、一方通行の道路が入り組んでいます。加えて坂道や階段も多くあり、配送も一筋縄では行きません。

「トラックを街の内側まで乗り入れることが難しいので、基本的に表通り沿いにトラックを停めて、台車を使って配送しています。トラックを乗り入れるときは細心の注意を払って運転します。小学校があるので、制限スピード以下で走行するようにしたり、住宅街にエンジン音が響かないように、できる限り静かに走行したりするようにしています」

配送を終えて、担当エリアを後にするのは18時頃。約1時間かけて支店まで戻ります。

時間指定で夜も配送があるときは20時、21時まで担当エリアにいることも。支店に戻ってからも作業は続きます。荷卸しをしたり保冷材を保管場所に戻したり。代引きで回収した売上金を入集金機でカウントする作業もあるそうです。特に五十日(ごとうび)や月末は処理が集中し時間がかかるそうです。

宅配ドライバーが扱う荷物の数と重さは

都心部の支店にいたときは、1日当たり400個~500個もの荷物を配送していたAさん。配送に加え、集荷する荷物も約500個もあるそうです。配送と集荷を合わせて1日に約1000個も荷物を扱っていたんだとか。

今のエリアではそれでも1日当たり約300個の荷物を配送。10時からスタートして30分で30個は配送を完了させるそうです。筆者にはとてもじゃないですができません。経験豊富な物流のプロの配送スピードには脱帽です。

一方、荷物は軽いものから重いものまでさまざまです。重量級は45kgもある冷蔵庫。エレベーターがない古い共同住宅では、階段を使って5階まで運び上げたこともあるそう。

「卒業式や入学式、入社や異動のシーズンの3月~4月はこうした重量級の配送が増えますね。ちなみに冷蔵庫と洗濯機はセットで配送することが多いです。1人暮らしを始めるとき、一緒に購入する人が多いからなんですよ。

重いといえば、ウォーターサーバーの水も重いですね。12L入りのコンテナを台車に重ねて運びます。重いときは120kg以上になるでしょうか……」 

重い台車を押しながら、坂道では足を踏ん張って上るため、Aさんのふくらはぎには筋肉が浮き出ています。仕事とはいえ宅配ドライバーの運動量は筋トレ並みではないでしょうか。時間を守り駆け足で届けてくれる宅配ドライバーの人たちは、まさに“街のアスリート”なのかもしれません。

歩行距離はゴルフで18ホールを回るのとほぼ同じ

そこで、Aさんに1日に歩いた(走った)距離を万歩計でカウントしてもらうことにしました。使用した万歩計は歩幅も登録できるので、歩数×歩幅で歩行距離を算出できます。

多少の誤差はあるでしょうが、およその1日の歩行距離が分かりそうです。巻き尺で測ったAさんの歩幅は約40cm。万歩計に登録し2日間にわたってカウントしてもらいました。

測定開始は支店を出発後、担当の配送エリアに到着してから。終了は配送が完了した時点としました。担当エリア内のトラック移動は含まれてしまいますが、支店と配送エリア間のトラック乗車中の時間は除いてもらいました。

1日目の歩数

1日目の歩数
1日目の歩数が2万4294歩、歩行距離は9.7km。なお、1日目の万歩計の画像表示は2万5594歩になっていますが、配送エリアまでのトラック移動時の振動が1300歩分がカウントされてしまったそうなので、この分をマイナスしています。

2日目の歩数

2日目の歩数
2日目は2万5279歩、歩行距離は10.1kmでした。

健康のために1日に1万歩くことが理想的といわれるなか、宅配ドライバーのAさんはその倍以上を歩いていました。

ちなみに、ゴルフで18ホールを回ったときの直線距離は5.6kmといわれています。実際には蛇行しながら歩くので、現実的な歩行距離は10km前後だそうです。Aさんは18ホールを回るのとほぼ同じ距離を毎日歩いていることになりました。

歩くだけではなく、ときには重い台車を押しながら坂道を上ることも。これだけの運動量を26年も続けていれば、筋肉質の身体を維持していることにも納得です。

宅配ドライバーの暑さ対策

一方、常軌を逸する暑さのなか、宅配ドライバーの人たちはどのような暑さ対策をしているのでしょうか。Aさんにお聞きしました。

「できる限り、体を冷やし熱を逃すようにしています。先輩社員から教わったことは、熱がこもりやすい3カ所を冷やすこと。脇の下、首、鼠蹊(そけい)部です。脇の下や鼠蹊部に冷えたペットボトルをあてたり、上着を脱いで両手を伸ばして万歳をするようにしています。

水分は1日に2Lのペットボトル1本と500mlのペットボトル2本の水を飲んでいます。4L以上を飲むことはないですね。これ以上飲むと、体が飲み過ぎを感じて逆に体を冷やしてしまうので。

あと、汗をかいたらこまめにタオルで拭くようにしています。夏の間はユニフォームを1日3回は着替えます。ユニフォームは8着ほど持っているので、洗濯しながらローテーションさせています」

清潔感が第一とAさんは話します。集荷した荷物を下ろすため営業所に一度戻るときは、シャワーを浴びて下着も全部着替えることもあるそうです。昼食後には歯磨きをして、常に清潔でいるように意識しているそうです。

「お客さまから信頼感を得るのは身だしなみからなんです。清潔感はお客さまと信頼関係を築くために必要な第一歩だと思っています」

暑い最中でも便利な生活を支えてくれている宅配ドライバー。改めて感謝しなければならないと強く思いました。

【この記事の筆者:蜂巣 稔】
物流ライター。外資系コンピューター会社で金融機関・シンクタンク向けの営業、輸出入、国内物流を担当。その後2002年から日本コカ・コーラにて供給計画、在庫適正化、物流オペレーションの最適化などSCM業務に18年以上従事。2021年に独立。実務経験を生かしライターとしてさまざまなメディアで活躍中。物流、ビジネス全般、DXやAIなどテクノロジー領域が中心。通関士試験合格、グリーンロジスティクス管理士。

 <参考>
※国土交通省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
(文:蜂巣 稔)

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