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「2024年夏に見てよかった邦画ランキング」を作ってみた。江口のりこの演技、インディーズ映画がすごい

オールアバウト / 2024年8月22日 20時35分

「2024年夏に見てよかった邦画ランキング」を作ってみた。江口のりこの演技、インディーズ映画がすごい

2024年夏に公開された、またはこれから公開される邦画(日本実写映画)から、心から感動した、見てよかったと思えたベスト5を発表しましょう!(サムネイル画像出典:『愛に乱暴』より(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会)

アニメ映画、洋画に続き、公開中またはこれから公開される、2024年夏に見てよかった邦画(日本実写映画)ランキングから、トップ5の作品を紹介します!ホラー映画7選で紹介した『Chime』(公開中)と『サユリ』(8月23日公開)も年間ベスト級の傑作ですので、そちらもぜひ併せてチェックを!

5位:『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』(8月9日より公開中)


主人公は憧れの作家を見つけるために新聞部へ潜入し、見習い記者として活動する女子高生。内容はザ・エンタメで、「憧れの作家は誰?」というミステリー要素を前提に、初めての仕事でコツをつかんだり戸惑ったりする「仕事映画」の魅力を備え、学園の理事長からの理不尽な圧力を受けても反撃の道を探すという、「巨悪に立ち向かう」痛快さも備えています。

それでいて、タッグを組む部長からは「手に入れた事実には、公正な視点でメスを入れていく」といった真っ当な教えを受ける一方、「証拠をつかむまでは、ターゲットに徹底的に食らいつき離さない」といった強引な取材方針に危機感を覚え、そのやり口が時に「詐欺師に近い」とまで評されるなど、ジャーナリズムをむやみやたらに肯定せず、職業倫理的な問題を指摘するバランスも誠実に思えました。

荒唐無稽ともいえるフィクションではある一方、原案となっているのは、日本大学藝術学部・映画学科に在籍中だった高校生が、当時世間を騒がせていたアメフト界の“悪質タックル問題”と、母校の不祥事から着想を得て作成した企画書だったのだそうです。若者が現実を見据えて、確かな意志を持ち奔走する記者へのリスペクトを掲げた物語を提示したという事実にも、尊さを感じます。

4位:『マンガ家、堀マモル』(8月30日より公開)


シンガーソングライターのsetaが原作を務めた作品で、新人賞を獲得するもののスランプに陥って描くものがなくなってしまった漫画家の前に、小学生、中学生、高校生の3人の幽霊が現れ、「漫画を描かせてあげる」と告げられる物語です。その幽霊から語られる3つのエピソードが愛おしいですし、それぞれの過去にあるモヤモヤや後悔を漫画で表現し、「癒していく」ような優しさが、さらに大きな物語につながっていく様にとてつもない魅力を感じました。

漫画家を主人公としていて、さらに「かつて一緒に漫画を描いていた大切な人」に思いをはせる姿などから、現在も公開中の『ルックバック』を連想する人も多いかもしれませんが、本編における「創作に込められた意志(意思)」を肯定する物語を踏まえれば、「もう1つの『ルックバック』だ!」とさえ思えました。もちろん偶然の一致なのでしょうが、創作物を生み出す人の尊さを真摯(しんし)に示した作品が、連続して世に送り出されたことそのものが、とてもうれしく思えます。

ドラマ『君の花になる』(TBS系)で人気を博した山下幸輝が主演を務めており、真面目な好青年であると共に、少し憂いを感じさせる存在感も素晴らしかったです。中盤から終盤にかけての演出も巧みで、映画としての表現の大胆さと工夫にも感動がありました。原作者のseta自らが書き下ろして歌った主題歌と、槇原敬之が主人公の心情に寄り添った目線で歌詞を書いたと語るエンディングテーマにも聞き入ってほしいです。

3位:『愛に乱暴』(8月30日より公開)


吉田修一の同名小説を原作としたサスペンスで、実家の離れで暮らす石けん教室の講師である女性の日常が、近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火、愛猫の失踪、不気味な不倫アカウント……といった、忍び寄る不穏な要素のために次第に乱れ始めていく様子が描かれます。加えて、義母からの“押し付け”や、夫の“無関心”といったストレスも、彼女の精神にじわじわと影響を与えていくのです。

 (C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会
そう書くと重い内容に思われるかもしれませんが、表向きには「普通の妻」として務めているようで、裏では小さな不満を積み重ねていく主人公に感情移入しやすいですし、あまりに理不尽な事態を目の当たりにして、極端に怒りをあらわにする姿には、「そりゃ怒るよ」と納得できるとともに、「かわいそうだけど笑ってしまう」ダークコメディーの領域に達しています。全編に漂う不穏さはホラー的で怖くもありますし、「次に何が起こるのか分からない」予測不能の展開の数々はエンタメ性も抜群で、終盤には意外な感動も待ち受けていました。

 (C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会
そして、最も推さなければならないのは、主演の江口のりこが持てるポテンシャルを最大限に発揮していること。突飛な行動に出てしまう姿が怖くもある一方で同情もでき、どこか悲しげで切なくも思える感情表現も最高で、俳優としてのパワーを全力で見せつけられたようでした。極め付けは江口のりこが「あるもの」を持ち出した時の絵面のインパクトで、もはやいい意味で夢に出てきそうです。「あるもの」は予告編でも見ることができますが、知らずに見て楽しみにしておくのもいいでしょう。

2位:『ブルーピリオド』(8月9日より公開中)


山口つばさによる同名漫画の実写映画化作品。ソツなく器用に日々を過ごしている一方で内面では「空虚さ」を抱えていた主人公が、美術の課題である「明け方の青い渋谷」を描いたことをきっかけに美術へのめり込み、超難関の東京藝術大学絵画科の受験に挑むという物語です。内容としては「王道スポ根もの」でもあり、絵画を学ぶ過程での「知らない世界をのぞき見る」感覚も面白く見られるでしょう。

主人公は「俺はやっぱり天才にはなれない。だったら天才と見分けがつかなくなるくらいまでやるしかない」と尋常ではない努力をしつつ、「俺の絵で、全員殺す」とまで考える狂気に片足を突っ込むも、受験では冷静かつ大胆な「戦略」で勝利を目指すという過程がエンターテインメントになっています。原作からの省略には賛否もありましたが、個人的には主人公の物語に焦点を絞った取捨選択は的確だと思えましたし、8月30日公開のアニメ映画『きみの色』でも発揮された吉田玲子のロジカルな脚本の構築力に感服しました。

ちなみに、『愛に乱暴』で石けん教室の講師だった江口のりこは、この『ブルーピリオド』では美術予備校の講師となっています。厳しいようで優しさも多分に感じさせる、その言葉の1つひとつに重みがあることも魅力的です。さらに、江口のりこは、4月公開の『あまろっく』で無職の女性を、7月公開の『お母さんが一緒』では妹2人に嫉妬を募らせる姉役を演じ、現在も公開中の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』では北条政子に扮(ふん)するなど、2024年公開の映画で大活躍していました。江口のりこの魅力を再確認できる年だったといえるでしょう。

1位:『侍タイムスリッパー』(8月17日より池袋シネマ・ロサで公開中)


現在は池袋シネマ・ロサのみで公開中という限定的な公開でありながら、上映開始すぐにSNSで絶賛の声が続々と届き、レビューサイトでも映画.comで4.7点、Filmarksで4.2点(いずれも執筆時点)とハイスコアを記録しているインディーズ映画です。

公式Webサイトのイントロダクションには「『自主映画で時代劇を撮る』という無謀」「初号完成時の監督の銀行預金は7000円と少し。『地獄を見た』と語った」などとつづられていることからも応援したくなりますし、実際の本編に「インディーズ映画にしては頑張っているよね」などとゲタを履かせる必要はありません。安っぽさは全くなく、劇中の殺陣(たて)も本格的で、続きが気になり、俳優たちみんなが熱演しているキャラクターみんなが愛おしいなど、心から「超面白い!」と思える内容になっていたのですから。

内容は「幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップして“斬られ役”になる」という分かりやすいもので、『テルマエ・ロマエ』のように現代のテクノロジーや文化に戸惑いながらも感動する「ギャップもの」の魅力もふんだんに盛り込まれています。特に、「テレビを見た時のリアクション」は、ギャップものの作品の中で一番面白いのではないでしょうか。実直な主人公が斬られ役に挑む、こちらも「仕事映画」の魅力がたっぷりですし、一方で“斜陽”になっている時代劇の事情も踏まえると、時代劇への愛情がたっぷり込められていることにも感動があるのです。

攻めているのは、ある種の「正しくなさ」を前提としたクライマックスで、(劇中でもその言及があるとはいえ)賛否を呼ぶポイントでもあるでしょう。しかし、それでもなお「こうしなければならなかった」感情もまた本作には重要なのだと、振り返って思うこともできました。5月に公開された『碁盤斬り』がそうだったように、「かわいいおじさんたちの友情」という要素を期待する人にも大推薦です。8月30日より川崎の映画館・チネチッタでの上映開始も決まっていますし、さらなる拡大上映も期待しています。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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