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宅配ドライバーに聞いた苦労と思い…日本人が好きな時間帯「土曜日午前着」に頭を悩ませている深いワケ

オールアバウト / 2024年8月23日 21時50分

宅配ドライバーに聞いた苦労と思い…日本人が好きな時間帯「土曜日午前着」に頭を悩ませている深いワケ

頼んだ荷物を時間指定で家の前に届けてくれる「宅配ドライバー」。猛暑日でもゲリラ豪雨の中でも配送してくれる彼らはどんな苦労や思いを抱えているのでしょうか。今回は宅配ドライバー歴26年のAさんにお話を聞きました。

酷暑が続く日本では、体温を上回るほどの気温が続いています。もはや熱帯ともいえる日本の夏。信号待ちのわずかな時間ですら、電柱の影に駆け込みたくなるほどです。

そんな中、時間指定で家の前まで荷物を届けてくれる人たちがいます。玉のような汗を額に浮かべ、荷物をしっかり届けてくれる物流のプロたち。台車を押しながら街を駆け巡る宅配便ドライバーの姿はまさに「街のアスリート」と言えそうです。

今回は宅配ドライバーの苦労や思いについて、宅配ドライバー歴26年のAさん(仮名)に聞きました。

宅配は晴れの日だけではなくて

配送や集荷の仕事は、晴れた日だけではありません。最近ではゲリラ豪雨も頻繁に発生します。こうした雨に、どのような対応をしているのでしょうか。

「まずは荷物をぬらさないようにすることが第一です。荷物をビニールシートで覆い、透明のテープで目張りして隙間から水が入り込まないようにします。ちなみに祖母から教わった教訓は今でも生きています。『雨が降り出す30分前には、生温かい風が吹いてくる』と(笑)。そんな風を感じたときは荷物をぬれないようにカバーして、急いで長靴に履き替えます」

荷物のぬれ対策には、お客さまに対応してもらえるとうれしいことがあるそう。A4などの封筒大のパッケージで書類を送るときは、クリアフォルダーに入れて厚紙を同封すると、書類が折れ曲がったり水にぬれたりすることを防げるそう。

問題なく届けることは宅配会社の責任でありながら、荷物の受け取り側への気遣いがクレームを減らすことにもなるそうです。

「置き配が当たり前になると助かるのですが……」

物流の2024年問題では「再配達」が頭の痛い課題です。配送に行っても不在によって荷物を渡せないとなると、配送効率を下げてしまうのです。

「再配達を行う場合、道路事情で時間がかかってしまいます。例えば、一方通行が多いエリアでは、街の外周の大通りを一周してから元の場所に戻ることになります。場所にもよりますが、そうなった場合は1件再配達するのに20分近くかかってしまうこともあります。

夜の時間指定の配送も変化しました。コロナ禍が落ち着いたあと、残業する人たちが増えたように思います。コロナ中の夜間の時間指定の配送は18時~20時が多かったのですが、最近では19時~21時の時間帯が増えました。

一方で、こうした時間帯に受け取れない場合は土曜日午前中の再配達に変更されることが多いです。また、故郷の親御さんもこの時間帯を指定されることが多いのです。土曜日午前着は日本人が好きな時間帯なのかもしれません」

一方、配送側の担い手不足で、土曜日の配送はタイトになりがちだと言います。「あらかじめ送り手側と受け手側で配送時間のすり合わせができていたり、指定した場所に非対面で届けられる置き配が当たり前になると助かるのですが……」と、Aさんは話します。

インターホンが壊れていたり、不具合のまま放置されていたりする寮やマンションは意外にも多く、再配達の原因になるそうです。こうした不具合があると、在宅でもつながらず、玄関のオートロックを開けてもらうことができません。

荷物を届けられないため、再配達が繰り返されてしまいます。物流の2024年問題の解決には物流会社の努力だけではなく、街の人たちの協力も必要と言えそうです。

宅配ドライバー泣かせのタワマンあるある

タワーマンション(以下、タワマン)では垂直方向の移動があります。一般的にタワマンとは20階以上の超高層マンションを指しますが、50階前後の超高層タワマンの配送には人知れぬ苦労があるそうです。

「超高層のタワマンは宅配ドライバー泣かせで……。宅配業者は搬送用のエレベーターを使用するように言われますが、そもそも台数が少ないことに加え、各階に止まる各駅停車。低層階、中層階、高層階用と分かれておらず、途中の階をすっ飛ばせないので、上下の移動にとにかく時間がかかります。

ゴミ収集の時間と重なると、各階でゴミを収集した台車が乗ってきます。さらに住民の人たちが搬出入用のエレベータに乗ってくることも。こちらも台車に荷物を積み上げているので、乗り込めないことがあるんです。次のエレベーターが来るまで見送ることになるので、垂直方向のお届けはとかく時間がかかってしまって」

さらにタワマン特有の構造にも苦労するポイントがあるそうです。

「ポストボックスが正面玄関の周辺になく、建物を周り込んだ裏側にあるタワマンもありますね。ぐるぐる回りながら、外装と同化して擬態したメールルームを探すのには苦労します(笑)」

ほっこり。不覚にも涙が込み上げてきた

さまざまな苦労をしながらも、うれしいこともあるそうです。Aさんが振り返ってくれました。

「以前のお届け先の息子さんにバッタリ再会したことがありました。私が湾岸エリアを担当していた当時はかわいいお子さんでしたが、立派に成長されていました。

『ええっ! どうしたの? 今、何しているの?』とびっくりです。『僕、西新宿に勤務先があるんです』。高層ビルに勤めているしっかりした彼の声を聞いていたら、不覚にも涙が込み上げてきてしまいました」

さらに、こんなエピソードも話してくれました。

「いつも配送するお客さまのお宅には、臨月の奥さまがいらっしゃいました。あるとき、近くを配送していたら、外出中の奥さまが道端にうずくまっていたんです。陣痛が始まっていました。『何かあったらいつでも連絡するから』とご主人には、あらかじめ伝えていたので、急いで彼の携帯に連絡しました。

その後タクシーを呼びに行きました。客待ちタクシーの待機場所が近くにあることを知っていたので、トラックの運転席に飛び乗るとそこまで急行しました。『今にも赤ちゃんが生まれそうな女性がいるんだ。すぐに病院へ連れて行ってくれないか』と。

顔なじみのタクシードライバーに頼むと『分かった! すぐに行く!』と二つ返事で応えてくれました」

タクシードライバーが女性を病院まで届けてくれて、その女性は無事にお子さんを出産されたそうです。

顔なじみになることのメリット

毎日のように同じルートや決まった時間帯で配送していると、街の人とも顔なじみになり、街の変化や違和感にも気付くようになると、Aさんは話します。

「あいさつをして世間話をしながら配送していると、不審者も街に近づきにくくなるのではないでしょうか。間接的に街の防犯にもつながっていると思います」

宅配用のトラックの後部に、歌舞伎の目のような鋭いまなざしのステッカーが貼ってあることがあります。これは日常の仕事をしながら子どもや高齢者を見守る「ながら見守り」という事業です。自治体と地域を車で巡回する事業者が連携することで、防犯や事故を未然に防ぐ取り組みです。

筆者は当初「こんなステッカーが役に立つのだろうか」と思っていたのですが、Aさんのお話を聞いて、トラック後部のステッカーが、決してはったりではないことを知りました。

「遅い、早く届けてよ!」から「この時間なら融通が利くよ」へ

Aさんは、お客さまから「大変でしょう」と言われることが、信頼関係のスタートだと話します。

「『大変でしょう』と言われても『いや、そんなことはありませんよ」と、答えますけどね(笑)。常々考えていることは、お客さまや取引先に迷惑をかけない、仲間を大切にすること。三方よしでなければ、万事うまくいかないと思っています」

信頼関係ができると、配送側の事情を理解してもらうことにもつながるのではないでしょうか。「遅い、早く届けてよ!」から「この時間なら融通が利くよ」となるのかもしれません。

少子高齢化で人口が減少していく日本。宅配ドライバーの担い手の減少が課題となっている物流の2024年問題ではさまざまな取り組みがなされています。一方で「お互いさま」の気持ちを持つことが解決策の1つになるのではないでしょうか。

【この記事の筆者:蜂巣 稔】
物流ライター。外資系コンピューター会社で金融機関・シンクタンク向けの営業、輸出入、国内物流を担当。その後2002年から日本コカ・コーラにて供給計画、在庫適正化、物流オペレーションの最適化などSCM業務に18年以上従事。2021年に独立。実務経験を生かしライターとしてさまざまなメディアで活躍中。物流、ビジネス全般、DXやAIなどテクノロジー領域が中心。通関士試験合格、グリーンロジスティクス管理士。
(文:蜂巣 稔)

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