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ペーパーテスト一発勝負“万能説”に異論! 不公平感漂う「内申点」や「学校格差」の意外な事実

オールアバウト / 2024年8月27日 21時50分

ペーパーテスト一発勝負“万能説”に異論! 不公平感漂う「内申点」や「学校格差」の意外な事実

2学期が始まれば、1カ月もしないうちに中間考査がやってきます。保護者にとって最大の関心事「内申点」の実態について、教育系インフルエンサーとして首都圏の受験情報の発信する東田高志(東京高校受験主義)先生に聞いてみました。

夏休みが終わり2学期が始まると、1カ月もしないうちに中間考査がやってきます。保護者も「内申点」に関するうわさ話の真偽に振り回されてモヤモヤしてばかりはいられません。

そこで今回、X(旧Twitter)で4万人以上のフォロワーを抱える教育系インフルエンサーとして首都圏の受験情報の発信をしている東田高志(東京高校受験主義)先生に、公立中学校の内申点の仕組みや最新情報を聞きました。

親世代と大きく異なる、現在の「内申点」

内申点制度は、2002年に「相対評価」から「絶対評価」へ変わりました。親世代の「相対評価」時代は、評定5の割合が全体の7%と定められていました。この当時と比べると、現在はかなり「健全度」が増していると東田先生は考察しています。

「相対評価時代、学力レベルの高い学校では評定5が取りづらかったので、『内申点は不公平なもの』という根強いイメージを持っている親世代も多いかもしれません。現在の絶対評価では、各学校が子どもの学力や努力に応じて評定をつけられるようになっています」

親世代との違いはもうひとつあるそうです。それが高校受験における「内申点の比率」です。

「昔と比べて入試における内申点の比率が下がっている傾向にあります。例えば優秀層が志願する都立難関校では共通問題では得点差がつきづらいため、『自主作成問題』と呼ばれる独特の入試問題を課します。平均点が5割や6割にとどまる難問も多く、かなりの得点差がつきます。

つまり、オール4とオール5の内申の差は、筆記試験の得点次第で簡単に埋まるということ。神奈川県では『特色検査』を導入しており、これも東京都と同様に難問です。当日の筆記試験の重要度が増しているのは、全国共通の傾向と言えます」

「学校格差」や「内申点が甘い学校」は存在する

【図1】文京区の内申分布 出典:『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』
内申格差が大きく、理不尽な要素が多かった親世代と比較して、現在は「格差がない」と言えるのでしょうか。

「公立中学校の学力レベルには【図1】の通り、かなり大きな差があります。トップ校に合格する子が20人の学校と、1人もいない学校では、当然、学校そのものの学力レベルが異なるため、評定5の割合も違ってきます。

東京都は、約600ある公立中学校の評定を公表していますが、評定5の割合が全校生徒の30%にのぼる学校がある一方で、5%にとどまる学校もあります。

これが『評定の格差だ!』と議論になることがあるわけですが、優秀な子が多い学校で評定5の割合が多くなるのは当然ですよね。こうした意味での学校格差は存在します。しかし、相対評価時代と比較するといわゆる『内申格差』は少なくなっています」

「学校格差」も「内申点が取りやすい学校・取りづらい学校」も存在するという結論。つまり、学力レベルの高い子どもが多く通う学校の評定が高くなる仕組みであり、「あの学校は内申が甘い」といったうわさ話には惑わされないのが賢明なようです。

絶対評価の「オール4」は普通か優秀か?

【図2】相対評価(過去)と絶対評価(現在)の内申点分布 出典:『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』
絶対評価によって格差や理不尽が改善され、妥当な評価がつけられるようになったことはわかりましたが、一方で、「最近のオール4は普通」という説もよく耳にします。相対評価時代にはとることが難しかった「オール4」「オール5」が取りやすくなった、ということなのでしょうか。

「絶対評価に移行してから、評定4や5の割合は明らかに上昇している傾向にあります。全体的に内申点の平均が上がっており、我々は『内申インフレ』と呼んでいます。

「オール4なら優秀」「オール3で普通」という相対評価時代のイメージを引きずっている保護者は、受験直前に慌てることがないよう認識を改めておくことをおすすめします」

東田先生によると、現在の評定イメージは、
「5:優秀~少し優秀」
「4:普通」
「3:学力に不安あり」
「2:学力にかなり不安あり」

となるそうです。

高校受験より「評定格差」が大きいのは……!?

多くの保護者が高校受験の内申点に非常に敏感ですが、実は、大学受験こそ評定格差が大きいと東田先生は指摘します。

「現在は、多くの大学で総合型選抜や公募型選抜と呼ばれる入試の割合が増加していますが、これこそ評定基準への依存度が高いものです。偏差値65と偏差値45の高校とを比べたとき、評定5を取りやすいのは偏差値45の学校。高校の難易度に関わらず、大学側は数値通りに評価します。

偏差値の高い大学に入ることを目的にするのならば、なるべく偏差値の低い高校に行くほうが“おトク”なのでは? という矛盾も生じてきますよね」

こうした矛盾が存在しながらも総合型選抜などが拡大している背景として、評定を活用した入試を妥当と考える流れがあるのでしょうか。

「かつては『試験一発勝負』万能説のような考えが蔓延(まんえん)していましたが、現場の我々から見ると、やはり不公平さを感じます。今でも試験一発勝負を採用している中学入試が、むしろ特殊なのかもしれません。別の問題で入試を行ったら合格者の半分が入れ替わると言われていますよね。

日頃の努力を評価してもらえる内申制度を活用すれば、子どもたちそれぞれが本来持っている実力にもっとも近く、学力格差のない学校に進学できる可能性が高いですから」

内申点に関する知識があいまいであるがゆえに、子どもが学校から適切に評価されているかわからず不安を抱える保護者は多いかもしれません。そして、受験当日の筆記試験だけで合否を決定する入試こそが公平であると考えがちです。

東田先生が教えてくれた内申点の仕組みをしっかりと理解できれば、それが実は子どもたちにとっても必要なシステムだとポジティブに受け止められそうですね。

東京高校受験主義(東田高志)プロフィール

Xで4万6000フォロワー(2024年7月現在)がいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20年のキャリアを持つ塾講師。長年、学校と塾の変化を見続け、小中学生を教えてきた。おもに首都圏を中心とした教育ウォッチャーでもある。フィールドワークとして都内各地の公立中学校や都立高校を訪問、区議会議員とのコラボイベントも開催している。
(文:東京高校受験主義(東田高志))

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