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公立中の「内申点」につきまとう不公平感の一方で、子ども自身が「内申点制度」を希望する理由

オールアバウト / 2024年8月28日 21時15分

公立中の「内申点」につきまとう不公平感の一方で、子ども自身が「内申点制度」を希望する理由

公立中学校の「内申点」についてのネガティブなうわさ話の真偽を、内申点や高校受験に詳しい教育系インフルエンサーに質問!

通学区域の公立中学校は「内申点が取りづらいらしい」「中学受験するしかないのか……」など、高校受験の内申点問題にはネガティブな印象を持つ保護者も少なくありません。

そこで、教育系インフルエンサーとして首都圏の受験情報の発信をしている東田高志(高校受験主義)先生に「内申点」にまつわる不安や疑問を聞いてみました。

意外? 内申点はオープンで「透明性」が高い

「絶対評価によって内申バブルが起きている」との話ですが、評定5の割合に制限がなければ、先生が自由に5をつけることができます。つまり先生の主観に左右されることはないのでしょうか。

「先生も人間ですから、5の基準が高い先生・低い先生など多少の誤差は存在すると思います。実際のところ、ほとんどの先生は評価基準に照らし合わせて点数をつけています。しかも、全教科とも特別に厳しい(甘い)先生になることはありえません。

公立中学校では、主要5教科(英語、数学、国語、理科、社会)と実技4教科(音楽、美術、保健体育、技術・家庭)を担当する9人の先生がそれぞれ評価することで“ブレ”を減らし、客観性を担保しています。仮に多少の“ブレ”があったとしても、9教科の評価を合計することで結果的に妥当な内申点になる仕組みといえます。

年度初めに、中学校は評価基準の詳細資料を配布して保護者や子どもに情報をオープンにしているので、あらためて配布物の確認をおすすめします」

内申点は「正当な努力」で獲得できる

【図1】観点別評価 出典:『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』
内申点はシンプルな5段階評価に見えて、実は詳細な評価基準が存在し、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3つの観点が設定されています。

各種テストでは、総得点ではなく、知識系問題・思考系問題それぞれの到達度を観点別に細かく評価。「主体的に学習に取り組む態度」で評価対象となるのは、定期テストに加え、提出物、振り返りシート、発表活動が含まれます。

「正当な努力」をすることで、妥当な評定を獲得できる仕組みになっているのが現在の内申点の評価基準ですが、これまでの評定に疑問がある場合はどうすればよいのでしょうか。

「評定に納得がいかないときは、教科担当の先生に相談すると良いでしょう。ポイントは、評定が出た当日ではなく後日に“正当な面談”の形をとること。また感情的に訴えるのではなく、どうすれば評定を上げることができるのか相談することです。評価の根拠を提示し、適切なフィードバックをもらえるはずです」

「内申点」制度を望むのは意外にも子ども自身

昨今の高校受験において筆記試験の比重が高まり、逆に内申点の比重は下がる傾向があるなかで、そもそも内申点制度は必要なのでしょうか。先生にとって管理しやすいなど、学校側の事情によるところが大きいのでしょうか。

「以前、中学生に対してアンケートを実施したことがあります。中学校の成績を高校受験に含めることに賛成か反対か、というもので、結果は圧倒的に賛成多数でした。多くの子どもたちが、中学校での日常生活をきちんと評価してほしいと考えているんですね。

内申点制度に否定的な“一部の”大人の意見が取り上げられることで、世間も同様な風潮になりがちです。けれども日々多くの中学生と接していると、内申点制度を廃止してほしいと考える中学生はごく少数しかいないと私自身も感じます」

筆記試験での一発勝負よりも、日頃の成績や学習態度を評価してほしいと考える中学生が多数。では、受験の現場にいる東田先生はどのように考えるのでしょうか。

「私は、内申点を活用する入試に賛成です。入試には独特の緊張感があり、合格圏内だった子が思わぬトラブルで不合格になる世界。実力のある子でも、緊張で頭が真っ白になることも珍しい話ではありません。

実力を発揮できず、辛い思いをした子をたくさん見てきました。こうした子どもたちを救ってあげられる仕組みとして、内申点制度が存在している、その理念は妥当だと考えています」

当日の試験一発勝負こそ不公平や理不尽を生みやすいという東田先生の考えは、内申点制度をポジティブにとらえるきっかけになりそうです。

内申点稼ぎに「授業態度」や「挙手回数」は不要?

内申点が入試に活用される仕組みである以上、どうしたら少しでも点数を上げられるかは保護者を含め誰もが悩む部分です。内申点を上げる(下げる)活動や行動について、聞いてみました。

「よく生徒会や部活動が内申点に有利という話が出ますが、都立高校の場合は関係ありません。出席日数、部活動の部長をやった、体育祭のリレー選手、合唱コンクールの指揮者など、いずれも入試にはまったく影響しません。

一方で、埼玉県では生徒会の役職が『特別活動』として入試で加点されることがあるなど、地域差がかなりあります。自分の居住地や志望校の高校受験制度について、意識的に情報収集をしておくことが大切です」

授業中に肘をつく行為や挙手の回数などが内申点に影響するという話がかつて話題になり、こうした指導をしている学習塾があったとも聞きましたが、このあたりにも変化があるようです。

「仕事柄たくさんの中学校を見学していますが、最近は手を挙げさせる授業そのものが減っています。一方、今の学習指導要領になって、プレゼンテーションなど発表型の授業は増えています。人前でしっかりと発表できる力をつけるという意味では、積極的な発言を評価することについて賛成できます」

かつて「関心・意欲・態度」と呼ばれていた観点は、2021年から「主体的に取り組む態度」に変更されました。これにともない、文部科学省は「挙手の回数や、表面的なノートのきれいさ等、性格や行動面の一時的な傾向で評価することは適切ではない」としています。

「内申点のため」ではなく「内申点の意義」を伝える

どうしたら内申点を上げられるのか、という相談に対して、先生はどのような回答をしているのでしょうか。

「子どもたちには、普通に正当な努力を積み重ねていけば、おのずと適切な評価がついてくるという話をしています。特に、先生に媚びて内申点を上げるという考えは子どもにとって悪影響ですから、そういうことはしなくていいと子どもたちには伝えています。

家庭でも、内申点を過剰に意識させる雰囲気は歓迎できません。保護者の皆さんもぜひ『内申点のために』という発言は自粛していただけたらなと思います。せっかくの中学校生活、子どもたち自身が内申点に縛られていては楽しくなくなってしまいますから」

「内申点のため」という言葉の代わりに、保護者は子どもに対して「内申点の意義」を伝えるよう意識するのがおすすめだという東田先生。

「提出物を期限内に出す」ことは「大学や社会に出たときに困らない」し「期限を守れる人は信用される」、また「生徒会に立候補する」ことで「リーダーシップやプレゼン力を身につけられる」など、大人になってからも役立つ力になることを伝えていきたいですね。

東京高校受験主義(東田高志)プロフィール

Xで4万6000フォロワー(2024年7月現在)がいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20年のキャリアを持つ塾講師。長年、学校と塾の変化を見続け、小中学生を教えてきた。おもに首都圏を中心とした教育ウォッチャーでもある。フィールドワークとして都内各地の公立中学校や都立高校を訪問、区議会議員とのコラボイベントも開催している。
(文:東京高校受験主義(東田高志))

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