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国公立大至上主義の「自称進学校」はいよいよ衰退か。公立高校は地域トップ「超進学校」との二極化へ?

オールアバウト / 2024年8月29日 21時50分

国公立大至上主義の「自称進学校」はいよいよ衰退か。公立高校は地域トップ「超進学校」との二極化へ?

今、全国で公立高校離れが加速しています。背景には、少子化や私立高校の授業料無償化だけでなく、“受験勉強離れ”が。遠因は、大学入学共通テストの難化と私立大学を中心に広がる年内入試でした。

大阪府内の公立高校、半数が定員割れに。東京以外でも「私高公低」に?

大阪府では、4月から高校の授業料が段階的に無償化される影響を受けて、2024年度入試では私立高校の志望者が1万9994人と過去最高を更新しました。

一方、公立高校を志望する受験生は減り続け、現行の入試制度が始まった2016年度以降最少に。府内の公立高校145校のうち、半数近い70校が定員割れとなりました(※夜間の定時制と通信制を除く)。

また東京都では、2024年度に定員割れした高校は45校63科となり、前年度より改善したものの今の制度で募集が始まった1994年度以降、過去4番目に悪い数字でした。

「公立王国」として有名な愛知県でも、ここ数年半数近い高校で定員割れが起きており、二次募集の人数は7年前の約4倍の2000人台で推移しています。

少子化により受験生が減っているのだから、定員割れが進むのは仕方ないと思われるかもしれません。しかし公立高校が定員割れする一方で、私立高校は人気なのです。一体何が起こっているのでしょうか。

もちろん私立高校の授業料無償化という国の政策や、自治体独自の取り組みが影響しているのはいうまでもありません。しかしそれ以外にも影響を与えているのが、公立高校と私立高校の受験制度の違いや、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の難化と私立大学を中心に広がる「年内入試」です。

受験勉強離れが加速……。早く進路が決まる私立高校のニーズ高まる

一般的に私立高校の入試は1~2月に、公立高校は2~3月に実施されます。なかでも私立高校の推薦入試は、早い地域であれば1月中にも合格が決まります。

推薦入試自体は以前からありましたが、早くに進路を決めたいという受験生や保護者のニーズは高まっているようです。実際大阪府では、公立高校の試験日程を3月上旬から前倒ししたほうがよいのではないかという意見もあるほどです。

さらに私立高校には、私立大学を中心に広がる「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」などの年内入試を重視した進路指導をする学校が多く見られます。今や私立大学入学者の約6割が一般選抜を経ない推薦組ともいわれています。

なかには、生徒の約9割が年内に大学合格が決まる私立高校もあります。高校受験のボーダー偏差値(合格者と不合格者の割合が半分になる偏差値)が50に満たないにもかかわらず、早慶やMARCH、関関同立といった難関私大に多くの合格者を輩出しているところもあるほどです。

このような状況を「お得」と考え、高校受験でも、大学受験でも早めに進路を決めたいという受験生や保護者がいても不思議ではありません。中学生の間でも高校生の間でも“受験勉強離れ”が進んでいるのです。

「共通テストの難化」が遠因に!? 附属校や指定校推薦に強い私立高校が人気に

背景として無視できないのが、「共通テスト」の難化です。早くから共通テストは避けたいという中高生が目立つようになってきたのです。

マスコミ報道やSNSなどを通して、「共通テストという何やら難しいテストになって、公立の進学校だとあれもこれも勉強しないといけなくて大変だ」ということが、中高生や保護者の間にも浸透しつつあるからです。

そんな風潮もあって人気が衰えないのが、附属校や指定校推薦などにより大学進学できる“受験指導がゆるい私立高校”というわけです。文系なら英語+国語+地歴・公民、理系なら英語+数学+理科など、早い段階から少数科目にしぼった受験指導に特化した高校です。

一方地域トップ校以外の公立高校は受験生に避けられつつあります。なかでも影響を受けているのが「自称進学校」です。

自称進学校とは、国公立大学至上主義のもと、共通テストの「7教科21科目」をまんべんなく学ばせる詰めこみ式の受験指導を行う高校です。ちなみに公立王国の愛知県では、地域2番手の高校(自称進学校)すら定員割れする異例の事態にあります。

「自称進学校」は衰退して、いずれは「進路多様校」に

公立高校のなかでも、東大や京大など難関国公立大に多くの合格者を輩出する地域トップ校は、今後も生き残るでしょう。一方で地方の国公立大を中心に合格実績を“荒稼ぎ”している「自称進学校」は衰退していくと考えられます。

なぜなら、自称進学校の多くは「オール4」くらいの学力層で、地域トップ校に行くほどの学力はない受験生が集まる傾向にあるからです。今このレベルの学力層が、受験指導の厳しい公立の自称進学校に見切りをつけ始めているのです。

このような状況からも、私立高校の授業料無償化のあおりを大きく受けているのは、自称進学校というわけなのです。

以上のように、公立高校の定員割れの背景にはこのような現実があります。今後は自称進学校の多くが崩壊し、「進路多様校」と呼ばれる大学進学組と専門学校進学組、そして就職組が混在する高校へと変化していくと考えられます。

進路多様校は多様な生徒が集まるという良さがある反面、進学組と就職組との間で勉強意欲に大きな隔たりがあるなどの懸念材料もあります。

これからは、このような未来予想図を考えた志望校選びが、ますます重要になるでしょう。

<参考>
「これほどとは…」公立高で70校の定員割れ 激震の大阪府教育庁、私学無償化策の波紋(産経新聞)
都立高一般入試、全日制の最終倍率は1.38倍 定員割れ校数は改善(朝日新聞)
令和6年度入学者選抜の志願状況等(愛知県)
(文:伊藤 敏雄(学習・受験ガイド))

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