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『天空の城ラピュタ』のムスカの演技とは正反対! 俳優・寺田農の魅力が分かる映画5作品

オールアバウト / 2024年8月30日 19時40分

『天空の城ラピュタ』のムスカの演技とは正反対! 俳優・寺田農の魅力が分かる映画5作品

『天空の城ラピュタ』の魅力は数多いですが、その中でも悪役のムスカ大佐は外せません。ここでは、ムスカの声を担当した俳優の寺田農の魅力が分かる映画5作品を紹介しましょう。(※サムネイル画像出典:(C) 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli)

2024年8月30日、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて、宮崎駿監督作『天空の城ラピュタ』が放送されます。

本作の優れたポイントは枚挙にいとまがありませんが、やはり悪役のムスカ大佐は外せません。いんぎん無礼な言動、「見ろ、人がゴミのようだ!」に代表される名言の数々、冒頭からビンで後ろから殴られて気絶する弱さなど、「ネタ」的な意味合いも含めて愛され続けています。

そんなムスカの声を担当したのは俳優の寺田農。3月に肺がんで亡くなり、SNS上などには悼む声が多数寄せられていました。ここでは、その寺田農の魅力が改めて分かる5つの作品を紹介しましょう。いずれもムスカとは対照的なキャラクターおよび演技であることにも注目してほしいのです。

1:『肉弾』(1968年)

数多くの作品に出演した寺田農ですが、主演映画はこの『肉弾』と『ラブホテル』(1985年)と『信虎』(2021年)のみと少なく貴重です。監督は『日本のいちばん長い日』(1967年)などで知られる岡本喜八で、全編に漂うシュールなユーモアが、むしろ戦争のむなしさや悲しさを際立たせる効果を生んでいました。

対戦車の特攻隊員にされた主人公の“あいつ”は、古本屋では両腕のないおじいさん、置屋に行った時は数学を学んでいる少女、砂浜では幼い兄弟とさまざまな人間と出会い、そこには戦争の影がちらつき、やがて「戦争が終わったことを知らないままドラム缶に乗って漂流していている」状況に陥ります。そのさなかでも「生きること」にしがみつこうとする青年を、アップで映された表情で、時には全身全霊で表現した寺田農に圧倒されました。

戦争に翻弄(ほんろう)され続ける純朴な青年である『肉弾』の主人公は、軍人を利用し、王になろうともする傲慢(ごうまん)さもあったムスカとは完全に正反対です。仲代達矢のナレーションで繰り返される「大したことはない」「それだけのことだ」といった諦観(ていかん)に満ちた言葉も切なさも際立ててます。「絶対に忘れられないラスト」まで、ぜひ見届けてほしいです。

2:『里見八犬伝』(1983年)

江戸時代後期に描かれた長編小説『南総里見八犬伝』、その翻案である『新・里見八犬伝』を、『仁義なき戦い』シリーズや『バトル・ロワイアル』(2000年)で知られる深作欣二監督が映画化した作品で、その内容は「チャンバラ活劇」ともいえるエンターテインメント。8人の剣士、活発なお姫様、恐るべき妖怪の女性などの個性的なキャラクター、さらに特撮によるファンタジーの世界観は今でもとても魅力的に見えます。

寺田農が演じる犬村大角は口数こそ少ないですが、学問と武芸に秀でているゆえの冷静沈着なたたずまいや、銃と爆薬を使う立ち回りは強く印象に残ります。仲間であるはずの主人公・犬江親兵衛(真田広之)を疑って銃で撃つという冷酷な判断をしたこともありましたが、和解を経た後の最終決戦での戦いぶりは「壮絶」のひと言。ムスカもまた、シータのおさげを撃つなど銃の名手と思わせるシーンはありましたが、その顛末(てんまつ)や人間としての在り方は正反対といえるでしょう。

なお、『南総里見八犬伝』の作者・曲亭馬琴(滝沢馬琴)と葛飾北斎が交流する“実話”パートと、『南総里見八犬伝』の中の物語を描く“虚構”パートを交錯させて描く映画『八犬伝』も2024年10月25日より公開されます。こちらの公開前に見ておくのも良いでしょう。

3:『学校III』(1998年)

リストラや倒産の憂き目に遭うも、職業訓練校で学ぶ人々の交流を描いた作品で、当時のバブルの崩壊により大不況に陥った社会の空気が確実に反映されています。大竹しのぶ演じる主人公は自閉症の息子がいるシングルマザーであり、悩みは尽きなくても人生の道を見つけようとする様にも感動があります。

寺田農は​​ビル管理の仕事の知識や心構えを教えてくれる先生として登場します。その笑顔やたたずまいから優しさにあふれていて、「縁の下の力持ちです。つらい時もあるでしょうが、最後までやり通してください」「体を大事に」「幸せになってください」といった言葉それぞれが、劇中のキャラクターに限らない、仕事に向き合う観客にも投げかけられているかのようでした。

なお、タイトル通り『学校』シリーズの第3弾ですが、物語は独立しているので本作から見ても全く問題なく楽しめるのでご安心を。同シリーズはいずれも『男はつらいよ』シリーズで知られる山田洋次監督らしい優しさを存分に感じることができるので、ぜひ疲れた時にもご覧になって見てほしいです。

4:『ミスミソウ』(2018年)

苛烈ないじめを受けた上に両親を焼き殺された中学生の少女が、同級生に次々と復讐していく物語で、血しぶきを撒き散らす残酷描写も満載のためR15+指定がされています。そのため見る人をある程度選んでしまうのも事実ですが、『先生を流産させる会』(2011年)や『許された子どもたち』(2020年)など、子どものいじめや悪意を生々しく描く内藤瑛亮監督の作家性も見事に発揮された、原作漫画とは異なるラストも含めて秀逸な内容に仕上がっていました。

寺田農が演じるのは主人公のおじいちゃん。「卒業したら、東京のおじいちゃん家に行こう」「ゆっくりやろうな」といった話し方は優しさたっぷりで、(そうした希望が人殺しになってしまった主人公からは失われているという事実もあって)涙腺を刺激されます。主人公の味方になってくれる少年に対しての「お願い」も重要であり、物語にはいなくてはならない存在だとも、強く思えたのです。

なお、本作と同じく押切蓮介による漫画を原作とするホラー映画『サユリ』が2024年8月23日より公開中で、大好評かつ若い観客を多く動員したおかげで、上映館数が増加するほどのムーブメントを起こしています。こちらは「ホラー映画の中で最も面白い」と断言できる大傑作かつ、いい意味で「笑える」より万人向け(?)な内容なので、R15+指定が乗り越えられる人は、周りの観客のリアクションも含めて楽しめる劇場で『サユリ』を楽しんでほしいです。

5:『クラメルカガリ』(2024年)

オリジナル企画のアニメ映画であり、『クラユカバ』と同時公開された作品です。刻々と変化していく町並みを地図に書きとどめる仕事をしている少女の冒険の物語。いい意味で雑多でレトロな世界観や、原案を務めた『バッカーノ!』『デュラララ!!』などで知られる小説家・成田良悟らしさもたっぷりな、個性豊かなキャラクターの群像劇になっていることが大きな魅力です。

寺田農が演じているのは“公共のため”を掲げて発明に挑む、機械修理工房を営む老人です。出番は決して多くはないのですが、孫に当たる義手を持つ少女と暮らしていることや、言葉の端々から奥行きを感じさせます。独善的な悪役であるムスカとは言うまでもなく正反対ですし、塚原重義監督が「裏主人公ともいえる」とのたまう理由も、見ればきっと分かるでしょう。 「私にもできることはまだある」という「これから」を思わせるセリフは、寺田農というその人が亡くなった事実を思うと切なくもなりますが、その「信念」を強く感じさせる説得力に感動がありました。改めて、ご冥福をお祈りします。そして『クラユカバ』『 クラメルカガリ』はBlu-ray BOXが発売中、下北沢トリウッドやセントラルシネマ大牟田でも劇場上映中ですので、ぜひチェックしてみてください。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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