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死後離婚した50歳、理不尽な義父母とは「もう関係ない、と言える」「お墓も思い切って……」

オールアバウト / 2024年9月2日 22時5分

死後離婚した50歳、理不尽な義父母とは「もう関係ない、と言える」「お墓も思い切って……」

夫の死後、「姻族関係終了届」を役所に届出ることで親戚等との関わりを絶つ、いわゆる「死後離婚」が増えているという。ある50歳女性の実例からは、死後離婚を決意する理由、その後の心境の変化が見えてくる。

産経新聞で「死後離婚が増加傾向にある」と報じられた。筆者自身も、周りで夫の死後に「姻族関係終了届(=死後離婚)」を自治体に提出した女性たちが増えてきたと感じている。

「死後離婚」とは? メリット・デメリットは……

通常は、夫が亡くなっても夫の親戚等との関係は変わらない。だが姻族関係終了届を出せば、配偶者だけは夫の親戚等との関わりをなくすことができるのだ。

子ども(義父母から見れば孫)と義父母の関係は「終了」できない。

死後離婚したところで、配偶者の遺産に対する相続権や遺族年金の受給には影響がない。だから特にメリットもデメリットもないと法律の専門家は言うが、いちばん大きいのは残った妻の心持ちだろう。

50歳女性が「死後離婚」を決意した理由

ミドリさん(50歳)は、10歳年上の夫を3年前に亡くした。結婚したのは彼女が38歳のとき。彼女は初婚だったが、当時48歳の夫には高校生のひとり娘がいた。最初の妻は娘が小学生のときに病気で亡くなっていた。

「高校生は多感な時期だから、結婚するつもりはなかったんです。でもさばさばした娘で、私と彼が付き合っていると知ると、『お父さんの死に水をとってやってくださいよ。私は面倒見られないから』って。

娘とは2年ほど一緒に暮らしました。大学入学と同時に娘は家を離れた。でもよく帰ってきたし、私が娘に会いに行くこともあります。今でも仲がいいんです」

その後は夫婦ふたり暮らし。夫の両親が車で30分ほどのところに住んでいたため、ミドリさんは仕事をしながら義父母のことも気にかけていた。

「義父母に嫌われたくなかったし、せっかく縁があって義理の関係になったのだから、義両親を大事にしたつもりです。でも夫は生前、よく『あんまり甘い顔をしなほうがいい』と言っていました。自分の両親ながら、『金に汚い』『すぐたかろうとする』と手厳しい言い方をしていたんです」

夫が突然の余命宣告、義両親の不思議な反応

夫が病に倒れ、3年ほど闘病している間も、義両親は「私たちだって具合が悪いんだから、車を出してほしい」「お金を貸してほしい」とたびたびミドリさんを頼ってきた。できることはしたが、夫からは「親と関わらなくていいから」と言われていた。

夫は必死で生きようとしたが、余命半年を宣告されてしまう。ふたりで夫の両親のもとを訪れ、そのことを伝えると、両親は「そうか」と言ったきりだった。

「ショックが大きくて言葉が出ないのかと思っていたら、その翌日には、お金を貸してほしいと私に連絡があって。かわいそうで夫には言えませんでした、そんなこと。それを機に義両親とは距離を置きました」

夫が病院で亡くなったとき、ミドリさんはすぐに義母に電話をした。義母は「わかった。あなたのほうで全部やってちょうだい」とだけ言って電話を切った。実の親子なのに、面倒なことはしたくないといった感じだったから、ミドリさんは2度と義両親と連絡をとるまいと決めた。

夫の葬儀後、義両親は「保険金をよこせ」と

通夜や葬儀には義両親も参列したものの、葬儀が済むと義母は「息子の保険金があるでしょう。半分寄越して」と言いだした。

保険の受け取りは妻のミドリさんである。親に分ける義理はない。

「夫の闘病でかなりお金がかかりました。働けない期間も長かったし。それまでにも義両親には結構持っていかれていた。夫の生命保険なんて微々たるものです。それすら持っていこうとするなんて……。渡す義理はないんですが、もうこれ以上、関わりたくない。本当にそう思いました」

そんな時に、友人から姻族関係終了届というものがあると聞いた。それを自治体に出したところで、夫との関係が変わるわけではない。遺産や年金も受け取れる。ただ、義父母の理不尽な言い分からは逃れられる。「もう関係ないですから」ときっぱり言える。そう思った。

「姻族関係終了届」を役所に提出した結果

「役所に届を出したとき、体中から力が抜けました。あの義父母からようやく離れられる。そう思った」

だからといって夫の遺産が十分にあるわけではなかった。借家だった家を出て、自分の名義で小さな中古マンションを購入した。頭金だけは夫の保険金を使ったが、あとは自分で返済していくつもりだ。

「死後離婚」で義両親と娘の関係は切れない

「娘には夫が遺したものを全部見せ、預金をいくらか渡しました。いらないと言ったけど、お父さんからのお守りみたいなものだから、と。娘にとって夫の両親は祖父母ですから、会ったりするのを止めることはできない。好きにしていいからと言ったら、もともとあの祖父母は好きじゃないと笑っていました」

引っ越してから、義両親からは何も言ってこなくなった。電話もずっと出ないでいたら、かかってこなくなった。姻族関係終了届を出すまでもなかったのかもしれない。だが、ミドリさんはやはり提出してよかったと言う。

「きっぱり気持ちの整理がつきました。夫本人の願いで、お墓は霊園の納骨堂にしました。私もいずれそこに入ります。宗派や家も関係なく、夫婦ふたりだけのお墓で、永代供養だから娘にも迷惑をかけずにすむ。姻族関係終了届を出していなかったら、思い切ってそういうこともできなかったかもしれません」

あとは夫との思い出を大切に、自由に暮らしていこう。ミドリさんはそう気持ちを切り替えていると微笑んだ。

<参考>
・「死後離婚で解放された」手続き増加、大半が女性 配偶者の死後、義父母らと親族関係断絶(産経新聞)

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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