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「ジャクソンホール会議」って何? 円高に動きそうだけれど、関係は?

オールアバウト / 2024年9月4日 11時30分

「ジャクソンホール会議」って何? 円高に動きそうだけれど、関係は?

8月、注目されたジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長は9月FOMCでの利下げ実施の方針を明言しました。為替は円高に動きそうな状況ですが、年内の日銀による追加利上げの可能性も含めて状況をご説明します。

8月22~24日に米ワイオミング州のジャクソンホールで開催された金融・経済シンポジウム(通称ジャクソンホール会議)における、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が話題となりました。

パウエルFRB議長は、講演で以下のような発言をしました。

「政策を調整すべき時が来た」
「インフレ率は現在、私たちの目標にかなり近づいている」
「米経済は堅調な成長を続けているが、雇用の下振れリスクは高まっている」
「強い労働市場を支えるためにできることを何でもする」

この発言を受けて、為替は再び円高ドル安が進んでいます。9月上旬に発表される米国の雇用統計など雇用関連の経済指標が市場予想よりも弱かった場合、「9月17~18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて、0.50%の利下げを実施する可能性がある」と市場が予想しているからです。

日本銀行の金融政策決定会合も9月19~20日に開催されますので、FOMCや日銀会合が開催される9月中旬から下旬にかけて、さまざまな思惑で為替が乱高下する可能性があります。したがって、為替市場を材料とした株式市場の乱高下には注意が必要です。

今回はこの「ジャクソンホール会議」が何だったのか、為替市場や株式市場への影響について詳しく説明します。

Q:ジャクソンホール会議ってそもそもなんだったの?

A:本来は、「避暑地にみんなで集まりざっくばらんにお話ししましょう」といった和気あいあいな会合だったのですが、ここ10年ほどは重要な会合として関心が高まっています。

【解説】
ジャクソンホール会議(ジャクソンホール会合)とは、米のカンザスシティ連邦準備銀行が、ワイオミング州のジャクソンホールで毎年8月に開催する経済政策シンポジウムのことです。世界各国から中央銀行総裁や政治家、学者などが参加し、世界経済や金融政策について議論を交わす場です。

ジャクソンホールという地域は、日本でいう「軽井沢」や「日光」のイメージです。したがって、本来は「避暑地で暑気払いでもしましょう」といったのんびりムードな会合だったのです。

しかし2010年、当時のバーナンキFRB議長が「異例の量的緩和」に踏み切ることを示唆し、米国株が急騰する事態が発生しました。また、2014年には、当時のドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が、「一段の金融緩和実施」を示唆し、ユーロや欧州株式市場が大きく動きました。この辺りからただの「のんびりした会合」ではなくなり、今では、8月下旬の各国金融政策の方向性を確認する重要な会合という位置づけです。

Q:FRBは何を重視して政策金利を決めるの?

A:FRBはさまざまな経済指標を確認しますが、今注目しているのは雇用関連です。

【解説】
FRBはFOMCにて米国のさまざまな経済指標を確認していますが、大きく分けると下記のような重要な経済指標があります。

・雇用関連……米雇用統計、ADP雇用者数、雇用動態調査(JOLTS)求人件数
・景気関連……国内総生産(GDP)、ISM製造業景況指数
・物価関連……消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)
・消費関連……小売売上高、個人消費支出(PCEデフレータ)
・製造業関連……鉱工業生産指数
・住宅関連……住宅着工件数、中古住宅販売件数

コロナ期間は世界中でインフレが話題となりましたが、この間は「CPI」「PPI」への関心が非常に高まりました。足元、米国をはじめ世界のインフレは落ち着きを取り戻しており、ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長は、「雇用関連」の経済指標を重視すると発言しました。

ちょうど、9月4日に「7月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数」、5日に「8月のADP雇用者数」、6日に「8月の米雇用統計」が発表されますので、市場はこの雇用関連の経済指標に注目しています。

Q:日銀は9月も利上げをするの?

A:現状、金融市場の安定化が確認できないことから追加の利上げは行わない予定です。

【解説】
7月末に開催された日銀会合後の記者会見で、植田和男日銀総裁が想定以上に利上げに前向きな「タカ派」姿勢を示したことで、その後の為替市場、株式市場など金融資本市場は大混乱しました。その後、8月7日に内田眞一日銀副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で利上げすることはない」と「ハト派」な姿勢を示したことで市場は安心しました。

そして、28日、もう一人の日銀副総裁である氷見野良三日銀副総裁が、金融経済懇談会にて「円高がインバウンド需要に、株安が高級品消費に影響することも考えられる」「経済物価の見通しが実現する確度が高まっていくということであれば、金融緩和の度合いを調整していくというのが基本的な姿勢」と述べた一方、「市場は引き続き不安定な状況にある、極めて高い緊張感をもって注視していく」と発言しました。

「不安定な金融情勢下、利上げを実施することはない」といった日銀の方針を再度示したことで、FOMC直後の9月日銀会合での追加利上げ実施はほぼない、との見方が強まっています。仮に7月の利上げが160円台という「円安」を止めるための利上げだったとしても、足元、140円台ですので、利上げを実施する必要性はありません。

日銀はじめ中央銀行は、市場との対話をとても重要視していますので、今の不安定な金融資本市場において、追加の利上げを実施するという選択肢はあり得ないと考えます。今後の日本の経済指標を確認する必要はありますが、11月に米大統領選挙という最大の不透明要因が存在しますので、日銀は追加利上げのカードはしばらく手元に温存するのでないかと考えます。

文:田代 昌之(金融文筆家)

新光証券(現みずほ証券)やシティバンクなどを経て金融情報会社に入社。アナリスト業務やコンプライアンス業務、グループの暗号資産交換業者や証券会社の取締役に従事し、2024年よりフリー。ラジオNIKKEIでパーソナリティを務めている。
(文:田代 昌之(金融文筆家))

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