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日欧の「給食指導」比べてみたら……日本は「周りに迷惑をかけない食育」になっていないか?

オールアバウト / 2024年9月4日 18時50分

日欧の「給食指導」比べてみたら……日本は「周りに迷惑をかけない食育」になっていないか?

夏休みが終わり、学校給食に喜ぶ子どももいれば、不安を募らせる子どもも……。一方、海外の学校では、どんな給食を食べているのでしょうか。ヨーロッパ在住の筆者が、スイスの給食事情を紹介します。

夏休みが終わり、久々の学校給食に「楽しみだな」と喜ぶ子どももいれば、「食べきれるかな」「学校に行くのが怖い……」と、不安を募らせながら登校する給食嫌いな子どももいることでしょう。

春には政府広報オンラインがX(旧Twitter)で投稿した「思い出の給食」が“盛りすぎ”で現実離れしているとして炎上したこともあったと聞きますが、海外ではどんな給食が? そこで今回は、ヨーロッパの事情を紹介しましょう。

海外の給食事情はどうなっている?

日本では給食が一般的である一方、筆者が暮らすスイスの国公立小学校では基本的に昼食は提供されず、子どもたちは午前の授業が終わると1度帰宅して昼食をとります。

そのため共働きや片親世帯など昼に保護者不在の家庭は、学校併設の昼食付きの学童保育を利用できる仕組みです。

時間制限なしのビュッフェ式が定番

筆者が住む自治体の学童では5つのモジュールがあり、登校前の7~8時(朝食込)、昼休みの12時15分~14時(昼食込)、放課後の14~18時などから利用時間を選ぶことができます。昼食は、昼休みのモジュールを四半期単位で申し込むと提供されます。

1回の保育費(昼食込)が通常で14.65フラン(約2500円 ※1スイス・フラン=170.86円/2024年8月30日時点)、月額で約5万円が計上されます。

ただし世帯収入によって軽減率が細かく設定されており、最も安い料金では1回の昼食付保育が6割引きの5.85フラン(約1000円)で、月額では2万円程度となっています。

息子に学童の昼食事情を聞いてみると、

・ビュッフェスタイルでおかわり自由
・サラダ、パン、フルーツは毎日提供されデザートも頻出
・日替わりのメインは肉類と付け合わせが基本だが、ピザやホットドッグ、タイカレー、キュウリ巻などもイレギュラーで提供される
・12時15分から13時の間であればいつ食べ始めててもOKで、先に遊んでから食べることも可能
・時間制限は特にないが30分程度で食べ終わる子が多い
・ベジタリアン用やアレルギー対応食などもあり
・食器は陶器、コップはガラス製

とのこと。つまり、何ごとにも厳格な日本と比較して「自由度」が高いことに驚きます。

(1)自分の好きな食べ物を選べる。つまり食事管理は自己責任で、強制されない
(2)食事時間が潤沢にあり、開始時刻は自主性に任されている
(3)子供の個性(信条、宗教、病歴など)が尊重されている

そういえば、隣国オーストリアで息子が幼稚園に通っていた際も、「食事は楽しむべきであって、嫌いな食べ物を子どもに無理強いするべきではない」と保育士に諭された経験があります。

やはり日本とヨーロッパでは食育に対する姿勢が根本的に異なるようです。

集団になじませるか、個性を際立たせるか

日本の給食事情を調べるうちに、小食の生徒や好き嫌いのある児童に対する完食指導について問題提起する記事を度々見かけました。

日本では基本的に、家庭でも好き嫌いをなくすよう教育する傾向がありますが、その理由としては「栄養バランスよく食べるべき」「好き嫌いがあると周りに迷惑をかける」の2つがよく挙げられます。

栄養バランスに関しては、日本はヨーロッパと比べて大変優れた食育をしており、日本人が長寿で肥満が少ないことにも大きく貢献していると思われます。

ただ、生理的に受け付けない味や食材を強制することによって子どもに会食恐怖症などのトラウマを植え付けるくらいであれば、どうすれば足りない栄養素を他の食材や調理法で補えるかを本人に考えさせるなど、子どもの自主性を促す方向に転換しても良さそうです。

「周りに迷惑をかけないこと」は日本人の素晴らしい美徳であると同時に、個人よりも集団の利を優先させるための呪縛でもあり、周囲に気を遣うあまりに本来の自分を押し殺してしまっている人も稀(まれ)ではないでしょう。

日本国内にいれば、それで無難な社会集団生活が送れますが、国際社会では他人に気を遣ってばかりだと周りから蔑(ないがし)ろにされたり、嫌な役目ばかり押し付けられたりと、不利益を被ることになりかねません。

他人軸を重視したしつけは、子どもの将来の活躍の場によってはかえって“あだ”となるので注意が必要かもしれません。

“信念”を持つ幼稚園児ベジタリアンも

スイス栄養学会とスイス・バーゼル市が推進している「スイスの食のピラミッド」と「最適な食事バランス」
ヨーロッパの食育で驚いたことといえば、幼稚園児ですら自ら信念を持ったベジタリアンが存在するという事実です。

実は筆者の周りにもベジタリアン児が複数いたのですが、菜食主義に傾倒した理由は「屠殺(とさつ)される動物に憐れみを覚えるため」だそうで、母親たちは「ちゃんとタンパク質を摂取してほしいけれど、普通の肉はもちろん、ソーセージやベーコンすら食べてくれないの……」と口をそろえて心配していました。

親たちも他の食材でプロテインを補う努力はするものの、子どもに肉食を強要せず、我が子の信条を尊重しているのが印象的でした。

食育の場でも自己主張するヨーロッパ

こうしてみると、ヨーロッパの子どもは食育の場でも自己を確立し、自分の個性に自信を持ち、堂々と周りに自己主張できるように教育されているようです。

日本で生まれ育った筆者は、おおよその栄養バランスを考えた献立や、食の選り好みをしすぎないことは重要と認識していました。けれど、その食育が子どもの人格、個性、将来といったものにまで打撃を与えてしまうのであれば、ヨーロッパ方式を柔軟に取り入れるのもアリなのかもしれません。

この記事の筆者:ライジンガー 真樹
元CAのスイス在住ライター。日本人にとっては不可思議に映る外国人の言動や、海外から見ると実は面白い国ニッポンにフォーカスしたカルチャーショック解説を中心に執筆。All About「オーストリア」ガイド。
(文:ライジンガー 真樹)

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