岡山県PTA連合会「解散」の衝撃 「時間的な負担が大きかった」元市P連会長の証言
オールアバウト / 2024年9月10日 21時15分
岡山県PTA連合会が今年度で解散することを表明し、衝撃が走っています。これまでどんな状況だったのか? 2019年度に岡山県P連を退会した玉野市PTA連合会の当時の会長に取材。なぜ岡山県Pが解散に至ったのか考察します。
岡山県PTA連合会(以下、岡山県P)が2024年度末での「解散」を表明し、注目を集めています。各学校のPTA解散もまだ珍しいのに、市区町村を超えて、「県」という広域の連合組織が解散ってホント!? と驚いた人は多いでしょう。
筆者もびっくりしました。これまで、市P(市単位のP連)の解散例は2つ取材したことがあるのですが、都道府県Pの解散を聞いたのは、今回が初めてです。
解散の原因は複数あるでしょうが、もともと加入率が下がっていた、という点はやはり大きそうです。報道によると、岡山県Pには2008年時点で21団体(県内の郡Pや市P)が加入していたそうですが、今年度の会員は5団体だったとのこと。(*)
5年前に岡山県Pを退会した玉野市PTA連合会(以下、玉野市P)の当時の会長、梶原秀夫さんによると、2019年時点の加入団体は10~15程度だったというので、時間をかけて、だんだんと加入団体が減っていたことがうかがえます。
玉野市Pが退会を決めた理由は、「研修会などに参加する役員や会員の時間的な負担が大きかったから」と梶原さんは言います。
「PTAの研修会や県の人権研修会など『各校PTAから何人出してくれ』というものが年にいくつかあり、結構な圧力がかかっていたんです。かなり遠い地区で行われる研修会もあり、会員の方に行ってもらうのを申し訳なく感じていました。私としては、県域より玉野市内でもっといろんなことをやりたい思いがあったので、退会を決めました」
なお、2019年には玉野市Pのほかにも1、2団体が退会したということです。
おそらくそうやって団体が減っていくうちに、残った団体の負荷が徐々に増していったのかもしれません。団体が減った分だけ活動規模が縮小されていれば、問題はないはずですが、これまでの活動をある程度維持しようとすると、残った団体の金銭的・労力的負担はおのずと大きくなります。
例えば、都道府県Pや政令市Pは持ち回りで何年かに1度「日本PTA全国研究大会」などのイベントを開催しなければならず、これに莫大なお金や労力を費すことになるのですが、県Pが存続する限り、その負担は避けられません。
実際、今回の岡山県P解散に関しては、2008年から2024年の間に会費(分担金)が大幅に値上がりしたことが報じられています。
なぜ岡山のみが解散に至るのか
ここまで読んで、疑問を感じた人もいるでしょう。P連の活動が、PTA会長や役員さんの負担となっているのは、おそらくどこの自治体でも同じはず。それなのになぜ、岡山県だけが解散に至り、ほかの都道府県は解散していないのかと。まだわからないことが多いのですが、県Pからの退会がほかの都道府県よりかなり早く進んでいたのが一因となったことは、間違いありません。
市が政令市になるとき、市Pは県Pを退会して日本PTA全国協議会(日P)に入るならわしがあるため、岡山市Pも2009年、政令市となった際に県Pを退会しました。ここまではふつうなのですが、その後まもなく岡山県では、県内で2番目に人口が多い倉敷市P(政令市ではない)も退会しているのです。
倉敷市がこのときなぜ県Pを抜けたのかについて、現在取材中です。
ほかには、全国組織である日Pの状況も、いくらか関係しているかもしれません。日Pを含めた多くのP連は、加入率の低下を嫌って「退会」や「解散」を阻止することがよくあります。おかしな話ですが、会員(団体)がP連に「退会したい」「解散する」と伝えると、「認めない」「考え直せ」などと言われることがとても多いのです。
ですが、日Pは今、それどころではなさそうです。2024年7月、業者に水増し請求をさせて1200万円の損害を出した元参与が逮捕され、さらに同容疑者を助けていた事務局長男性と事務局次長女性も懲戒解雇され、現在は事務局が不在の状態です。
なお、今回の解散が報じられた際、「P連が解散すると、保護者や教職員が行政への要望を行えなくなる」ことを懸念する声が聞かれましたが、これについては少々反論があります。詳しくは、7月に書いた記事「PTAがないと保護者は学校や行政に要望できない」はホント? 思い込みが要望の実現を妨げる例も」で説明しています。
岡山県PTA連合会にも現在、取材依頼中です。まだ電話はつながらず、送信したメールもエラーになっていますが、引き続き連絡を取る方法を探していきます。
(* P連に加入するのはPTAやP連という団体であり、個人ではありません。時々、PTA会員である保護者や教職員の人数が、P連の加入者数として報じられていますが、厳密にいえば正しくないと思います)
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。(文:大塚 玲子)
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