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世界は「自民党総裁選」をどう見ているのか。中国とアメリカの視点、そもそも指摘される“野党の責任”

オールアバウト / 2024年9月24日 21時25分

世界は「自民党総裁選」をどう見ているのか。中国とアメリカの視点、そもそも指摘される“野党の責任”

9月27日に投開票が行われる自由民主党の総裁選。この選挙で、次期首相候補が決まり、日本の対外政策に大きな影響を与え得るという意味で世界からも注目されている。(サムネイル画像出典:代表撮影/ロイター/アフロ)

日本では今、9月27日に投開票が行われる与党・自由民主党の総裁選挙が盛り上がっている。

もちろん誰が勝利するのかは投票日になってみないと分からないが、調査などを総合した大方の予想では、1回目の投票では自民党の党員票と議員票を合わせて過半数を獲得する候補は出ないと見られている。そうなると、上位2人による決選投票ということになる。

世界は自民党総裁選をどう見ているのか

現時点では石破茂氏と高市早苗氏、そして小泉進次郎氏がトップ争いを繰り広げているが、たった1つの失言で情勢が一変する可能性もあるのでまだ目が離せない。

今回の総裁選は海外からの注目度も高い。というのも、日本や欧米諸国と、中露と北朝鮮、イランなどとの緊張関係、日本の防衛費の増加、環境問題、歴史的な動きを見せる金融・経済に対する政策など日本が国際的に注目されている中で、この選挙で次の首相が決まり、その後の日本の対外政策などの行方を左右するからだ。

そこで世界は今回の総裁選をどう見ているのかについて探ってみたい。

中国

まずは中国。特に9月18日に中国の深圳(しんせん)で発生した日本人児童の刺殺事件で緊張が高まっているが、そもそも尖閣諸島周辺の問題や邦人拘束事件、さらに領海や領空侵犯を繰り返していることに、日本の次期首相はどう反応をするのかを注視している。

中国から見れば、以前から「知中派」である政治家が総裁選に勝利したほうがいい。そういう点から言えば、日中友好議連会長である林義郎氏を父に持ち、自身も同連盟会長を務めた林芳正氏や、親族も中国との関係がある河野太郎氏などは与(くみ)しやすいと考えている可能性がある。

また靖国参拝も問題になる。韓国は、中国同様に、次の首相が靖国神社に参拝するのかを非常に気にしている。総裁候補上位3人を見てみると、石破氏は靖国参拝を明言していないが、高市氏は靖国参拝について「これからも続けたい」と語っている。8月に靖国参拝している小泉氏も、筆者の取材では「首相になっても靖国神社を参拝する」と語っている。ただその強気な姿勢には、アメリカの研究機関に属していた経歴からも、アメリカの後ろ盾が得られるという自信があるのだろう。

アメリカ

そんなアメリカももちろん総裁選に注目している。アメリカの場合も自国にとって有利になるような首相が就任してほしいと考えている。ただ今回立候補している候補者を見ると、アメリカで教育を受けた親米の候補が多い。小林鷹之氏、茂木敏充氏、上川陽子氏、林氏は、アメリカの名門校であるハーバード大学大学院に留学している。さらに小泉氏は、アメリカのコロンビア大学大学院、河野氏はジョージタウン大学卒だ。ちなみにこれら大学は全て、名門大学が多く存在し、首都ワシントンやニューヨークなどがあるアメリカ東海岸に点在する。

つまり、石破氏と高市氏以外は、アメリカと非常に強いつながりがある。筆者もアメリカ東海岸に留学していたので理解しているが、これら名門大学の大学院では教員や同級生などがアメリカ政府と関係が近い場合や、政府関係者になるケースが多い。また、出入りする専門家などと知り合う機会は頻繁にある。つまりアメリカ政府や政府機関との強いパイプができることは間違いなく、アメリカ政府も日本側の交渉相手がアメリカ留学経験があると親近感を持つ。

現在アメリカでは大統領選が行われている。実は、次の日本の首相が誰になっても影響は及ぼさない。カマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領が11月5日の投票日に向け次期大統領の座を競っているが、先日筆者は来日していた日本の政治にも詳しい元アメリカ政府関係者と話したとき、彼は「誰が日本の自民党の総裁になっても、日米関係が大きく変化することはない」と語っていた。事実、これまでの自民党の首相も在日のアメリカ政府関係者とかなり頻繁にやりとりを続けてきているので、次の首相もそうなることは間違いないだろう。

ただ中国などが絡むと話は別だ。例えば2015年以降に対中国政策で警戒心を非常に強めるようになったアメリカから見れば、現在、靖国参拝をする日本の政治家は好ましくない。靖国参拝で、日本と韓国、さらにその先にいる中国との関係が悪化するようなことは避けたいという。

海外メディアでも注目される、日本の“世襲議員”

中国やアメリカ以外では、欧州や中東、アフリカなどの国々ももちろん選挙結果に注目しているが、今回は自民党の総裁を決める選挙であり、与野党が交代するわけではない。つまり首相交代が欧州や中東、アフリカとの利害関係を大きく揺るがすことは考えにくいために、静観している状況だと言える。

さらに、日本で選挙があると、世襲議員が少なくないことも海外で話題になることがある。総裁選でも世襲議員はいて、小泉氏は言うまでもないが、石破氏や林氏、河野氏も父親が国会議員であり、加藤氏の場合は義理の父親が国会議員である。ただ外国政府は世襲であることはあまり気にしていないようだ。

海外のメディアなどでも、これまでの論調を見ていると、日本の世襲政治は両刃(もろは)の剣であるという客観的な見方をしている印象だ。世襲によって、安定性と惰性の両方をもたらしているという。ただ世襲は汚職や社会の流動性の低下につながるとの指摘もあり、特に選挙区では世襲以外の候補が選ばれにくくなり政治環境の停滞を生み出し、さらには不正会計や政治資金の不正使用といった問題につながる可能性が指摘されている。

「野党にも、惰性による政治を打破できない責任がある」

今回の総裁選を踏まえて、改めて海外から日本の政治はどう見られているのかを調べていくとここまで取り上げたような問題に関心があるのが分かる。ただ、日本は自民党がほぼ一党支配を続けてきた特殊な国である。既出の日本の政治にも詳しい元アメリカ政府関係者は、日本の政治についてこんなことも言っていた。

「自民党の是非はともかく、有権者に政権を取れるような別の選択肢を提供できていない野党にも、惰性による政治を打破できない責任があるかもしれないね」

自民党総裁選は、あくまで自民党内のリーダーを選ぶもので、誰になっても自民党政治という枠組みは変わらないし、大きな変化は感じられないだろう。それを安定と見るか惰性と見るか、海外の日本ウオッチャーの中にはそういう視点で日本の政治を観察する人も少なくない。海外的な目線で総裁選を見てみるのも価値があるかもしれない。

この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル」
(文:山田 敏弘)

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