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『憐れみの3章』を見る前に知ってほしい8つのこと。R15+の過激描写、R.M.F.とは何か…気になる点を予習

オールアバウト / 2024年9月26日 21時30分

『憐れみの3章』を見る前に知ってほしい8つのこと。R15+の過激描写、R.M.F.とは何か…気になる点を予習

『憐れみの3章』について、その奇妙な特徴と面白さ、見る前に知ってほしいことを解説しましょう。(※サムネイル画像出典: (C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.)

『憐れみの3章』 が9月27日より劇場公開されます。本作はアカデミー賞で作品賞を含む11部門にノミネートされ、エマ・ストーンの主演女優賞など4部門を受賞した『哀れなるものたち』(現在はDisney+で見放題)を手掛けたヨルゴス・ランティモス監督の最新作です。

アカデミー賞受賞作からわずか8カ月後の最新作

ランティモス監督の作家性は(具体的には後述もしますが)かなり強烈で、それぞれの作品が「決して忘れられない」ほどのインパクトがあります。『哀れなるものたち』が日本で公開されたのは2024年1月26日。それからわずか8カ月後に、ランティモス監督およびエマ・ストーン出演の最新作が公開されるという事実から、もうクラクラしてしまいそうです。

今回の『憐れみの3章』もランティモス監督作の例に漏れず、かなり奇妙な作品で、後述する通りR15+指定納得の過激な描写もあるため、ある程度は見る人を選ぶでしょう。しかし、「選ばれた」人にとっては大いにハマって、「この映画のことばかり考えてしまう」ほどの奥深さや中毒性を感じ取れるでしょうし、それでいて一定のエンタメ性もあるため、見れば高確率で面白く感じられる内容だとも信じていています。
ここでは、大きなネタバレにならない範囲で、事前に知っておいてほしい情報をまとめましょう。予備知識ゼロで見ても「なんなんだこの映画は?」という困惑も含めて楽しめるかもしれませんが、本作の特徴からすれば「こういう作品なんだな」と身構えておいたほうがベターであり、それでこそ混乱することなく堪能できる内容とも思えるのです。

1:上映時間は2時間45分

本作の上映時間は2時間45分(165分)で、ランティモス監督作の中で最も長尺の映画となりました。そのため事前のトイレは必須です。

とはいえ、長さにおののく必要はそれほどありません。後述するように3話のオムニバス構成であり、それぞれのエピソードにメリハリもあるためか、少なくとも筆者個人は「えっ!? もう終わり?」と思うほどに短く感じられたのですから。

2:R15+指定も納得の過激な描写

本作は「強い性愛描写および肉体損壊の描写が見られる」ためにR15+指定がされています。R18+指定になるほどではないとはいえ、エロもグロも両方あるのです。

そのR15+指定の描写が特に目立つのは第2章。劇中で流れる性行為のビデオ映像と、その後の「痛そう」なシーンは、それぞれ短いもののショッキングであり、直接的に描く意義もあると思えました。それなりの覚悟をして見ることをおすすめします。

3:3話それぞれで「同じ俳優が違うキャラクターを演じている」

本作の最大の特徴と言っていいのは、3つの章に同じメインキャストたちが登場し、それぞれの章で別のキャラクターを演じていること。それぞれの章の終わりで短いクレジットが出てからは、「俳優は同じでも、ここからは違う話で、全く異なるキャラクターになっているんだな」と切り替えて考えたほうがいいでしょう。それぞれのエピソードには全く接点がない……はずなのですが、後述する通り、3つの独立した物語の根底には共通する「構造」があることが分かるでしょう。部分的にリンクしている要素も多くあり、それをもって「続けて見るからこそ感じ取れるものがある」のも、本作の醍醐味(だいごみ)です。(C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.さらに、エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォーなどの俳優それぞれの存在感と演技力をもって、「同じ人のはずなのに別の人にも見えるし、同じ要素も感じられる」ことも、間違いなく奇妙な味わいに直結しています。

4:1話目は「上司に全てを支配される男」の話

ここからは各章のあらすじを簡単に紹介しましょう。

公式のプロダクションによれば、第1話は「選択肢を奪われ、自分の人生を取り戻そうと格闘する男」の話。主に描かれるのは「上司が部下の行動どころか、食生活や妻との性生活までをも把握していて、その部下も上司の指示に全て従っている」という、ゆがんでいるにも程がある主従関係です。(C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.主人公の部下は、そんな上司からのとんでもない「命令」を聞いて、「さすがにそんなことはできない」と拒否をするのですが、おかげで信頼を失い、結果として「暴走」をしてしまいます。3話それぞれが「悪い冗談」のようなブラックコメディー色が強いのですが、本作は特に「笑うに笑えない状況」が続く、1話目にふさわしい分かりやすさがある、いい意味でのイジワルさに満ちた内容と言っていいでしょう。

5:2話目は「別人のような妻に疑惑を抱く男」の話

2話目は「海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官」の話。海洋調査に出た妻が行方不明となり、精神的なダメージを負い同僚からも心配されていた主人公の元に、妻が発見されたという知らせが届きます。妻は衰弱していたものの命に別状はなく、平穏な日常が戻ってくると思いきや……主人公は彼女の「お気に入りの靴のサイズが合わない」「以前は嫌いだったチョコレートケーキを一気に食べてしまう」といった言動や行動に違和感を覚えるようになってしまいます。(C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.主人公は客観的には被害妄想に取りつかれている、ただ仕事をするのも危険なほどに精神的な病を患っているように見えます。一方、妻はまともで、彼に存在そのものを否定される様がかわいそうで仕方がないのですが……真の恐怖は、その後の主人公による「とんでもない注文」にあります。その注文を受けて妻がどのような行動をしてしまうのか……見る人によって解釈が異なるであろう、衝撃的なラストまで、ぜひ見届けてほしいです。

6:3話目は「ムチャすぎる条件の教祖を見つけようとする話」

3話目は「卓越した教祖になると定められた特別な人物を懸命に探す女性」の話。冒頭から「死体安置所で、女性を死体に触らせて、よみがえらせる能力があるかを確かめる」シーンがあり、その後は主人公の女性は、怪しいカルト宗教の一員であり、それほどの能力を持つ人物を探す旅をしているのだと分かります。(C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.教祖の資格として求められるのは「双子の女性の1人で、かつもう1人が亡くなっている」という条件かつ「死者をよみがえらせる能力」。3話の中では最も難解にも思える内容ですが、「ムチャにもほどがある使命が主人公に与えられている」ことを前提にすれば、筋を追いやすいでしょう。そんな気の毒な彼女が、いつしか狂気に取りつかれ、物語がやはりブラックコメディー的に、いやホラー的とすら言える、予想外すぎる事態に発展する様にも期待してほしいです。

7:「R.M.F.」とは、何のこと?

3話それぞれのタイトルは「R.M.F.の死」「R.M.F.は飛ぶ」「R.M.F.はサンドイッチを食べる」となっています。誰もが「R.M.F.って何? 何の略?」と思うところですが、正直に言ってそのR.M.F.という文面自体にはそれほど深い意味はなさそうで、「気にしなくてもいい部分」だと思います。

映画のタイトルも初めは「RMF」にする案があり、その後「AND」にもなったりしたこともあったそうです。結果的に原題は『Kinds of Kindness(優しさの種類)』になったのですが、その理由はランティモス監督が「複数の意味を持つ言葉を使ったタイトルが必要だと気づいたから」だったのだとか。(C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.とはいえ、1話目の冒頭には「R.M.F.」という刺しゅうのあるシャツを着た男がはっきりと登場します。他の章でもちゃんと彼は画面上に写っており、確かに「死」「飛ぶ」「サンドイッチを食べる」様が描かれています。

彼は劇中の物語に組み込まれているようで、後述する「搾取と支配」のサイクルからは逃れられているようにも見えます。R.M.F.は、観客に近い立場の男であり、はたまたこの映画を作る監督や作り手自身ではないか、といった解釈も可能でしょう。

その上で、映画の原題『Kinds of Kindness』および、邦題の『憐れみの3章』も、内容の本質を端的に(あるいは逆説的に)示した秀逸なタイトルに思えました。

8:冒頭で流れる曲がテーマを表現していた

映画の冒頭で流れ、予告編でも使われているのは、イギリスの2人組ミュージシャン・ユーリズミックスによる楽曲『Sweet Dreams(Are Made Of This)』です。
日本でも聞いたことがある人は多いであろう、怪しくも耳に残るメロディーが特徴的な楽曲であり、その時点で本作にピッタリなのですが、歌詞を見ると「利用したり、利用されたり。苦しめたり、苦しめられたかったり」といった関係の元で、タイトルさながらの「甘い夢」が作られるという、ある種の「搾取と支配の構造」を表現しているとも解釈できます。

この『憐れみの3章』で描かれた3話それぞれも、なるほどその楽曲の解釈そのまま、「搾取と支配の構造の中にいるけれど、その関係の中に居続けることに耽溺(たんげき)している、そこから逃れない人たちの話」だとも思えます。(C) 2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.往々にして、世の中のさまざまな事象で搾取される側、支配される側が「被害者」と呼ばれるのでしょうが、本作ではそれほど単純な構図でもない、ある種の共依存的な関係のおかしみや恐ろしさを描いているとも言えます。

そして、ランティモス監督は本作について「この物語は人間の条件と行動についての全てだ。 アイデンティティー、支配、 帰属意識、自由への欲求についてである」と端的に述べています。確かに、各章のキャラクターはそれぞれ「自由への欲求」もあるように思えますが、それが果たしてどんな結末を招くのか……そこにもまた、共通点を見つけられるでしょう。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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