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衝撃的な法案が固まる。女性&同性カップルの「希望が絶望に変わる」内容に「対象者の拡大を」当事者呼び掛ける

オールアバウト / 2024年10月9日 17時30分

衝撃的な法案が固まる。女性&同性カップルの「希望が絶望に変わる」内容に「対象者の拡大を」当事者呼び掛ける

多様な家族の“在り方”を完全に否定する法案が今、まさに国会に提出されようとしている。未婚で子どもを育てたい女性や同性カップルは、新たな法律から排除され、子どもを持つ未来が閉ざされることに……。(サムネイル画像出典:長村さと子氏提供)

10月7日に行われた「生殖補助医療の在り方を考える超党派の議員連盟」の会合。不妊治療に関する新法の最終案が提示された。第三者の精子、卵子提供による不妊治療は法律婚の夫婦に限定され、未婚で子どもを育てたい女性や同性カップルは排除されることに。将来、子どもを持ちたいと願っていた多くの人が恐れていたことが現実になってしまった――。

小野田紀美議員が唯一危惧を示す

2023年11月に行われた会合でもすでに「精子、卵子提供を受けられるのは法律婚の夫婦に限定する」という案は提示されており、反対の声は多く上がっていた。

「LGBTQが子どもを持つ未来を当たり前に選択できる」、そういった社会を目指し活動を続ける非営利型の一般社団法人「こどまっぷ」の代表であり、同性カップルとして子どもを育てている長村さと子氏は、当時法案を修正させるべく、世界最大のオンライン署名サイト「Change.org」にて、「⼦どものいる未来を持つチャンスをください」という題で署名を集めていたものの、その行動は結実せず。

今回の会合では、自民党の小野田紀美議員が唯一、治療を受けられるのは“法律婚のみ”という部分に危惧を示した。「たびたび言ってきたことの議論の蒸し返しになってしまうんですけど」と今まで何度も伝えてきたことを強調し、「この法案の条文を読んでいて、不安なところがありまして」と切り出した。

今まで未婚だけれど、子どもを産みたいという人は多く存在し、それを今後はできなくさせ、さらに医療機関を介すると罰則もある、その結果、精子提供などにより子どもをつくる過程が“アングラ化”してしまうことを「非常に恐れている」と。

新法は「今後の希望が絶望に変わる法律」

また個人間でのやりとりに対し今回の法案では罰則はないため、表で堂々とやっていたことはダメになり、「子どもをなんとしても産みたい」と思っていた女性らにとって、“逆効果”になってしまうのでは、とも発言し、「今後の希望が絶望に変わる法律であってはいけないと思うんです」と、まさに絶望を感じている人たちの声を代弁するかのような問いを投げ掛ける。

しかし幹事長は「対象をどうするかについては次の期間に検討します」と回答し、法律婚のみを対象にした理由としては、話し合った結果まとまらなかったため、と明かした。重要な部分はまとまらなかったにもかかわらず、今回の法案はできたようだ。

子どもの出自を知る権利は世界に照らし合わせる一方……

新法では、法律婚以外のカップルや女性らに医療機関が医療を実施すると罰則がある。しかし、医療機関を介さない個人間でのやりとりに罰則はない。そのため小野田議員は前述のような質問をしたのだろう。法で守られ、安全に医療を受けられれば、多くの人が子どもを持て幸せになり、さらに少子化にも歯止めがかかる可能性があるにもかかわらず、日本という国は自ら、国の将来を閉ざそうとしている。

子どもの出自を知る権利については、世界各国の権利を勉強し、議連で熟議を尽くしてきた、と議員らが話す一方で、世界を見れば、欧州では同性カップルに対する法整備が進められているにもかかわらず、なぜ、今後日本で治療を受けられるのはそれに逆行する“法律婚のみ”という内容になったのか、疑問が残る結果になってしまった。

“新しい家族の在り方”にそぐわない内容

会合の冒頭で野田聖子会長は、約4年、28回も回を重ね、ようやく法案がまとまったことを報告。時間がかかった理由としては、「本当に今までにない日本の文化や生活、伝統の中にない新しい家族の在り方をしっかり開いていくという前例のないものであったから」と、時間をかけて、より丁寧に取り組んできたことを明かしたものの、誰もが納得いく内容にはならなかった。

会合の最後には「迅速な審査」を各党に要望し、20日後にある会合では最終案を確認し、最終スケジュールを共有するよう。早ければ特別国会か臨時国会か、次の国会に今回の法案は提出され、その後最短3カ月で施行される見通しだ。
長村氏(左)と茂田氏(右)が生まれたばかりのわが子を抱く姿

「法律を作ること自体は反対してはいない」

長村氏(左)と茂田氏(右)の子どもと一緒に今回の会合を受け、同性同士で子どもを育てており、さらに議員らへずっと女性の権利を守るよう訴え掛けている、長村氏へのインタビューを決行。当事者は法案をどのように受け止めているのか、赤裸々な思いを明かしてくれた。

長村氏は活動していく中で、1年前にはすでに「この法案でいきます」と議員から言われていたため、複雑な気持ちをずっと抱えつつ、会合を見て「いよいよなんだな」と、まずは思ったそう。さらに事前に分かってはいつつもやはり、「すごくショック」だと吐露。厳しすぎる罰則規定や「成立してから施行までの時間の短さ」にもショックを受けたよう。

「どうやっても、どうあがいてもこの方向は動かないことは分かってはいるけれども、対象から外れてしまった人たちの今後の苦しみとか、選択肢のなさ、危険なことに遭うという予測はできる状況なので、未来が閉ざされていくという現状がすごく苦しい」

また、法律ができた後は「病院さえ行かなければなんでもあり」になってしまう状況を危惧。「本来この法律が必要なのは、子どもの出自を知る権利を守るというところ。不特定多数に提供していて身元も分からないドナーからしか提供受けられない人たちは自己責任。よりアンダーグラウンド化するだけで、性感染症や近親婚のリスクなども高まります。恐ろしいです」と、個人間でのやりとりが無法地帯化してしまうことに危機感をあらわにした。

「今まで病院に行けていた人たちは、これからは病院に行けないから個人との取り引きになります。とても怖い話ですよね。法から外れた人たちの自己責任になるんですよね。これって誰も望んでないんじゃないのかなって思うんですけれども、結局は婚姻夫婦にしか権利はないので“身勝手な私たち”という責任が負わされることになります」

長村氏は、「法律を作ること自体は反対してはいないけども、対象者の拡大をとにかく本当に検討してほしい」と切に願っているようで、「この議論をし続けてほしい」とも強調した。

さらに、東京都が2023年に開始した卵子凍結への助成金についても言及。「卵子を凍結して保存しても、結婚するしか選択肢がないっていう状況です」と話し、「今回の法律で女性のいろんな生き方が閉ざされてしまう。『婚姻している人たちしか子どもをつくってはならない』っていうのを国が決めていいのか。今一度、皆さんにそれが本当に正しいのか考えてほしいです」と呼び掛けた。

「人生の選択肢を奪うようなことはしないでほしい」

2024年10月8日、長村氏は自身のX(旧Twitter)で声明を発表。以下に全文を掲載する。

「私は、制度の枠が必要だと思っています。まったくルールがない状態は無法地帯になり、とても恐ろしいことだと感じているため、法案が作られることに反対しているわけではありません。

ただ、私はこの数年、本当に多くの妊活希望者を安全な医療につなげてきました。
主に同性カップルやシングル女性ですが、長時間にわたる面談を行い、その際には実にたくさんの人生の話を聞いてきました。
迷いや悩みの中で、藁をもつかむ思いで立ち向かっている皆さんの姿を、誰よりも応援し、見守ってきた自負があります。

あらゆる偏見や差別の中で、子どもを産み育てたいという想いは簡単なことではありません。

どうかこの法案での法律の枠から外された人たちがどうなってしまうのか、もう一度考えて欲しいのです。
対象者の拡大をお願いしてきましたが、私はまだしつこくお願いしたいのです。

たくさんの声があること、そこには現在も治療中の多くの人がいて、さらに未来を担う若者たちの人生の選択肢を奪うようなことはしないでほしいと願ってやみません。

生まれてきた我が子が、胸を張って生きれる未来を見せてあげたいのです。

#安全な生殖医療を全ての女性に」

また「緊急呼びかけ」として、「#安全な生殖医療を全ての女性に」というハッシュタグで声を上げるよう呼び掛けている長村氏。すでに多数の人がX上で声を上げている。セクシュアルマイノリティの人もそうでない人も、女性の人権が守られるよう、必死で訴え掛けている状況だ。

新法は5年をめどに見直しされる予定である。当たり前の事実ではあるが、人は年を重ねるごとに高齢出産に近づいていく。“今”を逃したら、もう妊娠できない、という人もいるだろう。法律とは、多くの人の自由な選択肢を奪うものであって良いのだろうか。本当に今回の法案がこのままの内容で法律になっても良いのか、多くの人に自分事として考えてもらいたい。日本で誰もが子どもを産む、産まない、自由な選択をできる未来のためにも。
長村氏(左)と茂田氏(右)のウエディングフォト
(文:杉野森 樹莉亜)

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