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運動会や合唱コンクールの練習でパニックに…。大きな音、人との接触が苦手「感覚過敏」の子の避難先

オールアバウト / 2024年10月10日 8時35分

運動会や合唱コンクールの練習でパニックに…。大きな音、人との接触が苦手「感覚過敏」の子の避難先

感覚過敏に悩む子どもたちには、どのようなサポートがあるとよいのでしょうか。特別支援保育・教育を研究する鶴見大学短期大学部 短期大学部 保育科 准教授の河合高鋭先生に感覚過敏と対処法について伺いました。

教員と信頼関係を築き、「つらい」と伝えやすい環境づくりを

運動会や合唱コンクールといった学校行事は、子どもが大きく成長する大切なひととき。しかしクラスメイトが予測不能な動きをするため、大きな音や人との接触に苦手さを抱える感覚過敏の子どもたちにとっては、つらい時間となることも多いそうです。

鶴見大学短期大学部 短期大学部 保育科 准教授の河合高鋭先生は、「学校の環境を整え、イヤーマフなどのグッズを使うことで学校生活を穏やかに送れる可能性がある」と語ります。

「教室の環境を整えるのは難しい面もあるとは思いますが、黒板周辺の掲示物を外したり、カーテンなどの布で覆ったりすることで刺激を減らす工夫ができるでしょう。聴覚過敏のお子さんがいる教室では、スピーカーの音量を調整するだけでも、つらさが軽減されると思います」

感覚過敏を持つ児童は授業中に苦手な場面に直面した際、パニックに陥ることも。その場合には、「別の教室や1人で過ごせる個室を準備するとよい」と言います。

ファブリック・カームダウンハウス(画像出典:感覚過敏研究所)
「避難先には、校長室や保健室を利用することが多いようです。また、イギリスなど海外の学校では、教室の隅にパーテーションを設置して子どもたちの居場所を作るケースもあります。

日本では児童が泣き叫ぶなど拒否反応を示さないと別室へ移動できない場面が多いですが、事前に苦手な場面を予測して、『気分が悪いので別室へ行かせてください』と本人から発言できる環境を整えることも大切です。そのためには教員と信頼関係を築くことも必要でしょう」

感覚過敏で悩む方の課題解決のために発足した感覚過敏研究所の調査によると、感覚過敏がある人の81.9%が「感覚過敏が理由で外出を諦めた経験がある」と回答。音や光の刺激で疲れてしまったときの休憩や、体調不良になりそうなときの避難場所として、カームダウンボックスやスペースを用意する施設も増えているそうです。

イヤーマフに耳栓、サングラスなどのアイテム、見通しを伝えることで症状緩和も

感覚過敏には、聴覚過敏のほかにも視覚、嗅覚、味覚、触覚過敏といった種類があります。河合先生は、どの感覚過敏に関しても「不安を軽減することが症状の緩和に役立つ」と語ります。

「例えば、座学が多く落ち着いて取り組める教科ではないような授業の場合、どんなことをするのか事前に見通しを伝えるだけでも不安の軽減に役立つことがあります」

運動会や合唱コンクールといった行事でも、最終的な完成図を本人に見せることで、安心感につながるそう。

「動画を撮影して完成図を共有するとよいでしょう。ここまでたどり着けば終わりなんだと子どもが理解できることで、行事に参加しやすくなることもあります」

このほか、グッズを使用することで症状をやわらげる方法も。聴覚過敏の子どもはイヤーマフや耳栓、ノイズキャンセリングイヤホン。視覚過敏を持つ子どもはサングラスをかけることで、音や光の刺激を軽減できるそう。

「本人が落ち着くグッズを持っていく方法もあります。スクイーズなどのおもちゃを授業中に握ることで不安を軽減できるケースもあります」

クラスメイトや他の保護者に理解してもらうために

しかし、学校でイヤーマフ、サングラス、スクイーズといったグッズを使用すると、クラスメイトから不思議な目で見られたりうらやましがられたりして、トラブルに発展する恐れも生じます。そういう場合には、「まずは学校教員から話をしてもらうようお願いしてみては」と河合先生。

感覚過敏の子が周囲からの理解を得るには
「得意なもの・苦手なものがあるのは、全員に共通すること。学校の教員から、『中でも感覚に苦手さがある人は、グッズがあるほうが過ごしやすいんだ』と話してもらうといいでしょう」

ある学校では、クラスメイトがうらやましがったときに、全員に同じグッズを持たせた事例もあると言います。

「最初はうらやましがっても、授業中にスクイーズを触り続けたり、休み時間を別室で過ごしたりすると、『自分にとってはつまらないことでも、あの子にとっては必要なものなんだ』と理解できるきっかけになるようです」

クラスメイトだけでなく、他の保護者から「同じクラスの子がイヤーマフをつけたり、別の指導員が付いたりしているらしいが、なぜか」と学校へ問い合わせがあるケースも。

「そういう連絡を知るとショックを受けると思いますが、冷静に保護者の訴えに耳をすませてみると、『ほかの子ばかりひいきして、うちの子を見てくれない』という不安を学校教員に訴えたい場合がほとんどです」と河合先生。

「そういう保護者は感覚過敏を持つ児童に不満を抱えているのではなく、別の心理が働いていることが多い」と指摘します。

感覚過敏を持つ子どもたちを支援する方法はさまざま。クラスメイトとの間に溝が生じないよう、大人からの配慮も必要となりそうです。

この記事の執筆者:結井 ゆき江
中学受験雑誌の編集者として勤務したのち、フリーランスの編集者・ライターとして独立。教育や生き方、地域情報などを中心に取材・執筆を行う。グレーゾーンの小学生をサポートした経験も。
(文:結井 ゆき江)

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