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最低賃金から時給2000円に…!マッサージ店のパート主婦が体験した「高時給」のカラクリ

オールアバウト / 2024年10月13日 22時5分

最低賃金から時給2000円に…!マッサージ店のパート主婦が体験した「高時給」のカラクリ

事情があり時間拘束があると働けないという場合は、時給で働かざるを得ない。しかし、パート時給の最低賃金は全国平均で1055円ほど。子育て中の主婦が家計の足しにと始めたマッサージ店のパート勤務で、予期せず遭遇した出来事を振り返った。

2024年度の最低賃金は全国平均で1055円となっている。地域差はあるものの、これが目安だという。一方で物価は上がり、生活が苦しいと感じる人は6割にのぼっている。

時給900円台、マッサージ店でパート勤務をはじめたら

「うちは夫がフリーランスなんです。だから私は出産後も会社勤めを続けていくつもりでした。でも下の子に発達障害があって目が離せない。そこでいったん会社を辞めました」

それが7年前のことだと、アリサさん(44歳)は振り返る。現在、長女が12歳、次女は9歳になる。次女は小さいころから発達支援教室に通い、現在は特性を生かしながら支援学級で学んでいる。夫の収入は月によって波があるので、次女が落ち着いた3年前から少しずつパートで仕事を始めてみた。

「時間的な自由が利かないと厳しいんですが、たまたま自宅から自転車で15分くらいのところにあるマッサージ店で未経験歓迎の貼り紙を見かけて応募してみたら通りまして。資格もありませんから、本格的なマッサージではなく“リラクゼーションとしてのマッサージ”とのことでした」

そのころの時給は900円台。商店街や小規模の事務所が立ち並ぶ場所だっただけに、来店者は多かった。

「チェーン店ではなくオーナー個人が経営してる和気藹々(あいあい)としたいい店だった。でもやはり経営がつらくなったんでしょうね。ある日突然、経営者が変わってしまった。

そして『明日から男性に特化したマッサージ店になるので、そのまま仕事を続けてほしい』と言われたんです」

時給2000円で「セクシーなサービス」を指示される

もちろん風俗的なマッサージではないが、客は男性のみ。今までより「少しだけセクシーなサービスをしてほしい」と言われた。

「このマッサージ店で働き始めた当初、毎日毎日、ツボと経路の勉強をさせられたんですよ。それを基にしたリラクゼーションであるとたたき込まれた。それが今度は、お客さんが喜ぶようなマッサージをしてほしいと言うんです。サービスの内容は任せます、その代わり時給は倍にします、とも」

いきなり時給が2000円になった。ちょうど娘たちが習い事を始めたし、先のことを考えるとお金はいくらあっても足りない状態。断る理由などなかった。

「今までと同じマッサージを望む客にはそうしていましたが、それ以上を期待する人にはそれなりに……という感じでした。もちろん直接、男性器に触れるということはありませんでしたし」

店に満足だったと利用客の声が寄せられると、臨時金が出たり時給が上がったりする。それなりにやりがいがあったとアリサさんは苦笑する。

時給が上がり、自分の気持ちも上がったが……

時給が上がれば、やりがいも増す。そもそも雇われの身、店のサービスそのものが法的にどうなのかなどと考える余裕もなかった。

「毎日6時間くらいは働いていました。夜ならもっと時給を上げてもらえると知って、夕方いったん家に帰って子どもたちに夕飯を食べさせてから店に戻ることもありました。違法なことをしているわけじゃない、風俗じゃないというのが自分への言い訳だった」

店での行為はエスカレートしていった。「衣服の上からであれば、どこでもマッサージするように」と経営者から指示されたときには違和感を持ったという。もちろん、経営者には違法の自覚があったのだろう。

「半年前、経営者はいきなり店を畳んで雲隠れしました。最後の月の給料はもらっていません」

ある日突然、消えた経営者と途切れた収入

こんな展開もあるだろうかと予測してはいたが、いきなり収入が途切れたのがきつかった。夫の仕事も決して順調とはいえない状態だったからだ。

「こうなったら腹をくくるしかない。今は熟女パブで働いています。昼間からやっているところがあるので。夫には普通の事務仕事だと伝えていますが、もしかしたらわかっているかもしれませんね」

ただの接客と割り切っても、飲酒を伴う接客だから男性客と危うい雰囲気になることもある。それでも「お金のため」とアリサさんは考えている。

「仕方がない。今はこうやってでも稼がないと、子どもたちに習い事もさせてやれない。夫は『今年いっぱい頑張っても、あまり稼げないようなら何か考える』と言いますが、ずっとフリーランスでやってきた人に、今さら会社勤めができるとも思えない。

今までは夫に頼ってきたところがあるけど、今後は夫頼みではいられないなとも感じています」

思えば夫と知り合う直前まで、彼女には大手企業に勤める恋人がいた。夫と出会って、その恋人を振り捨てて一緒になったという経緯がある。

「ふっと、思うことがありますよ。大手企業に勤めていた彼と結婚していたら、こんな苦労はしなくて済んだのかなって。いい人でしたしね。

ただ、若かった私は、いい人と穏やかな家庭を作るよりフリーランスで夢を追っている男に魅力を感じてしまった。若気の至りですよね。自分の選択の結果だから、最後まで責任を取らなければいけないと思っています」

だから頑張るしかないんです、子どもたちに罪はないからと、彼女は力なく微笑んだ。

<参考>
・「令和6年度 地域別最低賃金 答申状況」(厚生労働省)
・「無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について」(厚生労働省)

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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